バケモノ
目が覚めてもお母さんは真っ赤だった。
お父さんも起き上がらなかった。
次の日になっても、その次の日になってもぴくりとも動かなかった。
お母さんの携帯が何度か鳴って、家の電話が何度もなった。お母さんに電話は出ないようにと言われていたので私は何度も鳴る電話を無視してお母さんの傍にいた。
次の日になると家のチャイムが何度もなるようになった。チャイムが鳴っても出ちゃ駄目とお母さんに言われていたのでお母さんの横に丸まって居留守を使った。
やっぱりお母さんは動かない。
病院に連れていった方がいいのかもしれない。
電話に手をかけようとした瞬間、チャイムが何度も鳴って、ガチャガチャと音がした。
怖くなってお母さんの傍に駆け寄る。
バタバタと人が入ってくる音がして私はお母さんの手を握った。
黒い服を着たバケモノが私の腕に銀色の輪っかをつけて何かを喋る。そのまま玄関の方へ無理矢理連れていかれた。
「お母さんを助けて」
「お父さんが殺したの」
「お母さんが死んじゃう」
「救急車を呼んで」
多分バケモノには私の言葉がわからないのだろう。私の言葉は無視されて私はお母さんと離れ離れになった。
狭い個室でバケモノと対面する。
バケモノの言葉はさっぱりわからなかったけれど、なんでお母さんが生き返らないのか不思議がっているように思えた。
「お父さんがお母さんを刺したの」
「私の腕を掴んで何度も」
「お父さんはいつも次の日には生き返っていたのに」
「お母さんはなぜだか生き返らないの」
「私も不思議なの」
「お父さんがお母さんを殺したの」
「だからお父さんをいつもみたいに切ったの」
「なのにお父さんも動かないの」
何度も私は繰り返した。
バケモノはハッキリとニンゲンの言葉で
「オマエがハハオヤをコロしたんだ」と言う。
「私じゃない!私じゃない!」
「お父さんが!殺したのに!」
「なんで!私じゃないのに!」
叫んでもバケモノは私の言葉を理解してくれなかった。




