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第9話

PV10,000突破!読んでくださった皆様、ありがとうございます!

 「お母さん、か…。」


 ぽつりと呟かれた言葉が、窓から差し込まれる月明かりに照らされた部屋に響く。まるで学校の教室のように広い部屋。その壁側には三面鏡、衣類を収納するための鏡付きクローゼットがその横に。その反対側には「toilet」、「shower」と書かれた扉が二つ見受けられる。さらに、窓側には天蓋付きベッドと、部屋の中央にU字型のソファーとガラス張りの長方形のテーブル。そこにとどめとばかりにキッチンと食器が完備されている。


 「お母さんといるときってああゆう感じ…なのかな…。」


 普通なら聞こえてきそうにない声量。それだけ静かな夜であると言うことだろう。

 その声の主は、ふかふかの天蓋付きベッドから星々を、足を崩し座りながら見上げていた。

 淡い金髪、それと碧い双眸。発展途中特有のぷっくりとした0281が健気に寝間着を押し上げようとしている…押し上げようとしている。

 いかんせん作者はロリコンなもので…お許しを。


 「お名前、聞いておけばよかったな…。」


 初めて、しかし懐かしくも感じる温もりを感じさせてくれた、この世界では珍しい黒髪黒目をした少女・・の姿を目に浮かべる。

 そして、はぁ…。と溜め息をつく、チェロヴェーク王国の第二王女、マリリルード・ルリ・チェロヴェークであった…。



*◆*…*◆*…*◆*…*◆*…*◆*…*◆*…*◆*…*◆*



 「ふむ、アンスロポスにか…。そうと分かれば明日、遅くとも明後日には出発だな。」


 同時刻。

 この国での情報収集を果たして帰ってきたライド。彼はベッドに腰を下ろして、今回得た情報で今後の予定をたてている最中だ。


 「黒色の長髪と瞳をした少女、か…。」


 得た情報の中にそのようなものがあった。内容を言うと、この国の第二王女であるマリリルード・ルリ・チェロヴェークが昨日、馬車に乗っていたら盗賊に襲われ、同行していた騎士数名とメイドさんが皆殺しにされた。自分ももうダメだと思った時、その少女が現れて助けてくれた。そしてチェロヴェークに向けて歩き出して約2時間後に、また同じ盗賊が現れた。その少女はマリリルードを逃がすために一人で、軽く50人はいる盗賊に立ち向かった。そのおかげでマリリルードは逃げ切る事が出来た。お礼がしたいから探してくれ。…て感じのものだ。


 (なる程、だからあんな所に馬車と死体が転がっていたのか。…それよりも気になるのが何故ワームがあの森にいたのか、しかも三匹も…。)


 ずっと疑問に思っていたこと、それはワームの存在。普通ならこの国付近の森に出てくるような魔獣ではないのだ。基本的にワームは沼地のようなじめじめした環境を好み、木々が生えた森などにはあまり姿を現さないのだ。それに、ワームは単体でいることが多く、昨日みたいに三匹も現れるのは余程の事がない限りあり得ないのだ。


 「…あるとしたら、誰かが意図的にやったとしか思えない。」


 では何故、第二王女を?


 「…まぁ、そんな事はまたあとでもいいか。」


 ふぅとベッドに横たわったと同時に睡魔が襲ってきた。



◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆*─*◆◇*─*◇◆



 更に同時刻、アンスロポス王国にて。



 「──シッ。」


 グオンッと、白い刀身の剣を握り締めて、月と星が光る夜の中で素振りを行う少女がいた。

 タンクトップにスパッツと動きやすい恰好をした白い髪を肩辺りまで伸ばした、咲闇の妹である心道 光咲だ。


 「ッ。」


 ゴウッ!と刀身から、白色の炎が現れる。白炎を纏った刀身を地面に突き刺す。それと同時に光咲を囲うように八つの白炎の円柱が地中から現れ、光咲の頭上で一つに集まり、白く燃え上がる球体を作り上げる…が、その球体はすぐに白さを失い、崩れ散る。


 「ハァ…ハァ…。」


 手を突き刺した剣の柄頭に乗せたままぐったりと膝から崩れる光咲。

 魔気を一気に使ったおかげか、先程までの荒々しさが少しだけ抜けたような気がした。相当ストレスが溜まっていたとみえる。

 それもそうだろう。この世界に召喚されてはや三日が経とうとしている。いきなり見ず知らずの世界に勇者として召喚され、「魔王を倒してこの世界を救ってくれ。」と言われたのだから。

 光咲ははっきり言って、天才だ。成績優秀、スポーツ万能、誰にも勝る正義感。そして、かなりの強運の持ち主。誰もが認め、羨ましがるだろうと思われる容姿。まさしく、神様が直接手を加えたのでは?と思えてしまう人間だ。

 しかし、そんな完璧超人である彼女も人間である。しかも、感情が不安定になりやすい時期である、思春期真っ盛りの中学三年生だ。不安もいっぱいあるだろうに。


 「うっ…。」


 いきなり呻き声を出したかと思うと、汗で重たくなったタンクトップから一枚の下着を取り出した。残念ながら、ブラではない。ボクサーショーツと呼ばれる男性用の下着である。

 何故かは知らないが汗で濡れてないボクサーショーツに顔をうずめて深呼吸。


 「すぅぅぅぅぅぅぅぅっはー。…危なかった、危うく禁断症状が表れるところだった。」


 そう言い、もう一度…いや、もう五、六回深呼吸を行う光咲。

 ちなみにこの下着は兄である咲闇が、三日前、要するにこっちに来る前の前夜に脱いだものである。


 「あぁ…お兄ちゃん。」


 頬を赤らめて咲闇を呼ぶ光咲。変態である。


 「…ふぅ、補給完了。」


 光咲は丁寧に下着をたたむと、タンクトップに忍び込ませる。


 「…夜空って、こんなに綺麗だったんだ。」


 ふと、見上げた光咲の目には数多の星々が輝いていた。


 「でも、夜はやっぱり嫌いだな。」


 光咲はすぐに夜空から視線を外し、地面に突き刺さった剣を抜いてその場を後にした。

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