微睡みのなか
私は監禁されている。監禁って言うと聞こえが悪いかもしれないけれど、実際私は部屋から出してもらえない。でも、拘束されていないし、自由を制限されていないし、むしろ軟禁と言うほうが合っているかもしれない。
お父さんは私をカッターで切りつける。私の腕は傷だらけ。
ぐずぐずと痛む腕で布団を抱きしめて毎晩眠る。
部屋の外から美味しそうな匂いがした。カレーの匂いだ。お腹が空いて、ドアノブに手をかけてみるけれど鍵が閉まっていて開かない。仕方ないので部屋にある小さな冷蔵庫の中のゼリーを食べる。けれど、ゼリーじゃ全然お腹が満たされなくて私は眠って誤魔化すしかないのだ。
ふと目を覚ますとお父さんが部屋の前に立っていた。私は怖くて叫ぶ。うるさいと怒られて私の腕をお父さんが切った。痛くて助けて欲しくて泣いた。
お母さんがどうしたの?と部屋に入ってきた。お父さんがお母さんを睨むのでお母さんに被害が出ないようにお父さんを抱き押さえた。
「あらあら、また切っちゃって。手当をしましょう?」
お母さんはお父さんには目もくれず私に声をかけた。
私はお母さんに連れられてリビングのソファに座らされた。手当をされている間、ずっと私は泣いていた。
お母さんは優しい。お母さんだけが私の味方だ。お母さんだけは私が護らなければならない。
だって私の味方はお母さんだけだから。お母さんしかいないのだから。
「カレー食べられそう?」
「うん」
今日みたいにお母さんが助けてくれた日はあたたかいご飯が食べられる。私は沢山カレーを食べた。それを見てお母さんは嬉しそうに笑う。
「お母さん、ありがとう」
「ん?急にどうしたの?」
お母さんは照れたように笑った。
お母さんがお薬飲まないとねって私の前に薬を置いた。私は病気らしく、そのために監禁されているらしい。
お母さんは私と沢山出かけたいらしいけど、お父さんに止められている。病気なのがいけないのだ。だから私はお父さんに傷をつけられるのだ。
仕方ないから薬を飲む。毎日飲む。朝も昼も夜も何錠も飲む。




