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第1話 私私詐欺

初投稿です。これから宜しくお願いします。

「起きてください!起きてください!!おーきーてーくーだーさーいー!!!」


誰かに耳元で叫ばれ、目が覚めた。

大きな声で、それも立て続けに叫ばれていたようだ。耳が痛い。

吃驚して飛び起きようとしたが、体が動かない。

体に尋常ではない重さのもの(・・)が乗っかっている様だ。

...正確にはもの(・・)ではなく、人のようだ。

寝起きの目を凝らし、よく見てみる。

髪色はピンクで、とても整った顔をしている少女がいた。

俗に言う美少女というやつだ。それもとびきりの。

そんな高嶺の花のような少女を観察していると、身体にかかる負担がはっきりと分かるようになってきた。

この完璧な見た目からは一切感じられない重量感。

押し潰されてしまいそうな重さに苦しんでいると、美少女がなぜか嬉しそうな顔で声をかけてきた。


「おっ、起きましたね!...でも少しいつもよりは早いですね。ご主人様どうなさったのですか?」

「いや、誰?」


あたかもいつも一緒にいるように話しかけてきているが、初対面の相手だ。

初対面でないのならば、俺が忘れているのだろうか?

しかし、こんなに可愛くて、俺のタイプを丸々反映したような顔、声をしている完璧な美少女に会ったことがあったのならば、きっと覚えているはずだ。


「てか、ご主人様ってなんだよ。」

「え、ご主人様私のこと忘れちゃったんですか?」

「忘れたも何も知らないんだけど、誰?」

「だから私ですよ。私、私。」

「何回私って言うんだ。私私詐欺かよ。」


俺の冷たい態度にショックを受けたのか、少し涙目になってしまった。

多少申し訳ないと思う。

しかし、俺の脳内は他のことで埋め尽くされている。


なんでこんなに重いんだよ!

見た目はとてもいいはずなんだ。

さらさらとしたピンク色の長い髪。

ぱっちりと開いた綺麗な瞳。

太ってもいなく痩せてもいないちょうどいい肉付き。

胸もたわわに実っているのに、くびれがしっかりとある。

まさにボンキュボンってやつだ。

そして、それを全て台無しにするこの重さ!

体重...いくつなんですか?とは死んでも聞けない。


おそらく心の中に留まらず、顔にも出ていたのだろう。

美少女が俺の上から降りてくれた。


ベッドから床に降りる際、地響きが起きた気がするのはきっとまだ寝ぼけているからだ。

流石にジャンプしたら地震を起こせるような化け物ではないと思いたい。


「...ご主人様。私のこと重たいって思ってましたよね?」


さっきよりも目に涙をためて言ってくる。

思っていましたよ。思っていましたとも。

でも口には出てないじゃあないか。

俺が悪者みたいになるからやめてくれ。


「ごめん。い、いやな、別に重たいなんて思ってなかったんだよ。ただ、ちょっと体にかかる力が大きすぎるなと思っていただけで...。」

「遠回しで重いって言っているようなものですよね?...はぁ。本当に私のこと忘れてしまったんですか?私のことを造ってくれたのはご主人様なのに。」

「ん?今なんて言った?」


なんか俺が造ったとかなんとか言っていたように聞こえたんだが。

まだ寝ぼけているらしい。


「ですから、ご主人様が私を造ったんですって。人間に限りなく近い人型ロボット、それが私です。」


あぁ、なんてことだ。

俺は寝ぼけているじゃあないらしい。

まだ夢の中にいるんだ。

そうきっとこれは、夢だ。

さっさと目を覚ませ、俺。




現実逃避してる場合じゃないな。

でも、こいつを造った記憶は一切ない。

そもそもこいつが誰かまだ分からない。

こいつがロボットだということも今わかったし。

こいつの目的はなんなんだ。


いや、いい方向で考えよう。

こいつを俺が造ったのなら、こいつは俺の言うことを素直に聞いてくれるはずだ。

それを利用すれば、この状況を理解出来る。

とりあえずは、いつ俺がこいつを造ったのか確かめよう。

実は幼少期の俺が、天才的な発明家で、造ったとかいう可能性も...。

な、無くはないしな。


「なあ、1つ聞いていい?」

「なんですか?」

「俺がお前を造ったのはいつか分かる?」

「うーん、多分20代の時だったと思いますよ?仕事をせずに家でニート生活していた時だと思いますし」


そんなに軽く、酷いことを言わないでほしい。

まだ、希望に満ち溢れた高校生の心をえぐってくる。

でもこれで、こいつが何処から来たかはわかった。


「...本当に俺がお前のこと知ってると思うか?」

「知ってるに決まってるじゃあないですか!ご主人様が私を造ったのですから。」

「俺、今高3だぞ?」


美少女は一瞬きょとんとした表情を見せた後、急に慌てだした。

おっかしいな...などと独り言を言っている。


「おーい?独り言ばかりで、説明がまだなんだけど。」

「あ、未来からきたって言うの忘れてました。すみません。」


申し訳なさそうな顔をしたのは一瞬で、舌を出して、てへっと笑った。

憎むに憎めないやつだ。

謎だらけの美少女だが、未来からきた人型ロボットであるという事実だけは分かった。

逆に言えば、そこそこの時間を掛けてこれだけしか進展がなかったということでもあって。

俺は深くため息をついた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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