同い年のプレイヤー
去年のインターハイ予選決勝戦を観ることにした笹浦二高女子ソフトボール部。そこには未だ見たことのない、コンマ一秒を争う仁義なき戦いが映し出されていた。
しかし、映像の持ち主である柚月の一言で部員たちを驚愕させてしまうのであった。
時刻は夕方の四時半を越えた頃の夕陽は、どこか優しさを感じるもので、まるで今日という一日を生き抜いた人間たちに、お疲れさまとでも呟いているようである。しかし、この時間での学生たちの動きと言えば、自宅に帰る者や、その途中で友だちと遊び呆ける者ももちろんいるのだが、ほとんどの者たちは部活に参加したり、学校や図書館などに残って受験勉強に努力する者たちがおり、夕陽からの優しい問い掛けなど微塵にも感じていない様子が伺える。そんな時間でのとある学校では、黒いカーテンで窓からの明かりがまったく入ってこない真っ暗な空間と化したパソコン室で、一人の男性教師と十一人の部員たちが、前方のホワイトボードから下げられたプロジェクターのスクリーンに目を向けている。笹浦第二高等学校の制服を纏った女子高校生たちが目を向ける先には、スクリーンに青い画面が映し出されており、白い文字で『インターハイ予選決勝戦 筑海高校 vs 仙総学院』と標されており、その画面からは徐々に文字が消えていくと、たくさんの人が集まっているグランドの場景が現れる。バックネット裏には数多の人々が帽子を被って団扇で扇いでおり、この炎天下の決勝戦を見届けようとするソフトボールファンの大人たちがグランドに目を向けている。また、一三塁ベンチのフェンスには、それぞれの学校の横断幕が飾られており、チームのユニフォームを纏った学生たちやその親たちで埋め尽くされており、それぞれチームカラーのメガホンを持ちながら応援している。
赤一色で塗られた一塁ベンチには、赤を基調としたユニフォームの筑海高校、対する三塁ベンチには、オレンジの仙総学院の選手たちがそれぞれベンチ前に並んで、今か今かと集合の合図を待ち構えている。
『集合!!』
『行くぞーー!!』
『『『『オオーー!!』』』』
四人の審判がホームベースに集まると共に、両ベンチからはそれぞれの選手たちが駆け出し、本塁前で向かい合った。彼女たちの、相手に容赦しない真剣な様子は、このビデオからも伝わってくるもので、インターハイ出場と三年生の引退を掛けた、これからの仁義なき戦いの始まりに息を呑むものがある。
黒の審判団に挟まれた、レガースを服内に身に付けやたらガタイが良く見える者が、両サイドに並んだ選手たちに何度か顔を向けると、右手を高々と挙げると共に試合開始の宣言をする。
『互いに、礼!!』
『『『『お願いしまーすっ!!』』』』
『絶対勝つぞー!!』
『オオーー!!』
ベンチの監督も揃って一礼し、それぞれのキャプテンからは指揮を高める声が上がり、意気込んだメンバーたちとと共に本塁から離れていく。
先攻となった筑海高校は、ベンチに戻るとすぐに監督の回りに集まっており、一方で仙総学院のメンバーは守備に就いて投球練習、内野外野に別れてのボール回しやキャッチボールを行っている。
「あ、宇都木監督だ……」
ビデオを観ている、顧問の田村信次は、一塁ベンチから出て選手たちを集める監督、宇都木鋭子に一言漏らしていた。
そこには、一昨日の練習試合で対戦したときに出会った監督が映っていたが、彼女の腕組みをしての堂々とした立ち振舞いは威厳さそのものを指しており、練習試合のときとはまた違う厳格な雰囲気が伝わってきていた。
仙総学院の投球練習が終わり、ピッチャーズサークルで円陣を組み終わると、筑海高校の一番バッターが打席に入る。周りと比べて肩幅がそれほど広くないが、ピンと伸ばした背の高さや、観ているこっちを緊張させてしまう彼女は恐らく当時の三年生であろうと、皆の頭に浮かびながらゲームが開始される。
メガホンを叩く音、太鼓が叩かれる音、そして選手たちのかん高い応援が聞こえてくるこの試合、仙総学院の、周りと比較して背の低い左ピッチャーは大きく左腕を回してボールを放つ。
バシッ!!
『ストライク!!』
背番号『18』を背負ったピッチャーがボールを放した瞬間には、既に背番号『16』のキャッチャーのミットの音が響いたように聞こえていた。
ビデオを観ているみんなは、そのボールの速さには静かに感嘆していたが、ピッチャーとして同じポジションを守る舞園梓には、このストレートの速さには誰よりも驚いており、仙総学院の長い黒髪を揺らす投手を固唾を呑んでじっと観ていた。
バシッ!!
『ストライク!!バッターアウト!!』
初回の筑海高校の攻撃は、一度はフォアボールでランナーを二塁まで進めたものの、仙総学院の圧巻としたピッチャーに零で抑えられてしまった。まだまだ幼さが伺える仙総の左ピッチャーは、ボール球が多く出ていたものの、筑海高校の四番バッターを三振にさせてホッとしたように胸を撫で下ろして、周りの選手に肩を叩かれながら自身たちのベンチへと向かっていく。
攻守交代で今度は筑海が守備に就く一回の裏、プレート上には一昨日に見たことない右ピッチャーが立っており、エースナンバーを背負って投球練習を開始する。ボールの速さは相手に劣るようにも見えるが、少し荒々しさを感じさせていた仙総の投手よりも、キャッチャーの構えたところにボールを投げきれていることから、コントロールに関しては勝っているのがわかる。
「あ、穂乃ちゃんだ!」
映像を観ていたキャプテンの清水夏蓮がふと、スクリーンに指を差して隣の梓、中島咲、そして後ろにいた篠原柚月にも笑顔で知らせていた。小学生当時、同じチームとして努力していた花咲穂乃は、来年のキャプテン候補となっているくらい活躍をしているようで、映像ではセカンドの位置でボールをファーストに投げている。この当時はまだ高校一年生で背が低い彼女からは、まだまだ試合に緊張した様子が自然と伝わってくるが、それ以上に一年生である彼女が既にこんな大舞台に立っていることに、ビデオをこの場に持ち出して予め知っていた柚月を抜いて、元笹浦スターガールズの三人は驚きを隠せていなかった。
背番号『17』を着けた、今の柚月に近い背の高さである仙総学院の細身のトップバッターが、左打席に入ると一回裏の攻防が開始される。審判の合図よりも周囲の応援の声がよく聞こえる映像では、筑海高校のピッチャーは長い右腕を回してウィンドミルの動作に入る。
ブラッシングの音と共に放たれたボールは一直線でキャッチャーミットに向かっていくが、突如そのボール前にバットが下ろされる。
コーン……
バントを試みた一番バッターは、打球をサード方向フェアゾーンに転がした瞬間、勢いよくファーストベースへと駆けていく。だが一方、筑海高校のサードも打球に全力で向かうと、ライン際に転がるボールを右素手で拾い、肘と手首をしならせてすぐにボールを一塁に構える穂乃に投げ込む。
バシッ!!
『アウト!!』
投げた後には勢いで地面に倒れていたサードだが、コンマ一秒でバッターをアウトにできたことにより、嬉しさのあまり一度地面を叩いていた。
「すっげぇ~……速いなぁ……」
今のワンアウトを観ていた牛島唯は、そのあまりにも俊敏で無駄のない的確なプレーに茫然と眺めていた。先ほどのミーティングでマネージャーの柚月に言われた、守備の俊敏なプレーとは、このようにして行うものだとわかり、自分にできるのか不安にも思えたが、眉間に皺を寄せながらしっかりと映像を集中して観ていた。
一回の裏の攻防もスコアボードには零が記され、緊迫した試合は二回三回と次々に進んでいく。コントロールがあまり定まらないがボールの勢いで三振を何度も奪う仙総学院の小柄なピッチャー、打たせながらも固い守備のおかげでアウトカウントを増やしていく筑海高校のピッチャーと、センターフェンスにある電光掲示板には、両者に六回まで零が並んでおり、速球派と制球派による白熱した投手戦となっていた。
ここまで試合は淡々と進んでいったようだが、映像を観る笹二の選手たちには、そのアウトを取るシーンのどれもがファインプレーにしか見えなく、皆映像に釘付けになっていた。守備では、飛び込んで打球をグローブに収め、すぐに起き上がって投げる動作、相手が盗塁を試みるもキャッチャーの捕ってからすぐに投げる球でアウトのシーン。打撃では、決して前足を上げず構えて、ボールが来た瞬間にコンパクトなスイングを繰り返す打者からの強い打球、隙あらば次の塁へと猛ダッシュするランナーと、その両者の華麗なるプレーを誰もが黙って観ている。
未だに均衡が破れない試合は七回の攻防に入り、ついに最終回を迎えていた。ここまで両者共に一歩も譲らない試合展開は、選手よりもギャラリーの方がドキドキしている様子が伺え、誰もがグランドに目を遣る。
バシッ!!
『ボールフォア!!』
この回から肩で息をするようになった仙総学院のピッチャーは、筑海高校の先頭打者にフォアボールを出してしまう。ユニフォームの裾で顔の汗を拭うと、悔しそうな表情を浮かべながらボールを受け取っていた。
出塁して喜びに浸る筑海高校は、すぐにネクストバッターにバントを成功させて得点圏にランナーを置き、ワンアウトランナー二塁の状況をつくることができた。
チャンスを迎えた筑海高校、対してピンチに立たされた仙総学院だが、ここでバッターボックスには小柄な一年生が左打席に入る。
「穂乃ちゃん……」
スクリーンに旧友が見てとれた夏蓮は、心配した顔で両手を固く握りしめていた。今回、八番セカンドとして出場している穂乃は、ここまでノーヒットの結果である。夏蓮には、同じ背丈であるはずの相手ピッチャーが大きく見えるくらい、穂乃の様子は緊張で震えているのがわかる。夏蓮は祈りを込めて、穂乃が深呼吸をして打席に入るのを見届けると、仙総のピッチャーは持っていたロジンを地面に叩きつけてセットに入っていた。
両者共に強気の表情を浮かべるなか、仙総学院の投手は凄まじい速球を投げ込んでいく。
バシッ!!
『ストライク!!』
唸りを上げているストレートには、あのバットコントロールが上手い穂乃ですらなかなか当てることができずにいた。
いくつかボール球を挟んで、カウントはツーボールツーストライクと追い込まれてしまった穂乃は、バットを少し短めに持ち始め、足場を均して再び構える。
仙総の投手は膝にグローブを置いきながら、左裾で顔の汗を拭き取りながらキャッチャーからのサインを確認すると、頷いて再びセットに入る。一度大きく深呼吸をしてみせた後、身体をくの字に折り曲げて重心を低くすると、次の瞬間に身体を起こして大きく左腕を回しながらプレートを蹴り、ドスンと右足が着地するとそのウィンドミル投法からボールが発射された。ここでも勢いのあるボールは放たれるが、キャッチャーミットに到達しようとしたその刹那、左打者である穂乃のバットが繰り出される。
カキーン!!
ライナー性の打球を追っていくカメラには、セカンドの頭を越えるシーンが撮られており、ボールが外野の右中間へと運ばれているのがわかる。大歓声が聞こえてくるなか、バッターの穂乃は一塁を周り二塁へ、一方仙総学院のピッチャーは右中間の方を見たまま固まって立ちすくんでいた。
打球は外野から内野へと返されるが、その時にはセカンドランナーがホームに滑り込んでおり、筑海高校は待望の一点を先取することができた。
一塁ベンチ内では、生還したランナーと抱き締めあって喜んでおり、一塁側スタンドで応援している部員たちからも盛大な歓声が沸いていた。バッターの穂乃も二塁上で、一塁ベンチに向けて右腕を高々と挙げて笑顔で喜んでおり、この球場が筑海高校のチームカラーである赤一色に染まっているようだった。
ガックリと肩を落としたピッチャーは、自身のベンチに落ち込んだ『18』の背中を向けていると、そのベンチからは男性の、監督らしき大人がグランドに出てくる。若々しい信次とは対照的で、白髪混じりで口先を尖らせる恐い顔を浮かべる男は、主審のもとへと訪ねて口を動かしていた。すぐにその場を去ると、ベンチのすぐ前にあるブルペンのピッチャーとキャッチャーに目を会わせると、指を差して、行ってこいの合図を送ってベンチの中に入っていく。
「ピッチャーとキャッチャーが交代か……」
ピッチャーに関しては、同じポジションとしている梓は、この場面での交代はとても屈辱的なものだと感じながら、下を向きながらベンチに去っていく投手に心を移していた。ピッチャーとは中味は勿論だが、終わり方こそが大切であって、負けていても打ち取った後の交代と、どんな状況だろうと打たれた後の交代だったら、間違いなく前者の方が気持ち的には楽であり次に繋げる自信となる。それがこんな交代をさせられるとは、このピッチャーは相当苦悩を感じてるに違いない。
投手として再びソフトボールに復帰した梓は、その無惨にも見えてしまう、小さな背中の背番号『18』を、ベンチ中に消えていくまでしっかりと見届けた。
代わった仙総学院のピッチャーは、背中に『1』のエースナンバーを背負っており、さっきの投手よりも一回りも二回りも大きな身体をしている。どうやらここまでエースを温存していた様子の仙総が焦りだしたのだと見てとれる状況だった。
ランナーは二塁で再びチャンスの場面が訪れている筑海高校は、ここで勢いづけてもう一点取ろうと声を出しており、監督の宇都木も代打を出して勝負を仕掛けていく。
バシッ!!
『ストライク!!バッターアウト!!チェンジ!!』
しかし、立て続けに出した代打も無惨なことに、二人ともバットに当てられず三振してしまい、結局この回は二塁に残塁する形となっていた。
仙総学院のピッチャーからのボールは、先程の先発ピッチャーと同じくらいの速さに見えたが、それ以上に威圧感が全面に出ており、引退したくないという三年生の意地が表れていた。
試合は一対零と、筑海高校が一点リードで迎えた七回裏。あとアウト三つで勝利し、横断幕にも書かれているインターハイ出場を叶えられる筑海高校ナインは、ピッチャーズサークルで大きな声を出し合い、それぞれのポジションへと駆けていく。
一方、この回で一点も取ることが出来なければ、高校ソフトボールが終わってしまう仙総学院は、学校制服姿のマネージャーも含めて、ベンチ前で円陣を組んで気合いを入れていた。
精神を統一させた両者だが、ここで仙総学院のトップバッターは打順一番からであり、初回にセーフティバントを試みた俊足バッターが左打席で胸を張って構え始める。
お互い最後の夏を掛けたこの最終回、筑海高校の右ピッチャーは初回同様にキャッチャーの構えたところへとボールを投げ込んでいく。
カキーン!!
『ファール!!カウントツーストライク!!』
一球目は見逃し、二球目はヒッティングで追い込まれたバッターは、一度打席から外れてベンチの方を見ていた。何らかの指示を出されて、ヘルメットの鍔をつまみながら頷くと、天を仰いで大きく深呼吸をし、再び左打席の後ろ側で構える。
バッターからの視線を浴びる筑海のピッチャーは、キャッチャーからのサインに首を縦に振るとすぐにセットに入り、一呼吸置いたあとに身体を寝かせ、プレートを蹴ると共に推進運動を開始してウィンドミル動作に入る。踏み出した足がピッチャーズサークルラインまで届くと、彼女からはその表情と比例するボールが弾き出された。
相変わらずキャッチャーのミットは微塵も動かさないボールが放たれると、突如左バッターは前足をホームベースから遠ざけて、後ろの軸足をボールに向かって踏み込んでいた。すると肘を畳んでボールをギリギリまで引き付け、地面に叩きつけるようにして振り抜く。
カキーン!!
ドスッ!!
バットの快音と共に地面との接触音を鳴らした打球は、バウンドして高く上がったままサードとショートの間へと向かっていく。勢いのある打球はサードの頭を飛び越してしまい、待ち構えていたショートが捕球してすぐにファーストへ投げようとしたが、既にベースにたどり着こうとするバッターランナーの場所を見て判断し、ボールを持ち換えただけで終わってしまう。
『ヨッシャーー!!』
見事に内野安打で先頭の出塁を決めたバッターは、ファーストベースを駆け抜けると両手を拳にしてガッツポーズをしており、自身のベンチからも大きな歓声を浴びていた。
映像を眺めていた一年生の東條菫は、この前の練習試合で見たような光景だと思いだし、隣に座る菱川凛に口を開く。
「あれって、月島先輩もやっていた打ち方だよね?」
「うん。確かスラップっていう、内野安打を狙った打ち方なんだって……」
筑海高校の練習試合で、一番の月島叶恵もやっていたこの打ち方は、打席内で走りながら打つという打法であり、主に左バッターがファーストベースから遠い逆方向に打球を転がすものである。今回の映像で流れた打球は、転がすというよりも地面に叩きつけるようなものだったが、これもスラップの一種である。サードとして守っている唯からは、不意打ちのようで汚いやり方だとも言われているが、内野安打としてヒットに代わりはない。
「内野安打かぁ……足が速いからこそできる技なんだろうなぁ」
感心したように言葉を漏らした菫は、再びスクリーンへと顔を向ける。自分はショートを守っているが、もしもこんな打球が来てしまったらアウトにできるのだろうか。ソフトボールはいかに早く捕っていかに早く投げるのか、全てに早さが求められるこのスポーツは、とっても難しいのかもしれない。
画面上で悔しがるショートの選手が映されるなか、同じポジションの菫は、いつか自分にも訪れる場面に違いないと思い、心を移すと共にこれからの練習は今まで以上に努力しなきゃと固く誓っていた。
ボールが返されたピッチャーは、ショートから笑顔で受け取り、次は頼むよと言っている仕草を見せると、オレンジに染まった仙総学院のベンチから再び男の監督が主審へと向かっていく。顔を会わせて一言伝えると、ベンチからはヘルメットを深々と被って顔が見えないが、背の低い選手がバットを肩に担いで打席へと向かいはじめる。この場面で二番バッターに代打として向かう途中、大きな背の監督とのすれ違いざまに一度肩に手を載せられるが、言葉のやり取りを行うことなく、すぐに左打席でどっしりと構えて背番号『15』を見せつける。
「この場面で代打なんだぁ……」
キャプテンの夏蓮が、ふと映像を眺めながら言葉を吐き出すと、隣に座る梓、後ろにいた柚月にも聞こえていた。
ピッチャーの梓は、意外そうな表情を浮かべる夏蓮の方に顔を向けて、なぜそのように感じるのかわからず黙っていたが、後方からマネージャーの柚月は、うんと一言声を鳴らす。今度は柚月の方に首を曲げると、彼女の表情は少し雲がかっているようにも見え、この映像の持ち主であるマネージャーの重そうな口が開けられる。
「……ノーアウト一塁。ここで代打を出すってことは、二番バッターの使命である進塁打を目的としていない。つまりは、代打として現れたバッターもヒットを打ってもらうのが目的。筑海高校はここで気づくべきだったのよ……仙総は同点にする気なんか更々ない。逆転することしか考えていなかったって……」
「え?どうして……延長戦にしてはいけない理由とかあるの?」
柚月の言葉を聴いて不思議に感じた梓が聴くと、マネージャーは一度頷いてみせる。
「……確かに、お互い選手層は互角だから、一見延長戦でけりを付けようと考えても不思議じゃない。でも、筑海の守備を見て……」
すると梓は柚月の言われるがままに映像へと顔を向けて、映し出された筑海高校の守備メンバーの顔と背番号を確認する。
「さっき代打を出された選手が、リエントリーで守備に就いてるでしょ?」
「……本当だ……でも、どうしてこれが理由になるの?」
再び後ろに振り向いた梓だが、暗い表情の変わらない柚月は映像を見ながら口を動かす。
「リエントリーを行使している……この時点で筑海は、延長戦になっても戦えるようにしているのよ。要するに、守備固めをしていない。最終回まで激しい攻防で疲弊しきっている選手は少なくないはずだし、選手がたくさんいる筑海だったら守備要員が数人いても不思議じゃない……これは、宇都木監督の判断ミスといっても過言ではないのよ。だからこそ、ここの代打起用でメンバーを代えるべきだったのよね……」
柚月の静かな言葉には、不思議がっていた梓も素直に納得していた。ここまでの試合内容は、それは息を呑む場面が多々あるもので、その壮絶さと言ったら、筑海高校の泥だらけになったユニフォームを見れば明らかだ。相手の低く速いゴロにも必死に飛びついて捕球し、ファールゾーンに飛んだ打球にも全力で追いかけていた。打たせてアウトを取る方針から生まれた疲労は、確かに選手たちを大きく影響させているのかもしれない。
固唾を呑んで見守る梓だが、スクリーンのピッチャーは代打のバッターへと果敢に投げていく。
『走ったー!!』
バシッ!!
『ストライク!!』
ピッチャーから外角ストレートを捕球したキャッチャーは、すぐに持ち換えてセカンドベースへとボールを放つ。
バシッ!!
『セーフ!!』
二塁上でショートの選手が受け取りタッチを試みるが、間一髪のところでセーフとなった俊足ランナーは、再び両手でガッツポーズを決めて喜んでいた。仙総学院のベンチだけでなく、スタンドから応援する部員たちからも大きな歓声が送られるなか、負けているはずのチームが勢いに乗っている錯覚を生み出していた。
「……勝負、決まったわね……」
「そうね……筑海には残念で仕方ないけど……」
梓の後ろで一言ずつ漏らした叶恵と柚月だったが、どうして筑海高校が負けるようなことが言えるのかわからなかった。盗塁が成功したからといって、状況はノーアウトランナー二塁でまだ筑海が一点リードしている。
「叶恵ちゃんと柚月ちゃんの言う通りだよ……」
今度は隣の夏蓮が映像を観ながら話しており、梓は驚いた顔を彼女に向けていた。
「ど、どうして?」
「梓ちゃんだったら、外角ストレートの次にどんな球投げる?」
「え……盗塁はもう無さそうだから、変化球で、インコース、とか……」
既に梓の目が点になってしまって片言で話していたが、映像を真剣に観る夏蓮は深々と頷く。
「緩急をつけて、相手に目を慣れさせない……確かにその通りで、ここで追い込んで最後に外角を打たせて三遊方向へのゴロなら、ランナーも進むことが出来なくて済む一番の安全策……言い換えれば、この配球は王道中の王道。でも、王道だからこそ、誰でも予想できる配球になってしまう」
真剣に話をしている夏蓮だが、未だに理由がわからない梓は口を閉ざしていると、後方から叶恵のため息が聞こえてくる。
「つまり、ここでバッターは引っ張って長打を狙っている。今さら守備固めしたとしても、もう遅いのよ。こんな状況じゃねぇ……」
「うん、そうだよね。だって、打球は打球でも、誰にも捕れないものがあるんだから……」
「打たせてアウトを取るピッチングが、どれだけ恐ろしいものか、まだ宇都木監督は知らなかったようね……いや、知ってるはずだけど、目の前の勝利に集中をしてしまったのがいけなかったんだわ……」
後ろの叶恵、隣の夏蓮、再び後ろの柚月と、首を何度も振る梓が聴いていたが、言葉を終えた三人の視線が向かう先にあるスクリーンへと、恐る恐る目を遣る、そのときだった。
「ホームラ~ン……」
すぐ横で中島咲の小さな声が聞こえた梓は、予言のような言葉に驚いてすぐに咲へと顔を向ける。
「なんでわかる……の?」
しかし、驚いた顔はすぐに呆れた顔に変えた梓だった。なぜなら、隣に座っていた咲が、机上で頭を置いて、涎を垂らしながら気持ち良さそうに目を閉じていたからである。
「え、咲?」
「ハッハ~……やめてよ、涼子ちゃん……そんなに食べられないよ~……」
ホームランから何かを食べさせられている夢を思わせる咲に、梓は彼女がどんな夢を見ているのか気にはなったが、それ以上に隣で居眠りしている食いしん坊オデコ少女を、細目で冷たい視線を送っていた。
カキィーーン!!
突如音割れした快音が響くと、梓はすぐにスクリーンの映像に目を向ける。どうやら梓の言っていた通り、インコースへと遅めの変化球を投げたピッチャーだが、小柄な左バッターは思いっきり引っ張ってフルスイングをしており、ヘルメットの影に埋もれた顔で上空を見上げる。
高々と上がった打球はカメラのアングル上、距離感があまり見てとれないが、空に浮かんでいた白い雲をいくつも通りすぎていくことから距離を増しているのがわかる。そしてついに、打球は地面に落ちていき、緑の芝生と接触した。傾斜となっていたその芝生はボールを転がしていき壁と接触させるが、それは無情にも、ライトフェンスという越えてはいけない壁だった。
「……うそ……」
逆転サヨナラのツーランホームラン。
この試合で最も大きな歓声を浴びるバッターは、ゆっくりとダイヤモンドを一周し、ホームで待っていた仲間たちに手厚い祝福を受けていた。
一方で敗北してしまった筑海高校の選手たちは、下を向いてゆっくりとホームベースに向かって整列しようとしていたが、何人かの選手はそのポジションの場で泣き崩れており、勝利に浸る喜びと、敗北に溺れる悲しみが映像に流れていた。それはあまりにも衝撃的な内容であり、笹浦二高の部員たちは皆目を見開いて目に焼き付けていた。たった一回のフルスイングで試合が決まってしまったこの試合、誰もが残酷であると感じながら、鋭い目でいる者、可哀想なあまり涙を流しそうな者と、決して良い空気とはなっていなかった。
ピッ……
スクリーンの映像は最初の真っ青な画面に戻ると、柚月と叶恵がパソコン室の電気を点けて黒のカーテンを開けていく。
室内が明るくなったところで、柚月は教卓前で教室の天井にあるプロジェクターにリモコンを向けてボタンを押し、青い画面も消えてスクリーンを戻して、隠れていたホワイトボードを出現させる。
柚月のアシスタントのように動いていた叶恵も、ホワイトボード前に来て立ち始めるが、映像を観ていた選手たちは誰も話さず静かな空間となっていた。
「……と、まぁこんなところね。私たちが県でトップになるには、少なくとも、この仙総学院、そして一昨日戦った筑海高校を倒さなきゃいけないわ」
教壇に立っていた柚月が、あまり浮かばない表情の部員たちに顔を向けると、隣に暗い表情の叶恵も立って、一度舌打ちをして口を開く。
「仙総学院は、全国のなかでもトップクラスのチーム。毎年、スポーツ推薦で選手が入部しているチームだから、相当手強い相手よ。正直、並大抵の努力で、敵うような奴らじゃない……」
最後に下を向いて俯く叶恵が言葉を切らすと、ふと前方に座っている一人が挙手していた。
「ねぇねぇ!」
「何、咲?」
いつの間にか目を覚ましていた咲は、不思議そうにキョトンとした顔を柚月に向けている。
「どうして、この二チームの試合だけを観せたの?他にも色んなチームもあるんだから、この一試合だけじゃなくて、たくさん観た方が良いんじゃないのかなって思ったんだけど……」
あの咲にしてはなかなか優れた発言ではあったと多くの部員は感じていたが、彼女が居眠りしていたことを知ってる梓は、オデコに赤い寝跡をつけた彼女に疑わしい視線を送っていた。
「確かに、咲の意見は間違っていないわ。でもね、この試合をみんなに観てもらった理由は、どんなチームがあるか、じゃないの……」
重々しいトーンで話した柚月は、微笑んでいた表情を変えて、真剣な顔を座る部員たちに見せつける。
「……どんな選手がいるか、これを知ってほしかったの。だって……」
真剣な表情から放たれた言葉だが、ほとんどの部員たちはポカンとした顔を浮かべている。しかし、彼女の言葉を理解できたのか、キャプテンの夏蓮だけは下を向いて曇天の表情に浮かばせていた。
経験者であり、よく柚月と共に過ごしてきた梓は未だにマネージャーの気持ちがわからぬままいるが、次の言葉でその真意が明かされる。
「今の試合で活躍した選手たちは、私たちと同い年だから……」
柚月の発言には誰もが驚きを隠せずにいた。特にスクリーンの目の前で観ていた梓には、とても衝撃的な一言だと感じていた。
「じ、じゃあ、最後にホームランを打ったのは、一年生だったの!?」
普段学校では落ち着きを見せるクールな梓も、立ち上がって言葉を荒げると、教卓に両手を置く柚月は目を閉じながら頷いていた。
「……それだけじゃない。穂乃を初め、最後に代打で出たバッター、それに仙総のバッテリーすら一年生だったらしいの……」
「え……」
目を大きく開けた梓は、そのまま固まってしまい立ちすくんでいた。あの、ボールが速い先発ピッチャーすら一年生……しかもキャッチャーまで……そんな一年生が、三年生率いた筑海高校を一失点で抑えていたってことなの?
「要するに、よ……」
厳しい表情を浮かべる柚月の隣で、叶恵が同じような表情で彼女の肩に手を置いて話し出す。
「私たちは、あの選手たちと競いあわなきゃいけないってことよ。どう?これが私たちが目標としている、インターハイへの道。そんなに甘くない道だってことをしっかり覚えておきなさい」
鋭い目付きの叶恵は、座る部員たちの顔を一人一人見ながら話すと、最後に梓を睨み付けてストンと座らせた。腰に片手を着けて、恐い顔を見せつける特攻隊長は最後に、前席で俯くキャプテンに視線を送る。
「キャプテンからも、何か一言あると助かるんだけど……」
すると夏蓮は小さく頷いてゆっくりと起立する。踵を返して着席している部員たちの表情を伺うが、皆怯えるような顔をしているのがわかり、キャプテンを更に辛そうな表情に変えてしまう。確かに、この映像を観てしまったら、みんながこんな顔になっても仕方ない。この茨城県には、これだけ強いチーム、これだけスゴい選手が多くいるとわかってしまったから……勝利のために頑張って、あわよくばインターハイ出場を目指して、このみんなで楽しくソフトボールをやろうと思っていたけれど、正直みんなの不安感は否めない。ヤル気を落とす一つの要因になっていなければいいんだけど……
なかなか話さない夏蓮は、この重い雰囲気のなかで何を喋れば皆を鼓舞することができるか考えているが、残念ながら言葉が見つからずにいた。内心は、気にせず楽しくやっていこうという本音があるが、その発言はきっと経験者として本気でインターハイを目指す叶恵や柚月を怒らせるに違いない。かといって、元気を出して練習を精一杯頑張ろうと言っても、まだまだできたてのこの部には半数ほどの未経験者いることから、辛そうな未来を感じさせてしまい、最悪の場合は部を辞めてしまうことも考えられる。
堂々巡りの想いに駆られるキャプテンは、下を向いて両手を拳にして震わせており、嫌な静かな空間を生み出してしまっていた。
「……へぇ、おもしれぇじゃん」
ふと前方から聴こえた声に、ハッと気付いた夏蓮は拳をほどいて前を見る。そこには、教室の一番後ろの席で座っている、隣に植本きらら、星川美鈴によって挟まれた姉貴分、牛島唯が腕を組ながら、白い歯を夏蓮に見せていた。
「唯ちゃん……どうして……」
なぜか楽しそうな表情を浮かべる唯には、夏蓮だけでなく周りの選手たちも不審な視線を送っていた。
いっこうに明るい表情を消さない唯は、一度鼻で笑って見せると、室内みんなに聞こえるように声を鳴らす。
「つまり俺たちだって、努力次第であんなスゲェ選手に成れるかもしれねぇってことだろ?まあ奴らは経験者かもしれねぇけど、俺らと同い年ってことは、俺らだってあんなプレーできてもおかしくねぇって訳だ。なんかそう考えちまったら、一年後が楽しみで仕方なくてよ」
ヘヘと最後に少年のように笑った唯に、キャプテンの夏蓮はやっと微笑みを見せることができた。
「ハイハ~イ!!私もユイちゃん先輩と同じくでーす!!」
今度は窓側の席に座っている、小さな背のメイ・C・アルファードが高々と短い右腕を挙げて叫んでいた。サファイアの瞳をキラキラと輝かせるメイは、立ち上がって身体を半回転させ、皆の顔を見ながら話し続ける。
「だって、強い敵がいるなんてワクワクしませんか?私はこのビデオを観て、こんな熱い試合をやってみたいなぁって思います!!」
幼い子どものように無邪気で明るいメイを、傍で見守っていた菫も口を横に伸ばして見せた。
「相手に不足はないってことだね!」
「ああー菫!!それ、私が言おうとしていたのに~!!」
笑顔を近づけて放った菫に、メイは白く溶け出しそうな頬を膨らませていた。
ゴメンゴメンと笑いながら謝る菫にメイが何度も叱っている声は、充分みんなの耳に届いており、さっきまでの暗い雰囲気は嘘のように照らされていた。中でも一番ホッとしていた夏蓮は、妹に怒られている姉のような風景に温かい視線を送っている。メイちゃん、ありがとう。経験者であるあなたからそんな言葉を貰えると、とても説得力があるし、素直に受け入れられる。それに……
未だに怒って目を尖らせるメイだったが、夏蓮は次に教室の後ろで座る唯へと顔を向ける。それに唯ちゃん……未経験者なのにそんなことが言えるなんて、経験者顔負けだよ。もしかしたら、みんなのヤル気が下がってしまうかもしれない、もしかしたら、誰かが辞めてしまうかもしれない……そんな私の悩みは、ただのいきすぎた思い込みだったのかもしれない。
メイに叱られる菫を、今度は凛が後ろから抱き締めて、再び、菫を渡さないと言わんばかりの目付きで金髪幼女を睨んでおり、それを見ている周りの選手たちにも徐々に明るい表情が戻っていた。
「ああー凛!!放してください!!今私は、ヘラヘラしている菫を叱っているんですから!!」
「あなたの方がいつもヘラヘラしてる……」
「あ、あのぉ凛?抱き締めるの、強くない?」
「おお!!やっと菫が反省してきましたね!!まったく、困った選手です!!」
「あなたにだけは言われたくない!」
「だから、凛……痛い……苦しい……」
胸の締め付けが増しているせいで、徐々に顔を青くしていく菫と、必死に言葉をぶつけ合うメイと凛。
「へへっ!アイツら、いつもあんなんだけど、結構仲良さそうじゃねぇかぁ?」
「そうにゃあ~。喧嘩するほど仲が良いとは、メイシーとリンリンのことにゃあ。小さいあの二人を見てると、なんだか和むにゃあ~」
「喧嘩するほど仲が良い……唯先輩と喧嘩……ダメだー!そんなの考えられない!」
ニッと口を開けて微笑ましく眺める唯、メイと凛のやり取りを見ながら癒されているきらら、そしてなぜか頭を抱える美鈴。
「まったく、アンタたちは本当に幼稚で小さいんだから……」
「叶恵の身長と、あんまり変わらない気もするけどねぇ……」
「ギクッ……」
呆れてため息をついたが最後に固まる叶恵、そんな叶恵を横目で見ながら口を手で被う柚月。
「菫が可哀想だなぁ……また幽体離脱者が出てしまう……」
「えっ!!幽体離脱した人いるの!?どこどこぉ?」
周囲に首を左右に動かして、目を輝かせて興味津々に観察する咲、そんな彼女がさっきまで幽体離脱者であったことを言えず、呆れて冷たい視線を送る梓。
「みんな!」
そして、選手たちの顔を向けさせる、きりっとした一言ながらも柔らかな笑顔を見せる夏蓮。
「確かに、インターハイへの道は、とても険しくて、そう簡単に進めるものじゃない。でも、みんなで手と手を取り合って歩いていけば、きっと行けると思うの。だから、これからもいっしょに頑張ろう!」
キャプテンらしからぬ可愛らしい笑顔で締めくくった夏蓮だったが、選手のみんなはそれを微笑みで返している。
誰もが求め、誰もが夢見る、それがインターハイ。全ての学校の選手たちがいくら努力しても、同じ汗の量をかいても、県内ではたった一校しか出場できないルールは変わらない。映像でもあったように、泣き崩れる敗者の目の前で、勝者こそが喜びに浸ることができるという、そんな残酷極まりない大会は、残念ながら毎年行われている。しかし、インターハイを目指す選手たちだって消えることはない。たった一校という狭き門を通ろうと努力し、ひた向きに頑張るその姿は、無情にも美しく見えてしまうものだ。それは勿論、これからの笹浦二高だってそうである。彼女たちにとっては高過ぎる目標のインターハイ出場であるが、選手たちは決して臆せずに目を開き、明るい未来への僅かな希望を信じているようだった。
「「「「オオーー!!」」」」
「それじゃあ、最後に明日の合宿の予定表をあげるから、みんな前に取りに来てねぇ」
教卓の上で束になった用紙をトントンと叩いて揃えた柚月が言うと、着席していた選手たちは一斉に立ち上がり教卓上に置かれたプリントを一枚ずつ持ち去る。そのプリントには、明日からの三日間の合宿における内容が、時間と共に記されていた。
部員たちが席に着いたのを確認し、初回のような明るさを取り戻した柚月は顔を上げて一人一人と目を会わせる。
「そらじゃあ今から、明日からの予定を簡単に説明していくね……」
ヤル気に満ち溢れた様子の選手たちが、満面な笑みを浮かべる柚月から貰ったプリントに目を通し始める。
「えっ……」
しかし、多くの者たちはその内容を見た瞬間凍りついたように、驚いて固まってしまう。なぜならそのプリントには、とんでもない過密スケジュールが記載されていたからだった。そしてこのとき、マネージャーを除いた選手たちは、予定を考えた張本人の柚月に、皆同じ想いを抱いていたのである。
『『『『ここに一人、鬼がいる……』』』』
皆様、こんにちは。
最近は寒さの影響か、世間では風邪が流行っているようです。私の職場でもこの一月で六人ほど体調を崩しておりました。また、某所では早くもインフルエンザが流行し出しているみたいですので、皆様もお身体にお気をつけください。
さて、今回もありがとうございました。新たに出てきた仙総学院。県に一つは必ずめちゃめちゃ強い学校ってありますよね。しかも何故か下の学年をよく使うことが多いみたいなんです。私もそれなりに強かった野球部に在籍していたことがありましたが、監督曰く、二年生と三年生で同じ能力だったら迷いなく二年生を遣う、と言っていました。それは引退をかけた最後の大会も貫いていましたが、勝利のためにはここまでしなくてはいけないのだなと感じながらスコアラーをやっておりました。
次回はまだ合宿始まりません……ごめんなさい。ただ、新たなキャラクターを出そうとは思っていますので、また来週もよろしくお願いいたします。
最後に、もしも私のキャラクターたちの絵を描いてくださる方がいらっしゃれば、どうか御協力させて
ください。メッセージお待ちしております。




