悪夢
私はあれから、なんどもなんどもお父さんを殺した。でも、殺しても次の日のうちにお父さんは何事も無かったかのように生き返る。
なんどやっても同じだった。
何ヶ月経っても同じだった。
もう諦めるしかないのだろうか。このまま怯えて、お父さんから逃げ続けるしかないのだろうか。
手首の傷はじくじくと痛くて私は生きてると教えてくれる。
これで、これで最後にしよう。
これが失敗したら大人しく怯えて暮らそう。
お母さんと遠出したかったなあ、二人で幸せに暮らしたかったなあ、まだ諦めてないけど、きっと今回もダメなんだろうな。
いつものようにお父さんが入ってくるところを狙って、ドアが開いた瞬間に足元を崩した。
叫び声がした。
私が馬乗りになっていたのはお母さんだった。
「真理亜...?」
「真理亜どうしたの?」
そのときお父さんが私の腕を掴んでお母さんに包丁を振り下ろした。
「やめてっ!」
私は叫んだ。お母さんも叫んだ。
私なのかお母さんなのかわからないくらい部屋にやめてと声が響き渡る。
何度包丁を振り下ろさせられたのだろう。
気がつけばお母さんの声が聞こえなくなっていた。
「ねえ、お母さん嘘でしょう?」
真っ赤に染まったお母さんは涙で顔がぐちゃぐちゃになっていた。
私は怒りにまかせてお父さんを突き飛ばして、いつも以上に切り刻んだ。不思議とお父さんは抵抗をしなかった。
私は泣いて泣いて泣いた。
お父さんがいつも次の日には何事も無かったように生き返っていたんだから、お母さんも生き返るはずだ。そうに違いない。
そう思った私は泣いてだるくなった身体を引きずって、お母さんの横にそっと寝そべった。
きっと大丈夫だから。お母さん。
真理亜の傍にいてくれるよね?生き返るよね?
私は瞼を閉じた。




