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第5話

少々、グロっちょい箇所があります。

 「これは…。」


 鉄の甲冑に身を包んだ騎士が目の前の光景を見て呟く。

 ムンムンと鼻を突く、血やら汗やらの混じった臭いに、視線を外したくなる程の酷い光景。

 腕が片方、吹き飛ばされたモノに首がないモノ。上半身と下半身が大変なことになっていたり、身体が見事に左右に分かれていたりして普段は絶対見ることができない身体の中身を大気にさらしていたりなど、そこら中に真っ赤なお花が、森に囲まれた街道に咲き乱れている。


 「ずいぶんとまぁ派手にやったな〜。」


 吐き気を覚えた騎士の横に同じ甲冑を身に付けた男が歩み寄る。…いや、頭部分に角らしきものが付いてるところからワンランク偉いのだろう。


 「た、隊長。」


 歩み寄って来た男に敬礼をする騎士。ほら見ろwwwやっぱり偉い人だった。


 「あ〜、そう言う堅っ苦しいのはいいから、俺とお前の仲だろ?」

 「ま、まぁ確かにそうですけど…やはり、今は仕事中なのでけじめは付けておかなければいけないと思いますので…。」


 敬礼を解きながらそう言うと


 「お前は本当に真面目だな。兄とは正反対だよ、全く。」


 と、隊長と呼ばれた男が言う。

 騎士は「ははは」と苦笑い。


 「まぁ、そんな事よりも…ずいぶんと好戦的なお嬢ちゃんらしいな、マリリルード様を助けたという黒髪の女の子とやらは。…こいつは人を殺し慣れているな。…斬り痕に迷いを感じない。」


 目の前のお花畑に目をやり、体を落とし死体をよく観察する隊長さんはそう口にする。…すると、


 「隊長!」

 「ん?どうした、そんなに慌てて。」


 ハァハァ…と息をあげて一人の騎士が前方より、死体を避けながら走ってきた。


 「ハァハァ…っ、隊長、大変です!もしかしたらこの近くに魔獣がいるかも知れません!」

 「なに!?」


 騎士の報告に驚いていると、


 オォ…ォォォオ…


 森の奥からそんな声が聞こえた。


 「…他の者は?」

 「ハッ!他の者達は先に向かっており、自分は隊長達にこの事を伝えに来ました。」


 ビシッと敬礼を決める騎士に「良い判断だ。」と、告げると


 「行くぞ!」


 隊長の言葉を聞いた二人は「ハッ!」と敬礼し、隊長に続くように森の中へと入っていった。



◇∞━***━***━***━***━***━***━***━∞◇



 「あ〜ぁ、なんでこうもあっさりと嫌な予感は的中するかな〜。」


 木の根っこ部分に背中を預けて愚痴る咲闇。周りを見渡すと木々が生えている。要するに咲闇は森の中なう!状態なのだ。なぜ、街道から外れてまた、森の中にいるかというと…。


 グオンッ


 大気が唸る音が聞こえる。咲闇はすぐさまその場から跳躍する…と同時に、バキッ!と先程まで咲闇が背中を預けていた木が黒い何かに折り飛ばされる。


 グオォォォオォォォォォォオ!!


 とん…と着地し、ロングソードを構える咲闇を威嚇するかのように、その咆哮を森中に響き渡らせ、その姿を現す黒い何か。


 黒、と言うよりは焦げ茶色の鱗を生やした、キングコブラを四トン車並の大きさにしたようなモノだ。さらに、下顎からは上に向かって鋭く生えた牙に、ねじり曲がった二本の角が特徴的なバケモノ、コイツを相手にしていたからだ。


 真っ白い目。瞳孔が無いその瞳が咲闇を睨み付ける。


 グオォォォオォォォォォォオ!


 もう一度喉を震わせ、その巨体からは想像が出来ない程の大ジャンプを決めると重力に従いそのまま口を開き、咲闇目掛けて噛み付こうとした。


 「こっちにくんなぁー!」


 やや女寄りの中性的な声を発して、咲闇は刃状の闘気を纏わせたロングソードで向かえ斬る。

 ズプズプズプ…とロングソードがバケモノの細胞を切り裂き、二枚におろす。


 ドスンと二枚におろされたバケモノが地面に落ち、ピクピク…と痙攣し出す。

 一見、殺したかのように見えるが咲闇はさらに追撃する。


 ザンッ!


 下顎から水平に体の半分が斬られたバケモノの首あたりに、地面を抉りながらロングソードを振るい、斬り飛ばす。


 (あの女の子、大丈夫かな。)


 咲闇は既に動かなくなったバケモノから数メートル離れて、先程バケモノが来た道に目を向け、一時間前に別れた金髪碧眼の少女を頭に浮かべる。なんだかんだでバケモノと出会ってから早一時間ぐらい経過しているようだ。

 …ん?盗賊はどうしたかって?そんなの開始二分ぐらいで昇天させちゃったのよね…。まぁ、50人ぐらいしかいなかったし、それにそこまで強くなかったからね。

 しょうがない。と勝手にうんうんと頷き納得している咲闇。

 何がしょうがないのかようわからん。


 グチュグチュ…グチュ…。


 背後からなんとも耳に悪い、湿っぽい音が咲闇の耳に入る。

 はぁ…と一つ溜め息を吐き、振り返る。

 振り向いた先には、先程咲闇によっておろされたバケモノの死体から青黒い血肉がまるで泡のように膨れ、そのまま斬り裂かれた頭部や半身に伸びていく。もちろん、頭部や半身の斬り口からも同じように青黒い血肉が伸びる。

 はっきり言ってグロい。


 うわぁ…と言いたげな顔つきでもう何回目になるか分からないその光景を目にする咲闇。


 グオォォォオォォォォォォオ!


 無事、原型を取り戻したバケモノは復活の雄叫び。

 この高い再生能力のせいで咲闇は一時間も相手をする羽目になったのだ。


 「あ〜んもぅ!しつこいし、うるさい!」


 咲闇は素早く、自分の腰とそこに巻かれたブレザーとの間に差し込まれている短剣(盗賊から盗ったやつ)を手に取り、闘気を纏わせるとすぐに投擲。

 ビュンっと風を切って一直線にバケモノの喉に向かって…ドォン!……ごめんなさい、嘘です。本当はぐじゅじゅじゅ…でした。ドォン!なんて音は全くもってしませんでした…すみません。


 よし、気を取り直して……と、そんなグロい音を立ててバケモノの喉を円状に抉り抜ける。…言う必要はないと思うが、抜けた後はもちろん、その先にあった木々を貫通していきました。


 残りの短剣は三つ。本当は七つあったのだが、三本は今のをあわせて投擲。もう一本は折れてしまった。…やはり、闘気を纏わせないままでは使い物にならない。


 コフュー、コフューと喉から空気が漏れていく。…だが、次の瞬間には、グチュグチュと再生。


 「ん〜、どうしたものか…。」


 正直、打つ手なしと言いたげな咲闇。

 そこでふと、バケモノの再生する光景が脳裏に浮かぶ。

 千切れた部分から青黒い血肉が現れ、本体と一つになる所だ。


 (もしかしたら…。)


 咲闇の中で一つ、バケモノを倒す方法が思い浮かぶ。


 「…よし、やるか。」


 咲闇はそう言うと、一瞬でバケモノとの間合いを詰め、再生したばっかりの喉目掛けて横に一閃。

 斬り飛ばされ、宙を舞うバケモノの頭部。それを追いかけるように咲闇は跳躍する。


 「そらぁ!」


 咲闇は跳躍すると自分の身の程もあるのではないかと思われるバケモノの頭部を思いっきり空の彼方へと蹴り飛ばす。


 ドスンッ!


 …とても人間が蹴って出す音ではない音が響く。


 「ふいぃ〜。」


 ストンと着地し、額の(かいてないが)を拭う。

 ビクンビクンと身体を振るわせながら、斬られた箇所から血肉を、頭部が吹っ飛んでいった方向に伸ばすが数メートルでパタリと動かなくなるバケモノ。

 つんつんと木の枝でつつく。

 うんともすんとも言わない。…どうやら息絶えたらしい。


 「やっと終わった〜。いや〜だるかった〜。」


 咲闇はそう言うとその場で座り込む。

 疲れてはいないらしい。息一つあげていないところからただ単にだるいみたいだ。


 「ふぅ…思った通りで良かった〜。」


 纏わせていた闘気を解除し、そう口を開く。

 多分、気づいている人はいると思うが、咲闇が思い浮かんだ方法とは…とても単純なものだ。

 バケモノが再生する時の事を思い出して欲しい。バケモノは再生する瞬間、必ず斬り落とされた傷口と元々繋がっていた傷口を血肉であわせることによって再生していたのだ。ようするに咲闇は「一部を斬り落とし、その一部を血肉が届かない範囲に飛ばせば良いのでは?」…と。

 もちろん、結果はこの通り大成功。


 「…それにしても、鈍ったな〜。」


 ぎゅぅ…ぎゅぅ…と手のひらを開いたり閉じたりして確かめる。


 (…平和ボケしすぎたのかな。…いや、それだけ平和な時間を送れていたって事か。)


 そんな事を思いつつも「まぁ、終わったしいいか。」と思い、完全に気を抜いていた咲闇。

 そんな咲闇に一瞬の地鳴りが襲う。それでやっと自分に近づいた気配に気付く。


 「しまっ────。」


 グオォォォオォォォォォォオ!


 と、咲闇の下からアレと同じバケモノが現れ、バケモノが現れた事により、宙に投げ出された咲闇の足に噛みつこうとした。

 咲闇は足を引っ込めてそれを回避。咲闇は素早く闘気を纏うと、ガキン!と閉じられたバケモノの前歯の上に着地…と同時に跳躍。

 跳躍時に生じた力でバケモノの前歯を折る。


 「なんでまた出てくるんだよ。」


 ガサガサと木々の中に入り、程よい枝に着地し、泣きそうになる咲闇。


 グオォォォオォォォォォォオ!


 そんな咲闇の真下の地面から本日三体目のバケモノがその姿を現し、咲闇目掛けて体当たり。


 「え?ちょ、タイム!」


 完全なる不意打ちに辛うじて反応出来たが、体当たりを受けた衝撃で吹き飛ばされる咲闇。


 「いつつ…。」


 転げ倒れた咲闇はゆっくりと顔をあげる。

 その視線の先には、焦げ茶色の鱗に瞳孔がない、白い眼のバケモノが二体。


 サーッと血の気が引いていく咲闇。恐怖からではない、一体でも相手にするのがだるかったのに、それを同時に相手にした後の事を考えて引いていったのだ。

 ロングソードはない…いや、あったが手の届かない位置にある。

 そんな咲闇に対してお構いなしに飛び込んでくるバケモノ×2。


 やばいと思った咲闇はすぐに逃げようとしたときだ…。


 ズドンッ!


 一瞬、紫色の光が走ったかと思うと次の瞬間には轟音が鳴り響き、二体のバケモノは灰と化した。


 「おい、大丈夫か?」


 何が起こったのか分からない咲闇の背後に一人の男が降り立った。



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