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第2話~覚悟と~

ふぃ~、書くのってやっぱり疲れますな。

 「…。」


 眉間にしわを寄せ、目の前に広がるトマトジュースみたいな真っ赤な液体と、そこに転がっている「者」だった物を見つめる、咲闇。

 地に伏せているのは銀色の甲冑を身に付けた騎士らしきモノ達。

 鼻や嘔吐を刺激する、鉄っぽさの臭いが混じった生臭さ。


 むんむんと大気に充満した臭いは、嗅ぎなれていない者はもちろん、例え嗅ぎなれていたとしてももしかしたら口からナイアガラの滝を垂れ流してしまうだろう。

 

 せっかく、森を抜けて街道?らしき道に出たと思ったらこれだよ。


 ガキン!


 不意に咲闇の耳元に鉄と鉄が接触する音が届く。


 「…テンプレ的展開きたか?」


 咲闇はちょっとうきうきした気分で音のした方に走り出した。




 「ガハァ…。」


 最後の一人らしき騎士の喉に剣を突き刺す。その長剣はかなりの業物なのだろう、そのまま鎧ごと下に叩っ斬る。


 「お前ら!」


 騎士を斬り捨てた、軽く2mはあると思われる大男が声をあげる。すると、数人の男達が目の先で進行している馬車の前に手慣れた様子で回り込み、馬車を引いている白馬の首めがけて剣を振り下ろす。

 少し前進した後、その場で力無く倒れる。


 「よし…トボトル、お前馬車の中を見てこい。俺じゃああの中に入れそうにねぇからな。」


 停止した馬車を見た大男は隣にいた、この七人の中では小柄な男、トボトルに言い放つ。


 「ハハハ、デカすぎるのも困りもんすね、お頭。」


 「まったくだ!」


 トボトルと、お頭と呼ばれた大男の会話に「「「ガハハハ!」」」と、他の五人も混じり笑う。


 ゴキッ!!


 そんな音と共に一人の笑い声が消える。


 「あぁ?」


 笑い声が減ったことに気付いたお頭は顔を向け、周りの盗賊達もつられて向ける。ちなみにトボトルは既に馬車の中だ。

 盗賊達はその光景を見て絶句した。


 「ラガス!!」


 数秒後、お頭の近くにいた一人が声をあげる。

 ラガスと呼ばれた男は白目をむき、目と鼻からは血。さらに口からは泡を吹いていた。

 そこまでなら盗賊達は絶句などせず、すぐに駆け寄るだろう。しかし何故、駆け寄らずに絶句したのか。

 ラガスの身長はお頭の次に高い約190cm。

 そんな奴を引きずるようにえりを掴んで立っているのが、身長が160cmあるかどうか位の黒髪の少女だったからだ。





 ふむ、こいつはラガスって言うのか…。


 チラッと掴んでいるモノを見る、咲闇。


 「テメェ!ラガスに何しやがった!!」


 先程、ラガスと叫んだ奴が声をあげる。

 あんなに必死になるって事は親友やそこらだったのだろう。


 「何って…ちっとばかし顔を弄っただけだよ?まぁ、案外丈夫そうに見えて呆気なくポキッて逝っちゃったけどね。」


 …あれ、おかしくね?ポキッじゃなくてゴキッ!!だったような…ま、いっか。


 軽い口調で答える咲闇。


 「ふざけんじゃねぇぞ!テメェ、覚悟出来てんだろうな!!」


 軽い口調で言われたのが相当頭に来たのだろう。男はお頭の静止の言葉を掛けられるが、そんなものでは止まらず剣に力を込め、咲闇に走って近付くと剣を振り上げそのまま重力に従って斜めに振り下ろす。

 咲闇はなんの躊躇もなく、左手で掴んでるモノを自分の前に出す。


 ブシャァァァァァァァァァァ…


 右肩から左胸に斬撃。そこからおびしい量の真っ赤な液体が宙を舞い、斬りつけた男に容赦なく降り注ぐ。


 「ヒィッ!」


 恐怖で染まった声音が聞こえる。

 それもそうだろう。例え、もう既に「物」となったとしても、それは自分の親友。そんな大切な親友を斬り付けてしまったのだから。


 「…俺は既に、十年前に覚悟は決めている。それは奪った者、奪う者として決して避けては通れない道だから。

 …もちろん、貴様も出来ているんだろうな?自分の命が奪われる覚悟を!!」


 そう、言い切ると咲闇は自分の盾として使ったラガスの腰に付いてる鞘から剣を引き抜き、そのまま右から左に一閃。


 ゴト…ゴトゴトゴト。


 最初の音は斬りつけてきた男の首が落ちた音。その後の音は、ラガスの胸から下にあたる半身と両腕が落ちた音。


 そのあと、首から壮大に真っ赤な花びらを散らしながら崩れ落ちる、男だった物。

 その花びらは咲闇にも降り注ぐが、咲闇にかかる数cmのとこで弾かれる。

 まるで、咲闇の周りを覆うように膜みたいなのが張られているような感じだ。



 どうする…。


 つーっと冷や汗が頬を伝う。

 盗賊のお頭は動けないでいた。


 「俺は殺される覚悟はあるが、易々と殺される気は毛頭ない。」そんな訴えがひしひしと咲闇から感じていた。このお頭も伊達に盗賊をやってきている訳ではない。それなりに修羅場をくぐってきているわけだ。咲闇が自分よりも強いと言うのはわかる。


 咲闇が胸から上だけになったラガスを投げ捨てる。


 「…失せろ。」


 不意に咲闇からそんな言葉が飛び出す。

 あまりにもいきなりすぎる言葉に呆気にとられる。


 「…聞こえなかったの?」


 ゴウッ!


 まるで突風のような殺気。

 お頭の顔から血が引いていく。あまりの恐怖に長剣を落としてしまった。


 「お、お前ら、行くぞ!」


 長剣なんぞを拾う時間が惜しいとばかりにお頭が声を出すと、残りの三人の盗賊達が真っ青な顔で頷き、その場からいそいそとその姿を森の中に消していった。……トボトルを置いて。


 「ふぅ…。」


 咲闇は一つ、息を吐く。


 久し振りの感触。

 脳内に、血と腐臭、それに殺伐とした、元々は街並みが広がっていたのだろうと思われる廃墟が浮かび上がる。


 …いや、やめよう。


 ぶんぶんと頭を振ってこの光景を脳内から追い出す咲闇。


 「いやぁ!放して!」


 そんな事をしていると馬車の中から女の子の大声が聞こえた。

 咲闇はすぐさま馬車に近づき、そ〜っと中を覗く。

 最初に目に入ったのは、穴という穴から血が流れ出ている、生首。その横に倒れているのは、人間の体の部位で一番重いとされる部分が無い、身体ぬけがら


 顔をしかめる咲闇。…そう、しかめただけ。よくリバースしなかったね。

 そんな咲闇の耳元に「いや、いや!」と先程の女の子の声が入る。

 咲闇はすぐに馬車の中に乗り込んだ。




 パァン!


 馬車の中でそんな音が響く。


 「あんまり手間取らせんじゃねぇよ。外でお頭達が待ってんだからよ。」


 トボトルは馬乗りで抑え込んだ、金髪碧眼の少女の頬をぶち、黙らせようとした。


 それでも少女が暴れるものだから遂に頭に来たトボトルは


 「テメェ、いい加減にしねぇと犯すぞ!」


 そう言いはなち、少女のドレスの胸部分を掴むと、迷いもなく引き裂く。


 「いや…やめて、ください…。」


 目から涙を流しながら少女は言った。

 その姿に、支配欲が刺激されたトボトルは、その手を休めることなく少女のドレスを裂いて──いこうとした時だ。

 急に髪の毛が掴まれる。

 次の瞬間には、ブチブチと髪の毛が抜ける音と、後方に投げられる浮遊感を覚えた。


 「…え?」


 ここまで2秒とかからない一瞬の出来事に、何が起こったのかわからないと言いたげな顔付きになる。


 な、何が起こっt────。


 トボトルの思考はそこで停止した。


 何故なら、トボトルの眉間には先程まで咲闇が握っていた剣がブチ刺さっていたからだ。




 「お〜い、大丈夫か?」


 投擲した剣がトボトルに刺さった事を確認後、胸部分が破かれたドレスを着た金髪碧眼の少女に声を掛ける。


 「い、いや!来ないで!」


 少女は馬車の壁際まで後ずさりする。


 恐怖に染まりきった瞳と声。


 無理もない。少女の見た目からだいたい、13、4歳ぐらいだろう。そんな子が、目の前で人殺しを目の当たりにし、大の大人の男に犯されかけたのだ。少なくとも、心に大きな傷がついたのは言うまでもないだろう。


 もう少し早く助けていれば…。


 と、亀よりものろまな自分に嫌気がさした。

 が、過ぎたことを嘆いても、今という時間を変える事は出来ない。なら、今出来ることをやるしかない。


 「大丈夫、大丈夫だから。」


 先程の殺気の籠もった声音とは真逆の、優しい声で少女に話し掛ける。


 今、咲闇が出来る事。それは少女を助けること。恐怖という、不安で染まりきった心。それを取り除くにはどうしたらいい?…恐怖という、「不安」で怯えているのなら、それを上回る、「安心」を与えればいい。例え、取り除く事が出来なくとも、和らげることぐらいは出来るだろう。


 かたかたと、震えている少女に座り、咲闇は優しく、抱き寄せる。


 「いや、放して!」と、暴れる少女の耳元で「大丈夫、大丈夫だから。」と、少女の頭を撫でる。

 しばらくすると、少女はどんどんとその動きをとめ、


 「…ぁさん、おかぁさぁぁん!」


 と、大粒の涙を流しながら咲闇の胸で泣きじゃくる。

 咲闇は包み込むように、少女を優しくだき包む。


 その姿はまるで、泣きじゃくる我が子をあやす母親そのものだ───。




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