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眠りの浅い僕らと君。  作者: 朝霧 いを
1/1

朝の僕と君。


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拝啓

◯◯さんへ

私は生来 人の死に対して哀しいといった感情を持った事はありませんでした。

生来 ″あったものが無くなる″虚無感はありましたが、その他感情は持てず、当然のように涙は流せません。

それは家族含む親しい知人に対しても当然のように。

私は″私″に対しても無頓着で、非貪欲的です。

それは皮肉な事に今も相変わらずです。


◯◯さんは言いました、私が今にも消えそうだと。

強ち 間違ってはいませんが、残念ながら私は″生生活″に無頓着なのにも関わらず、神様が私に諦めるなと言わんばかりに 私を健全に作り上げてしまい、私は儚い白色どころか内面は色濃です。


また手紙を書くので 敬具 と締めないでおきます。


××より


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am 7:45

おもちゃ箱に押し込められた玩具のように満員電車に飲まれる。

異性と密着するのは悪くは無いが、圧力がかかる密着はごめんだった。

好きと言われすぎると嫌いに変わるように、単体の香りは好きだが、大勢の臭いは苦手だ。″香り″も集めてしまうと″異臭″に変わっていた。

眠りから覚めて1時間も経たない僕にとってはこの上ない拷問でもある。


am 8:25

おもちゃ箱から飛び出した人形のように改札から出ると、下町と都会の境界線と言わんばかりの 何ともコメントの言いづらい良くも悪くも″普通″の町に着く。

近くには小学校もありランドセルを背負った小学生が列になって行進し、時には立ち止まる。じゃんけんで勝った人が進んでいる様だ。

私はその急発進と急ブレーキの波に逆らい 逆方向へと足を進める。

五分程歩くと2本の坂道が出てきて、迷わず左側の坂道へと進むと小高い丘に高校がひっそりと出てくる。

久しく持ち出した腕時計を見てチャイム5分前という事に気づき走って教室へ向かう。

これからは腕時計を常備しようと決意した日だった。


am 9:00~26:00

僕は生来 生きる事に無頓着で、

″生きたい″と思い生まれ落ちたのではなく、

両親の″子供欲しさ″ゆえのエゴのために生まれ落とされ、そのギャップに悩まされる。

幸いな事に特に困ったことは無く。友人もいる。

悩みといえば、その生きる事のギャップと睡眠時間くらいだった。

そう思考しているうちに眠りに入っていた。

その日久しく見た夢は記憶にある中で一番鮮明で、奇妙だった。

その夢は、この世界の僕以外の全員がいない。

いや、実際は存在するし、心もあるが″人生″がない。

まるで、僕の人生のために存在しているだけで、

世界には僕しか生きていないように。

この時気づいた、例えるなら、昨日乗った満員電車の人々が、本当におもちゃ箱の中の人形達のようだったと。


この日の夢はあまりにも鮮明だったので整理するためにノートの隅に書き残す事にした。


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