第5.5話 目覚め
前回のあらすじ
チュートリアル(仮)を受けました。
《だいぃだいぃじょうぅじょうぅぶぅぶぅでぇでぇすぅすぅかぁかぁ?》
エコーがかかっている様な頭に響く大きな声。
まるでマイクを通しているかのような声だ。
その声に反応して目を覚ました。
この五月蝿いのは何だ?誰の嫌がらせだ?
俺が寝ている間にイヤホンでも刺したのだろうか。
直接脳内に届いている様に感じるが、おそらくイヤホンから大音量で立体音響でも流しているのだろう。
二度寝したいので、目は瞑ったままイヤホンを引き抜こうとする。
......腕が動かない。
おい、なんだ?反抗期なのか?
筋肉もそういうお年頃なのか?
いやまて、待つんだ俺。
寝ぼけているとはいえ、何を意味不明なことを言っている。
この状況から考えるに、この現象は...。
そうか、金縛りだ!!
俺が出した答えは、金縛りだった。
友達から何度か聞いた事は、あったがまさか体験することになるとは。
人生初の金縛りに興奮している自分がいる。
い、いや別にMとかそういう類のものではない。
純粋な探究心による興奮だ......と思いたい。
それにしても、こんな風に身体が動かなくなるとは。
腕以外にも脚や腰、肩などを意識的に動かそうとしても、動きはするんだが、なにかに制限されているように、一定の範囲を超えては動けない。
まるで縄で縛られているような、束縛感まで感じる。
が、しかし首から上は別のみたいだ。
顔は普通に動かせる。
金縛りで頭が冴え始めてしまったし、二度寝はもう諦めるしかないよな。
そう思って目を開けると、何故かボロボロの木目があった。
それもピントが合わないほど至近距離に。
おかしい。俺は生まれてから此方18年間ベッドをこよなく愛し、ベッド以外で睡眠をとったことがない。
赤ん坊の頃からベッドでしか寝ない子と呼ばれ続けてきたらしい。
学校の行事等でベッドが使えない場合は一睡も取らなかった。
取らなかった、ではなく取れなかったが正しいのだが。
何故かベッドでしか眠ることができないのだ。
そんな俺がこんな寝心地最悪の場所で寝ていただと?
この事から導き出される答えは...!!
うーん、さっぱりわからん。
寝起きで頭が回っていないのもあり、今の状況を飲み込めない。
なので、変顔したり、顎を突き出したり、顔面ウェイブをしたりと、顔をほぐしていた。
すると、さっきのエコーボイスが再び聞こえた。
《なにぃなにぃをぉをぉ、なさっなさってぇてぇ、いるぅいるぅのぉのぉでぇでぇしょぉしょぉかぁかぁ??》
うるせぇ!
頭がかち割れそうだ。
動けないのでなんともできないが、もし自由だったなら、頭を抱えて転がり回っていたレベルだ。
《えぇえぇこぉこぉおぉおぉがぁがぁ、うぅうぅるぅるぅさぁさぁかぁかぁあっあったぁたぁのぉのぉでぇでぇすぅすぅねぇねぇ........。あ。あああ。これで良くなりましたか?》
さっきまで、頭がガンガンするほどに響いていたのが、クリアなものに変わった。
《えー、何やら金縛りだのなんだの、と考察中でしたが、失礼します。私が誰か分かりますか?私は逢依です。ご理解いただけますかでしょうか?》
あい?えぇっと、あい...。
ああッッ!!
思い出したぞ!!そうだ、此奴のせいで俺は今異世界にいるんだった!
《やっと思い出して下さりましたか!》
ああ。思い出したよ。尤も思い出したくなかったけどな。
それにしても、なんでイヤホンつけて音量MAXにした時みたいな音量で話していたんだ。
《いやあ、だってご主人様未来では全然起きない人でしたから。いつ気がつくかなと。》
そういうことか。
確かに俺は地震でも台風でも雷雨でも起きなかった人間ではあるけども。
ていうか、今どこにいるんだ?逢依の姿が見えないんだけど。
そうか、俺と同じ身体に入ってるから見えないだったな。そうだよな。
《それがですね、その筈なんですが、実はちょっと予定が狂いまして。》
申し訳なさそうに、また逢依の計画から脱線していることを聞かされる。
思ったんだが、逢依の予定通りになってることの方が少なくないか?
《そ、そ、そんなことないですよ。ええ、私は未来から来た究極のロボットなんですから。》
どうだか...。それで今どういう状況か教えてもらいたいんだけど。
《はい、それでは動きづらいとは思いますが、顔を少しあげて頂けますか?》
ん?それとこれとはどういう関係があるんだ。
疑問に思いつつも、指示通り顔をあげた。
視界から木目が消え、次に入ってきたのは1度見たら忘れないであろうあの美少女だった。
何から何まで俺の好みにどストライクに作られ、スタイルも抜群なあの美少女、逢依の姿を再び見ることができるとは。
一緒の身体に入って二度と見れないと思っていたから少し嬉しい。
そうじゃなくて、これはどういうことなんだ。
一体全体何が起きているんだ。
《私も始めはその身体に入っていたんですが、おそらくご主人様がその身体に転移するタイミングで押し出されてしまったんです。多分魂の量が身体という器に収まらなくなったからだと思いますが。》
つまり、2つの魂が身体に入るという逢依の予想は外れてしまったと。
《そ、そうですけど言わないでください!2つは入るはずなんですけど...。身体が幼かったから器が小さいとかかもしれませんし!...それはそうとして、私これでも一応その身体とは繋がっているので、余り離れることができません。あと、転移前の姿はご主人様にしか見えません。》
それって、背後霊みたいな感じかよ...嫌だな。
この見た目だけなら完全な美少女が見えないなんて可哀想だな。
俺以外にはどんな感じで見えるんだ?
《私は今魂だけの状態です。魂は基本見えないので、多分他の人の目には一切映らないと思います。というか、背後霊って言い方やめましょうよ。霊じゃないですから!ほら、別のいい方ありますよ。えっと、そばに現れ立つというところから、その像を名付けて、幽波...》
よし、背後霊とは言わないからもうやめてもらおうか。
というか、それは霊であって霊ではないけど、もう霊みたいなもんだろ。
《遮らないでください!!霊じゃないですから!私は生きてますし。》
そ、そんなに怒らないでくれよ。悪かったって。
あ、そういえばなんで俺、会話出来ているんだ?
さっきから一切声出してないぞ。
これは一体どういう。
《気づいてしまいましたか。これは、テレパシーというやつです。》
て、テレパシー...ってあの!で、でもあれは非科学的な超能力的なものなんじゃ...。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
自分で一度初めから読み返してみたのですが、ちょくちょく話として書ききれていなかった、表現されていなかった設定がありましたので、このような形で補っていこうと思います。
これからもよろしくお願い致します。