笑い声
買い物を済ませて帰宅。
今日は叫び声が聞こえてこないから真理亜は恐らく眠っているのだろう。珍しく朝に起きていたせいかしら。
冷蔵庫に肉をしまって、飲みかけの水が入ったコップをシンクに置く。シンクにホコリが固まっていてどうしたのだろうと首を傾げた。ふと床に視線を落とすと綿のようなものが点々と落ちていた。
掃除をしなければ。でもまずはご飯を作って、真理亜を起こさないと。
肉じゃがを作りながら台所の隅に置かれた薬を見る。だんだんと量が増えている。自傷行為もおさまるどころか酷くなる一方だ。このままだと学校にも行かせてあげられない。自立して1人で暮らすこともさせてあげられない。
ご飯が炊けた音がしてハッと我に返る。肉じゃがも味噌汁も副菜もできていてあとは食べるだけだった。
真理亜を起こそう。そう思って真理亜の部屋の扉を開けて驚いた。小さい頃から大事にしているぬいぐるみが可哀想なくらいバラバラだったのだ。
ああ、落ちていた綿はこの子の...。
真理亜はこのぬいぐるみがないと発狂したように笑い出す。近所迷惑だし、発狂するほど大切にしているのだろうし、このままにしておくことはできない。真理亜を起こさないようにぬいぐるみの残骸を集めて袋に入れた。夜なべして直してあげるしかないだろう。
自室に残骸が入った袋を置いて、真理亜を起こす。びっくりした表情の真理亜にご飯ができたよと声をかけ、リビングに向かう真理亜を見送る。
簡単に掃除をして綿を取り除いて真理亜の寝具を整えた。掃除機をかけながらリビングに向かう。
虚ろな表情でテーブルに頬杖をつく真理亜に小さくため息をついてご飯をよそい、目の前に置いた。
「いただきます」
小さな声で真理亜が言い、食べ始める。私もいただきますと食べ始めた。
「今日の肉じゃが美味しいね」
「そう?よかった」
いつもどおり。いつもどおりだ。良くも悪くも。
食べ終わった真理亜が薬を飲んだのを確認してお風呂に入らせる。お風呂場から発狂したように笑う声が聞こえて頭を抱えた。
早くぬいぐるみを直してあげなくちゃ。
真理亜の笑い声は甲高く、頭痛が酷くなる。そっと頭痛薬を飲んで、しっかりしなければとシンクに重ねた食器を洗いはじめた。




