10話 これは戦いです!たぶん
完成!
「ふむ、お主らに問おう、ガルムの街に何用じゃ?」
金髪の男が結界前にて頭を掻きながら立ち上がる
「てめえらで保護した異世界人を俺らの団長様がご所望なんだわ」
「ふむ、して、お主らの所属する団体名はなんじゃ?」
その問いに茶髪の青年が答える。
「俺っち達が所属する団体はコレクトっす!」
キルトが首を傾げながらクレアに聞く
「ふむ、クレアくんは知っておるか?」
「はい、最近、迷い人や特殊なスキルを持つ者がコレクトと名乗る団体に拐われたり、戦闘行為を仕掛けてきたりしているそうです」
「ふむ、そうか、ではお帰り願おうかの」
キルトはそう言うと踵を返しガルムの街に向かおうとする。
「待ちやがれ!クソじじい!」
キルトは振り返り言う。
「ふむ、門も潜れぬ小僧の相手をしておる程、儂も暇じゃないんじゃよ、門を潜れるようになってから出直して参れ!」
「ふざけるなっ!!」
金髪の男が拳を握りしめると鱗が覆っていき、結界を殴りつける。
〈ガーン〉
〈ピシッピシピシッ〉
〈パリーン〉
ガラスの割れるような音と共にガルムを覆う結界が消える。
キルトは歩みを止めて、溜め息をつく。
「面倒くさいのぅ..」
金髪の男はにやにやしながら言う。
「門を潜れるようになったぜ?クソじじい!」
「はは、いつも通りの正面突破になっちゃったっす..」
茶髪の青年が自傷気味に笑いながら控えめに呟く
「そっちから来ねえなら、こっちからいくぜ!」
金髪の男叫び、間合いを詰め、キルトに殴りかかる。
〈ガン!〉
クレアが間に入り金髪の男の拳を片手で掴む。
「無策で突っ込んだ上に、変態してこの非力さ、同じドラゴニュートとして苛立ちを感じますよ?」
「くっくそ、離しやがれ!」
金髪の男が捕まれた拳を振りほどこうともがくがピクリとも動かない。
「旦那を離せ!」
茶髪の青年がクレアに向けて弓を射る。
「この場合、それは悪手ですよ?」
クレアは誰に言ったでもなく呟くと、右手に掴んだものを矢の軌道を目掛けて投げたのであった。
「一応、読んでたっすよ」
茶髪の青年の矢が金髪の男に触れると金髪の男が消えて、茶髪の青年の隣に現れる。
「エンチャントアロー、転移っす!」
「チッ、新入りに借りを作っちまったぜ」
「旦那の無鉄砲さをフォローするのが、俺っちの仕事っす!」
「へっ言いやがる、これで仕切り直しだ!」
キルトが顎髭を撫でながら言う。
「いや、終いじゃよ、『結界魔法・キューブ』っと二人纏まるのを待っておったんじゃよ」
「チッ、こんな結界なんてぶっ壊してやる!」
「ふむ、聞き分けがないのう、『空間共振』」
キルトが言いながら指をパチンとならすと箱状の結界に捕らわれた二人の身体がぶれる。
「ぐはっ、なんすかこれ..」
「ごほっごほっ、クソじじいが..」
男二人は血を吐き、倒れる。
「ギルド長、殺しちゃったんですか?」
クレアがキルトに問い掛ける。
「大丈夫じゃよ、内臓と脳を少し揺らしただけじゃよ」
「そうですか、では捕縛して街の警備に連行しておきますね」
「うむ、儂はギルドの方の本命が心配じゃから先に戻るとするかの」
クレアは振り返り、目に魔力を込めて、キルトの頭上を見上げると沢山の色の違う魔方陣が浮かんでいた
「キツネを狩るのにも全力を尽くす、それが魔導眼の翁ですか」
クレアは誰にも聞こえないような声量で呟いた。