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赤の色彩  作者: ロースト
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賑やかな街

「また、君か。……私にあれ以上、何を語らせろというのか。反面教師を経験則から教えてあげるくらいしかできないよ」

 つい、と興味を引かれて顔を上げた。

 そこにいたのは、やはり簡素な女。ケイスケはけれど、じわりと心の内に何かが湧くのを覚えた。それは決して即物的な感情ではない。女としての魅力を感じさせるには縁遠いその姿に、何かしらを抱くはずがない。

「……私はね、無口だし人前にでることは嫌いなんだよ。赤面症だしね。それが今じゃ教師になってる。それも頭が悪いのは変わらないままさ」

 以前と同じままだった。そのことに安堵を覚えたのかもしれない。それは普段ケイスケが女を見慣れているからこそ抱いた感想だった。

 煌びやかな世界、色とりどりの鮮やかな景色。そこに女達はいて、自らを着飾る。見慣れた、遠い世界。

「必死で教免取ったわけでなく大学の単位取る時に自動的にもらえる授業にしただけ、ここで教鞭とるのは知り合いの伝手だ。何か夢があったわけでもなく、ぼんやり流されるまま今に至るんだ」

 話す内容に意味はなかった。その女教師も特に話したいことがあったわけでもなかろう。ただ、義務感でここにいるのだ。ケイスケの心は軽くなると同時に、不安にも思った。

 平凡で、色褪せた世界の住人のケイスケはいつのまにか煌びやかな世界に連れ去られていた。そのまま、煌びやかな世界に馴染んでしまうのかとも思った。だが、ケイスケは何処まで行っても色褪せた住人だ。鮮やかな世界はただ、苦しかった。

 女との邂逅が色褪せた世界への再びの接近だとするならば、ケイスケは女との関係を保ちたいと思う。相手の義務で保っているだけの現状で、何を考えているのやら。

「思いもかけなかったよ、子供の頃には。今だって働いて金稼いで生活してるけど仕事は何ですかって職質掛かったら私はなんて言えばいいのか。ついつい学生ですとでも答えかねない不安定感がある」

 女は一人、零す。それは話している、という形をとっていてもケイスケを相手にしたわけではないので、零すという風にしか取れなかった。女にとって、ケイスケは取るに足らない存在だ。それなのに、何かしらを話し始めたのは単なる暇つぶしか、時間稼ぎでしかない。

 当の昔に分かりきった答えはありきたりな話でおわらない女によってあっさりと関心を寄せられる。


「だってそうだろ?大学四年まではまだ夢見てたんだ。アーティストになりたいってね。具体的にはプライベートに関わるから挙げないけど。――ほら、これ以上ツマンナイ昔話を聞かされたくなかったらもう来んなよ」

 途中で終わった話。

 ケイスケはそれが、気になった。


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