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竜がいる国の物語  作者: 朱雀
第1章
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夕食

領主の館では丁寧に迎え入れてくれた。

館の皆様、すっごい笑顔が又逆に恐ろしい。何か裏があるのかと勘ぐってしまう。


この感は外れなかった。

通された部屋がまずお風呂場。帯剣していた剣は途中で荷物と一緒に預けてしまった。

声と態度で一応の抵抗はするものの、数と気迫に負けてしまった。もうこうなったら大人しく全身なすがままに洗われて身支度をまかせた。

せっせと女官達に綺麗にしてくれたが、女官達からは今まで着ていた服は帰る時まで返してもらえなかった。


通された部屋でエリオット王子一行と再会した。本来なら直ぐにでも帰るはずだったのだが

砦の兵士の話では、国境近くの森に番の竜と卵があるという。人里近くにいるのも珍しいが卵もあることから保護するか、静観するか領主たちの意見も分かれていたそうだ。神殿から竜と話せる人を派遣してもらうと思っていたところに視察で王子たちがきたそうだ。竜の話が出たところで竜の巫女が近くの町に滞在していること、この人物は公にはされていない事を踏まえて内密にとのことで話がきているとのこと。

もしかしたら、その子が私のさがしている竜かもしれない。会ってみたいと思ったが、周りの人たちは微妙な反応しかかえってこない。

領主と王子が話すことになったが、私は部屋で待たされることになってしまった。


領主とは夕食の席で顔をあわせることになった。

エリオット王子の伯父にあたる方で雰囲気が似ている。ブルネットの髪に緑色の瞳にフワフワした優しい感じがするけど、どこか厳しいところもあるような感じ。

跡継ぎだと思われる方も従兄弟だけどブルネットでなく淡い金髪、領主の奥方が北の出身なのでそこに多い色らしく、瞳も淡い青色。前の世界も同じような髪色と瞳色だよね、ただ違うのは黒髪、黒い瞳の人物がいない。旅商人たちもいなかったし本当にいないのかも。


「私どもとしては竜を保護して館で暮らせるようにしていきたいと思っております。」


領主の言うこともわかる。竜がいれば国境が近い領土に戦争を仕掛けてくるバカはいない。交易も栄えて、豊かな穀物地帯もある、の国や近隣の貴族たちが羨ましい一言二言もあるはず。さらに国王の跡継ぎ争いもあるとなればきな臭いことのひとつやふたつあるだろう。その気持ちを考えながら、


「竜自身があの森にいる事でもかわらないのではないでしょうか?」

「あの森は隣の国の国境がわりになっており森の中はどちらにも属しないことになっております。」


森の中の砦だと思っていたら森を監視するためらしい。一応、森に接している領土の民や旅商人は入ることは出来る仕組みだが、中で山賊もどきが出ようが兵士崩れが出ようが両国も無関係。やりたい放題みたいだが、昔から森の中で悪さをすると死人がでるか大怪我で助け出されるらしくその辺は大丈夫だと話してくれた。

話してくれたのは次期領主殿、つまりエリオット王子の従兄弟だが2人とも笑ってる。昔から森で遊んでいたから危険なことはなかったとも付け加えてたけど。


「こちら側に住んでもらいたいことは話ますが、動きたくないときはどうしますか?」


「そのままで砦の兵士たちが見回にいくくらいの話はしておいてほしい。」


「みまわりに行くより看板なり立て札でこちら側の竜だからそばにこないように書いておいておいたらどうです?」


言い終えたところでお酒が飲みこめなかったような吹き出すような音と、笑いをおさえているような音が聞こえてきた。周りを見てみると、皆下を向き微妙に肩が震えている。いち早く立ち直った領主から


「りゅ 竜殿の意思に任せるとのこちらの立場を話してくれればよろしいです。明日にでも場所に案内いたしましょう。」


従兄弟どうしはまだ立ち直れていないらしく会話に加わるまでしばらく時間がかかったがそのころ私は食事を堪能していた。

領主ともなると客人を飽きさせないのかその後の会話は当り障りない、この国の話をしてくれた。



客室も王子の連れという事で質素とはいえ、清潔なベッドも用意されてる。お酒も入って気持ちよく眠りについてしまった。



「巫女姫って結婚はできないんだっけ?」


従兄弟どの唐突の言葉にエリオット王子は返す言葉が咄嗟にでてこなかった。


「それは神官たちに聞いてみないとわからん」


「彼女なら周りが納得するじゃないか?」


「王位に関係ないからか?」


「イエスともノーとも言えるな。頂上が気にならないなら彼女と竜の子供を育てて暮らすことで態度で表明できるしな。宰相あたりは気づいていると思うぜ、第2王子だと国庫は食いつぶされる、国土はどのくらい残るかわからん。」


「どこまでその噂は広まってる?」


「俺のところまで聞こえてくるぐらいだから貴族の大半は知っているはすだ。兄王子より優秀なところを見せたいがために色々と画策しているともな。」


久しぶりにうまい酒が飲めるかと思っていたら、ため息しかでない話ばかりだ。その前に変な事を言っていたな。


「彼女とは何もないからな。」


「多忙な仕事の合間に乗馬や剣を教えているのに?」


「… なんで知ってる?」


「来る前に王太后様から聞いた。」


「南カナリヤの文友だちはお前のことだったのか?」


答えはなくただ酒を注ぐだけだった。


明日は森に行き竜の番にいかなければならない。良い結果がでればいいが。


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