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少女皇帝一代記  作者: タカセ
序章 惑星調査報告
1/8

惑星調査記録

 リオ・ガイナスリュート一世。


 それは歴史に燦然と名を残す英雄であり、解放者の名。


 賤民とされるハーフダークエルフとして生を受け、奴隷として過ごしながらも、高い教養と知性。そして何よりもその勇敢さを持って、数多の民を救い、難関を越え、解放奴隷となり冒険者となり王となり、この世界を統一するまで駆け上がった希代の皇帝。


 やがて天より現れた異形の獣たちさえも調伏し、獣たちを伴い天へと昇っていったという永久の少女皇帝の物語……














『簡易自動修復が完了しました。ガイナスリュート再起動します』



「ふぁぁっ。おはようミーさん。エネルギー残量と戦闘可能時間は?」



 自己修復が終わったことを告げると共に、ベッドモードになっていたシートが起き上がる。強制的に目を覚めさせられたリオは、あくびをしながら背伸びをしつつ機体AIへ現状を確認する。



『通常移動は2時間。戦闘機動モードならば5分弱です。それと私の正式名称はミルドレッドです。お間違いなきように。マイマスター、リオグランテ特務少尉』



「だからリオで良いって。しかしまいったよね。どうしようか」



『本船及び潜入調査隊との情報リンクは可能ですが、救援を要請しますか?』



「あーいいや。本船の方は助けてくれる余裕は無いだろうし、このまま行った方がスムーズにいけそうだからって、こっちの生存報告とそのまま本来の潜入任務に入るって両方に送ってミーさん」



『了解しましたリオマイマスター。それとミルドレッドです』



「マイマスターもいらないんだけどね、正規軍人じゃないんだから」



『そのご命令には従えません。私のマスターはリオグランデ特務少尉だと書き換え不能最優先指示がされています』



「それ何とか出来ない? 現地人に乗っ取られる恐れなんてないでしょ。入らないんだし」



『申し訳ありません。不可能です』



 頭上から返ってきた素っ気ない返事にリオは少しばかり落胆しながら、カスタマイズされたコクピットシートに腰かけ直し、残存武装をチェックしつつ、機体周囲の情報取得を開始する。


 現地偽装を施した錫杖型マルチ武装ツールのD32型多機能ライフルは先の戦闘でロスト。

 

 機体エネルギーと引き替えに呼び出し可能な次元コンテナには予備弾倉があるが、安全装置が掛かっておりライフル本体無し使用不能。現地文明レベルに合わせたいくつかの簡易装備のみが使用可能だ。


 しかも修理が終わったといっても、あくまで自動修復機能任せの応急処置。機体周囲を覆う養生ナノシートは外装部が、まだ戦闘が出来るレベルまで回復していない何よりの証。


 完全修理には本船へ帰還したほうが早いくらいだ。




「まぁ当たらなければいいか。それで外の状況は。現地の人が拾ってくれたあと変化があった?」



 サイドアームが持ってきたカップを受け取り、少し温めのお茶をちびちびと飲みながら、一番の関心事を確認する。



『現地生物による原始的な移動機構で変わらず移動中です。おおよその測定となりますが本船より直線距離で800キロは離れております』



「あぁそれじゃ完全に未探索領域だね。原始的な移動機構だと長いから、『馬車』呼称に変更で。あと翻訳が出来た言語も表示を頼むね」


 メインモニター画面を見ればガタゴトとゆれている暗がりの狭い空間。周囲にはすすり泣いたり、閉ざされた扉を必死に叩く幼い少女達のわめき声が聞こえている。


 現地語翻訳学習機能をフル稼働させているが、語集が少なく、意味の無い物が多いのであまり効率的ではない。


 なにより精神的によろしくないのは、現地語で『おかあさん』『助けて』『出して』という繰り返される言葉がトップ3を彩っているあたりだ。



「ミーさんこれってさ。やっぱり人買いってやつかな?」



 記憶から引っ張り出して思い出したその単語は、歴史を千数百年以上は遡らねばならず、一般歴史授業では出てこない類いの物だ。


 それこそ古代文明マニアで専門講義を受講していたリオだからこそ、すぐに思いつけていた。



『生体感知機能に反応している異星生物反応は馬車内に幼生体6匹。そして馬車外に成体3匹となります。外部から原始的機構で施錠されている事から、捕囚とされていると判断。リオマイマスターの推測に賛成いたします』



「ありがとう。ただ匹は止めて人で。あと異星人じゃ無くて現地人にしとこうか。僕らの方が異邦者。異星人なわけだしね」



『はい。以後は現地文明生物の呼称、単位を修正します。ですが本船への報告書には規定名称を使わせていただきます。マイマスター。この後の行動をご指示いただけますか』



「戦力比ってどうなの。相手の方はこっちより結構大きいみたいだけど」



『現地人の武装は初期製鉄武器と推測されます。巨体から推測される衝撃力は、通常時の当機防御機能を超越しますが、戦闘モードであれば電磁障壁でガード可能です』



「この機体って確か全長45メートルの重機動兵器だよね。植民星大戦で使われてて、他の人達が乗ってたブレードタイプの元だかって」



『はい。当機ガイナスリュートは、先の大戦で活躍したガイナスブレードの機能実地試験型となります。正式量産機であるガイナスブレードの60%ほどの全高、機体重量、出力しかありませんが、十分にこの高重力惑星でも活動可能な機体となっています』



 まだ本星が無事だった頃に、軍事博物館に飾られていた機体を見上げて興奮した幼馴染みのエミナが、この後継機は植民惑星の武装では、通常時でも傷1つつけられず、無敵要塞とまで謳われる名機だ云々と熱く語っていた事を思い出す。


 結局勝ち負けも無くて、本星も植民衛星も全部を失って、放浪しているんだから、どうだって話だが。


 それ以前に母文明が誇る重機動兵器も、後継機ならともかく、今の機体ではこの星では子供くらいの体型でしか無く、しかも今は現地へ潜り込むために、外装に生体素材を用いた偽装をしているのだから、格好良さなど皆無だ。


 具体的に言えば、その外装は周囲で泣いている少女達と同じく、少し尖った耳と浅黒い肌をした少女体型をしている。


 本船が墜落した地点から一番近い地点に存在している集落の住民を模した外装を施し、他の潜入調査部隊と共に旅の家族を装う予定だった。


 潜入調査任務のため街道とおぼしき道まででる途中で、現地野生生物の群れによる襲撃を受けて、撃退したまで良いが、使用した兵器が強力すぎたのか、戦闘地点の川岸の地盤が崩落し、リオの機体だけがそのまま川に流されてしまっていた。


 普通ならば機体重量から考えれば流される事は無いのだが、どうやら現地人からの疑惑の目を誤魔化すための重力制御機能が悪い方向に作用してしまったようだ。


 しかしリオの機体が子供を模したのが不幸の元だったというべきか、それとも幸いしたというべきだろうが。


 相手は人買いとはいえ、こうやって自然と現地文明に溶け込むお膳立てが出来たと考えれば、悪い話では無い。


 今も本船スリーパー区画で冷凍睡眠状態のエミナが、この暢気な考えをしているとしったら怒るだろうなと、リオは微かに笑う。  



「宇宙放浪して行き着いた先が巨人の住まう星か……うん。やっぱり志願して良かった面白そうだね」



 リアルタイムで異文明を調査できる。そこにワクワクしない文明マニアなど存在しない。


 リオグランデ特務少尉そしてAIミルドレッド。搭乗機体ガイナスリュートによる未開惑星調査記録はスタートした。

  

巨大ロボット物が書きたい。数日前に滾っていた感情が、別サイト様のSF募集コンテストを見て溢れてきたので書き出しました。それだけです

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