第七話
時間が止まったかのように見えた。
風になびく草。瞬く星。流れる雲。
そして、『ドサッ』、という音と共に倒れる白峰。
「白峰!!」
一瞬の後、我を取り戻した俺は、倒れた白峰を抱き起こした。
「おい!しっかりしろ!」
駄目だ、完全に気ぃ失ってやがる!
『ズキンッ』
「ぐっ!?」
突如、俺の頭に激痛が走る。
視界が霞んできた。
そして聞こえてくるのは、あの声。
「おいでなさい…。」
「あんたは…っ!白…」
だが俺のその言葉は、数人の男達の足音や話し声によってかき消される。
「反応が強すぎたらしい…。」
「この子が対象者か?」
「そうだ、専…いや、例のところに運べ。」
白峰をどこかに連れていこうしてやがる。
「あんたら、白峰をどこに…!?」
問い質そうとする俺の腹に、男の一人が拳をつき入れた。
「っ…!」
意識が、遠のいていく…。
自宅のベッドの上で、俺は目を覚ました。
心配そうな母さんの顔が目に入る。
「っ…!」
まだ殴られた腹が痛む…、!白峰は!?
「母さっ…!」
「大丈夫流?あなた、昨日の夜家の前で倒れてたのよ。」
もう一日経ってるってのか!
「母さん!白峰は!?」
「楓ちゃん?さあ…。何かあったの?」
何も…知らない!?じゃああいつは…。
「ぐっ…!」
「駄目よ、まだ起きたら!相当強くお腹を打ったみたいよ。」
「平気だよ…それより出掛けてくる…。」
俺は母さんを振りきって家を出ると、白峰の家に向かう。
あいつの家に着くと、すぐにインターホンを鳴らす。
「ピンポーン」「ピンポーン」「ピンポーン」
出ねぇ!くそ、どうなって…。
「あ…流君…?」
「白峰の母さん!」
白峰の母さん…紅葉が、どこからか帰ってきた。
俺はすぐに聞いてみる。
「すみません、白峰は…。」
「流君…楓はね……。」