お茶会
王太后のお茶会に呼ばれていく道中、王宮の雰囲気というよりエリオット王子の周りの空気が違った。
生暖かい目線なのと側近たちはニコニコ顔、通りすがりの官僚たちのさえ話をやめて見てくる。
王太后からは他愛のない話をしていたが突然、
「昨日はたのしかったからしら?」
「馬の散歩ですから楽しかったですが途中で帰ってきました。」相変わらず会話になっているようでなっていない。側にいた側近たちは揃って頭をふる。
「名前を教えてもらえるかしら。」
「アスランと名付けましたよ。」
王子以外全員が心の中で『違う!!そっちの名前じゃない!!」
笑みを絶やさずなのか老人の知恵というのかめげずに
「一緒にいた女性の名前よ。」
「......」
カップを持ったまま彫像のように固まったてしまった。何かわすれていると思っていたが肝心の本人の名前を聞いてなかった。
同じ頃、エミールから説教を受けていた。
「眼鏡は外すなって言ったよね。その瞳の色はこちらの世界ではただ一人だから、危ないめにあうこともあるから気を付けてねと!!」
どうやら馬で逃げるときに落としたらしい、帰ってきてロランの驚愕した顔で分かったぐらい。
何も言い返すこともできない。
この後夕食まで、延々と説教とお小言が続いた。
次の日には、封蝋された招待状が王宮から届いた。
しかも、日付は今日、招待者は王太后。使者の方は返事を待っている。自分で受け取っていないなら病気か外出で断れたが受け取ってしまったからには出席するしかない。が、着ていく服がない。
それならば心配ありませんすべて用意されています。と使者殿から言われてしまった。
お茶会の出席者は王太后、エリオット王子と私だけだった。
この人選はどうして?黙ってお茶をすするしかない、それにどんな話をしたらいいんだろうか?そんなことばかり考えていた。
「昨日は怖い目に合わせてしまったお詫びを兼ねて招待しましたのよ。」
「ありがとうございます。怖いめにはあってませんし、助けてもらえましのでこちらこそお礼をしなければならないと思ってました。」
「大丈夫よ。この孫はかなり強いから。それに側近たちも強い武官が揃っているから。」
こわい、こわい、口調は優し気なんだけど話しぶりが女性に怪我なんかさせたら王太后自ら剣で王子をさしそうな気配もする。
そんな気配を感じとってくれたのか王子が色々と話題を変えてくれたりした。
高貴な人のお茶会ってすんごいステータスなんだけど、ド庶民の私からしたら緊張してしまいお茶のむのが精一杯。美味しそうなお菓子なんか食べれない。
もうひたすら早く帰らしてほしい。
用意解放されていつもの服に着替えてようやくホッとする。気疲れして早く部屋で休みたい。
神殿に送ってもらおうドアを開けたら王子が待っていた。
まだ緊張が続くんかい。最初に送ってもらった使者を探すがいない。送ってもうしかない。
「今日はありがとうございます。楽しくすごせました。」
「緊張されていたようだが本当に楽しめたのかな?」やっぱり見えませんよね。
「正直に話すと緊張しすぎて味もわかりませんでしたが、お話も面白く楽しめました。」
微笑みながら「なら良かった。」と。本当に王子様の笑顔で人一人ぐらい殺せるじゃないのかと変なことを思ってしまった。
王宮から神殿へもうすぐというところで第2王子のご一行と出くわしてしまった。
こちらもハンサムだけど目つきが冷酷非情な感じ。側近たちもエリオット王子の側近たちと比べるあまり品がよろしくなさそう。
「王太后に取り入っているようだが次期国王の座は俺様だからな!!」
いきなり喧嘩ごしかい、それにまだ国王も第1王子も生きているのにその話かい。ペラペラと自慢話ばかり、エリオット王子は聞き流しているようにみえる。
この国の貴族社会の女性のトップは今のところ王太后、第1王妃も第2王妃も鬼籍、先の国王に王女様もいなかった。権力順番からいけば国王なんだけど、やっぱり母親の意見も多少は通るらしい。多少と言っても国を任せるわけだから。
「失礼する。人を送っていく所だ。」
「貴様、俺様の話をとめてそんなみすぼらしい女を送るのが大事なことか!」
「彼女は竜の巫女姫だ。国としては大事なことだ。」
「......くっ」
それ以上何も言われなく送ってもらいながら、先程の第2王子の侮辱の言葉を謝ってくれた。
私は何も言えず又聞くしかなかった。送りがてら白竜と少し話がしたいといわれ神殿の奥の間、エミールの部屋に入っていった。
ちょっと質問。先程の会話の中で『竜の巫女姫』のフレーズが気になる。
通りすがりの神官に聞くと、竜の関わる物で会話できるものには女性なら『竜の巫女姫』男性なら『竜の神子』とこの国では呼ばれているが他の国では違う名称らしい。らしいというのは他の国では竜の事は最高機密扱いで外部にあまりでないらしくよくわからないらしい。まあ1竜いるだけで戦いにならないしね。
エミールには迷惑をかけることを謝らなかえればならなかった。一番知られたくなかった人物に存在を知られた事、自分と繋がりがあることでなんらかの迷惑をかけてしまうことを。
今の自分が微妙な立ち位置にいることは数年前から感じていた。その時から周りに気を遣い重要な式典以外表舞台に出ないようにしていたのに。
一目見た時から守ってやらなければならないと思ったこと。瞳の色から王の巫女姫と知りえたことでも。
彼女となら探しに行きたいことも。
エミールは黙って聞いてくれてただけで返答はなかった。その後日、ロランより彼女を傷つけない事のみを伝えられた。