第62話 オイオイオイ今度こそ死んだわオレ
前回もあらすじ
『神速』を使うことで攻撃を避けました。
『神速』の性能に対しての愚痴を零していると、騎士の男がこちらを向いていることに気づいた。
数秒俺の方を凝視した後に、小走りで接近してきた。
不味いな。完全に気づかれた。
このまま、接近されて攻撃されたら『神速』を使った意味が無い。
迎え撃つか?いやでも、相手は騎士だし、殺したりしたらまた問題になる。
切りかかってきたから、正当防衛か?この世界の掟がわからない以上下手な真似はできない。
となれば、あれだ。選択肢はただ一つ。
逃走だ。
鎧をガチャガチャと鳴らしながら接近してくる騎士に背を向け、俺は走り出そうとした。
うッッ...。なんだよ、これ。
視界が歪み、身体にはまるで力が入らない。
回れ右をした俺は、そのまま力なく倒れ込んだ。
反射神経で、地面に手を付いたお陰で、頭や身体を打たなかったものの、視界の歪み、半端ではない倦怠感、脱力感は持続している。
今は膝と手で身体を支えているので、いわゆる四つん這い状態だ。
俺は、Mではないので、こんな恥ずかしい体制を人に見られることは快感には思えない。
一刻も早く立ち上がりたいが、身体が全く動かない。
腕もピクピクと、震えている。
四つん這い状態で、生まれたての小鹿の如く震えている間にも、騎士が近づいて来ている。
さっきまで、うっすらとしか聞こえなかった金属のぶつかる音が、もうかなり至近距離で聞こえる。
今度こそ終わりか......。
覚悟を決め、目をつぶった。
「.........か?」
耳に声が入ってくる。
穏やかそうな男性の声だ。
「.........か?」
繰り返し聞こえる。
だが、肝心のなんと言っているのかは聞き取れない。
「.........そッ」
3度目の声が聞こえた瞬間、背中に衝撃が走った。
うッッッッ。
衝撃を受け、腕の力が抜けて、地面にダイブした。
もう、終わりか。
地面に這いつくばつつ、そんな事を考えていると、
「大丈夫か?おい、大丈夫か?クソッッ!間に合わなかったのか!?」
切羽詰まった男性の声と共に、身体を揺すられた。
俺は死んだはずじゃあ...。
「お願いだ、生きていてくれ。まだあんたは死ぬには若すぎる。今年端もいかない少女に切りかかったなんて...俺は俺は......。」
さっきよりも強い力で揺すられる。
ああ!やめてくれ、顔が地面に擦れて痛い!
「大丈夫ですから!生きてますから!」
倒れているまま、出来る限りの力を振り絞り叫んだ。
「......!お、おい本当か!い、生きているのか!」
男が驚愕の声を上げる。
いや、勝手に殺すな。
......まぁ、俺も死んだと思っていたけどな。
「はい、大丈夫です。身体が動かなかったり、視界が歪んだりはしますけど。」
「...?それって、魔力切れの兆候だろ?...そういうことなら...ほらよ。」
ほらよ、という軽い言葉に一瞬遅れて、背中に衝撃が走った。
あれ、この衝撃、さっき背中に受けたものと同じ位の軽さだ。
衝撃を受けて、5秒程度経つと一瞬だけ全身が震えたが、すぐに止まった。
その後は、身体を動かせるようになった。
手をグー、パー、グー、パーとして擬似リハビリ的なことをした後に立ち上がった。
立ち上がり、声の主の方を向くと、
それは俺にとどめを指したはずの、騎士だった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




