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第5話 チュートリアル

前回のあらすじ


暗黒と逢依が、同じ身体に転移するようです。

「ここは...。」



気がつくと、何も無いところにいた...。


いや、厳密には床が存在しているので、床以外に何があるのかわからない場所だ。

天井も壁もない。

床があると言えるのは、俺が床にいるからだが、その床でさえ認識できない。

自分自身の体もうまく認識できていない、こんな状態が長く続いたら気が狂ってしまいそうだ。


光源が見当たらないのに、ほのかに青白く明るい。

どこを向いても均等に明るくなっている。


一体ここはどこなんだろう。

俺の記憶には一切ない所だな。



「やっと目が覚めた!ようこそ、こちらの世界へ。」



周りを見渡しても誰もいないどころかなにもないのに、何処からともなく声が聞こえてくる。

子供特有の甲高い声だ。


「ここは、この世界へ転移してきた者、転移者にこの世界のことを教える場所なんだよ!ゲームとか言うところのチュートリアルみたいな感じかな〜。」



ああ、そうだった。


思い出してきた。

俺は逢依に飴を食べさせられ、転移したんだった。

それでここはチュートリアルということか。


「誰か!誰かいるのか?」


声を出して呼びかけてみる。

一方通行に話しかけられるタイプか、こちらからもコミュニケーションがとれるタイプかわからない。

だが、一応確認しておいた方がいいと思う。


「私は転移者を見守るもの。いわば神様的存在!毎日この世界に転移してくる者がいないかチェックしているんだ〜。偉いでしょ?ま、今日でこの仕事も終わりだけどね〜。」


これは...多分俺の声に反応しているんだよな?

意思疎通ができると信じよう。


それでなるほど、転移者の案内役か。

神様みたいな感じというと、本当に神ではないのか?

偉い方には違いないから、敬語は使うべきかな。


...やべえ、偉い方と接することなんてないから敬語使えるか心配だ。



とりあえず、丁寧な感じを出しておくしかないな。うん。

それにしても、今日まで毎日チェックしていたなんて。

俺だったら3日で飽きそうだ。



「異世界のことはどのくらいの分かる?」



そういえば、説明を貰えるんだった。

素直に何も知らないと言うしかないな。

下手に答えて、チュートリアルスキップされても困るし。


「一切知らないです。」

「一切?」

「はい...何もかも右も左も分からないような状態です。」


申し訳ないとは思うが、事実だから仕方ない。

いや、俺は悪くない。

逢依がいけないんだ。

ちゃんと説明してから転移させて貰った方が良かった。


「そーゆータイプの人か〜。3人目と一緒だねー。さっきの人とは真逆だけど。」


さっきの人というのは、逢依のことだろうか。

あいつが、リンクマターを持ってきたわけだし、異世界についての知識を持っていても不思議ではないな。


「じゃあ、どこから説明すればいいかな?説明なしで初見プレイなんていうのもありだけど、この世界ではそう簡単に蘇生できないから注意してよー。」


初見プレイか。

楽しそうだとは思うものの、無茶はしたくない。

簡単に蘇生できない様だし、教会で生き返ったりはしないんだろうな。

元の世界では蘇生なんて無理だったから、それよりは希望はあるけど。


蘇生等を抜きにしても、やはり事前に情報は欲しい。

俺のイメージしている異世界と全く違う可能性もあるし。

モンスターとか冒険者とか魔法とかファンタジーな感じの異世界だったらいいんだが。



「簡単なものでいいので、情報が欲しいです。」


「では、この世界について簡潔に説明するね。この世界には魔法やスキルいった概念があるよ。他にもジョブごとにレベルという制度もあるんだ〜。もしもだけど、君が二人目と同じ世界から来ていて、あにめ?とか、まんが?とか、らのべ?とかあとは、げえむ?だったかな?そういう感じの娯楽を知っているんだったら、そこに描かれている世界に似ているらしいよ〜。」



アニメなどの異世界に似ていると。

異世界ものは詳しいとは言えないが、知っている。

ゲームでファンタジー系のものをよくやっていたし、だいたいイメージ通りだと思う。


ところで、二人目ってなんだ。

3人目という言葉も聞いたし、転移者は何人か来ているということでいいのか?

前にも、この世界に来た者がいたんだろう。

そう考えないと、神様がアニメ、漫画、ラノベには例えられないし。

実際、神様的存在のこの人はアニメとかを知らなさそうだった。


単刀直入に聞くのがベストだな。


「先程からおっしゃっている二人目、3人目とはなんのことでしょうか?以前に転移者や転生者でもいたのですか?」


「テンセイシャ?っていうのは、知らないけど、転移者なら君の前に4人来てるよ。つい、さっき4人目が来たから君は5人目だね。君で最後の転移者なんだ〜。」



ついさっきということは、4人目は逢依みたいだな。

何故最後の転移者扱いされているか気になるが、とりあえずは4人目の確認してみるか。


「4人目の転移前の名前を教えて頂けませんか?」


名前が判明すれば、逢依なのか、そうではないのかはっきりはず。


「うーん、悪いけど君の願いには答えられないかなー。」


「そこをなんとか、教えて下さい。」


情報はできるだけ多く欲しい。

推測を確信に変えた方が安心出来るし。


「教えてあげれるなら、教えてあげたいんだけどね。そうじゃなくて、そもそもの話、私も知らないんだ。」


「神様的存在でもですか?」


「うぅ、そうなんだよ〜。なんでも二人目がねー。プライバシーを尊重すべきだ、っていって分からなくしちゃったんだよ。他にも無双を求めて異世界に来るから邪魔するな、とか転移者を擁護することも結構言ってた。」


おいおい、異世界の住民らしからぬ、ワードを聞いたぞ。

プライバシーって。

異世界でもプライバシーの権利が...とか言われてるのか?

ちょっとその異世界ハイテク過ぎませんか。


まあでも、二人目さんの言ったことは的を射ているな。

異世界といえば、チート!無双!ハーレム!のイメージがあるし。

実際に異世界に行けるってなったら、無双したくなるよな。



「で、ではどこまで把握できているのですか?」


神様には教える義務はないとは思うが、駄目元で聞いてみる。


「うーんとねー。ほとんど知らないかなー。今、私には君が見えていているけど、私に見えるのは転移前の姿だし、転移の準備段階で不安定な状態だから大きさも色もぐにゃぐにゃに歪んでるんだよね〜。そもそも私は、転移者に説明をするだけの存在だからね。出来ることそんなにないんだよ」


なるほど。

案内役っていうだけで、特別な情報を手に入れたり、個人情報を知れたりできないんだな。

それにしても、神様的存在視点では、俺は歪んでるのか。


俺にもなぜか自分が認識できないのは歪んでいるせいなんだろうか。

この空間を上手く捉えられないのは、目が出来上がっていないからとか...。

成り立っていない、ぐにゃりと歪んだ眼球なんてものを想像しそうになったが、SAN値がピンチになりそうだったので、やめた。



「あまり多くの情報は持っていらっしゃらないのですね。」


「元々は、転移者について全て知ることが出来たんだけどね〜。あ、そうだまだ仕事が残っていたよ。君の名前を決めなくちゃ。」


「それって転移後の名前ですよね?どういった名前にすることが多いんでしょうか?」


「うーん。みんな人それぞれだしな〜。昔の名前を捨てて全く新しい名前って人もいるなー。でも、君みたいな転移前の人物を探している人なら、前の名前を丸々...はやり過ぎでも、前の名前は多少残すと思うよ?」



あれ、俺いつ人を探してるなんていったっけ。


前の転移者の名前聞いたからか。

確かに全く違う名前にしたら、逢依を探すの大変だしな。


それにしても、異世界には漢字があるのか?

日本語が通用するのか?今俺が話しているのは日本語か?


考えると疑問しか湧いてこない。


落ち着け俺。

こんな時、ラノベやゲームはどうだったんだ。


名前はカタカナ表記が多いな。ヤヅキ・ヤミにするか。

そのままってのも味気がない気もする。

逢依を探しているんだし、アイをどこかに入れてやりたい。


一緒の身体に入るとかなんとかいっていた気もするし、結局俺って半ば無理やり転移させられてるから事情とかもろもろ理解出来てないんだよな。


転移完了したら逢依を問いただそう。

それで名前は、ヤヅキ・ヤミ、アイで、合わせるとアヅキ・ヤミかヤヅキ・アミがしっくりくるな。

ネーミングセンスは許してくれ、自分が背負う名前なんだし、他人に迷惑はそんなにかからないはず...。


よし、決めた。アヅキ・ヤミ。今日からおれはアヅキ・ヤミだ。



「決まりました。アヅキ・ヤミでお願いします。ええっと、わかるのでしたらカタカナでお願いします。」


「了解だよ。カタカナでアヅキ・ヤミ...ね。」


お?カタカナが伝わった?

これって、日本語があるということでは?



「よし、じゃあもう、転移させてもいいよね!説明することもほぼ全部話したし!」


まだ魔法の使い方とか、ギルドとか武器の種類とか、職業とか異世界について詳しいことはなにも知らないんですけど。



「ちょっと待ってください!詳しい説明が欲しいんですけど!」


「そんなの転移してからでもなんとかなるって!!大事なことはあらかた話したからね!我慢してたけど、君質問が多いよ?慎重なのはいいことだけど、当たって砕けてみるのも、重要なことだよ。なんかもう一気にやる気なくなってきたから転移させちゃうね??」



当たって砕けて、死んだら元も子もないんですけど。

声の感じから幼そうだとは思っていたけど、精神までそんなだったなんて。

もう少し知的なイメージだったんだけどなあ。



「もう少し説明してくださいよ...。それに何故そんなに早く転移させたいんですか?僕を転移させることで利点があったりするんですか?」


「だって、君の転移が完了したら、もうわざわざ毎日毎日確認しなくても済むんだよ?」


つまりそれって...。


「...面倒くさかったんですね。」


「うん!」


元気いっぱいに、言わないでくれ。

きっと顔が見れたら満面の笑みで言ってそうだ。


「そういうことで、もう転移させちゃうね!」


「えっ、ちょっ、待っt」


俺がまだ抗議しているのにも関わらず、足元に魔法陣が浮かびあがり、そして俺を光が包んだ。


意識が遠ざかっていく感覚。

この感覚を味わうのは、これで2度目だ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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