表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

大好きだったから

作者: yuris

俺には自慢の彼女がいる。

そして、その彼女が今学校の屋上から飛び降りようとしてるのは何故だろう。

「バカ……っ! 早く降りてこい!!」

「ふふ、才兎(さいと)でもそんな顔するんだね。いつもクールだからなあ」

なんであんなに楽しそうに笑っているんだろう、あいつは。あと数歩後ろに下がったら死ぬんだぞ?

そんな俺の思惑など知る由もないあいつは、相変わらずフェンスの向こう側でにこにこしてやがる。普段なら手に取るように分かるあいつの気持ちが、今はちっとも理解できなかった。

昨日まで、何事もなく一緒に帰っていたじゃないか。あいつは一体何をしたいんだ。

「ねえ才兎、私才兎のこと大好きだったよ。でも才兎ってモテるから彼女って目付けられちゃうんだ」

「は? お前、何を……」

「私も才兎のこと好きだから耐えてたんだけどね、もう限界かなって」

効果音をつけるなら“にっこり”がぴったりであろう笑顔を浮かべるあいつは、今から自殺するような人間には見えない。まるで俺を遊んでるみたいだがそうじゃないことは確かだ。普段のあいつは割と大人しい方で、そもそも笑顔なんか滅多に拝めない。

こいつ、壊れやがったんだ。

こいつはそんなに精神面が強いわけじゃない。ごく普通の女子生徒だ。

それなのに必死に我慢して我慢して我慢して――

俺が知らない間に、こいつはどれだけ泣いたんだろう。どれだけ耐えたんだろう。

誰も、俺さえも知らない中、独りで。

「才兎とすっぱり別れるか死ぬか選べって言われたから、死ぬって言っちゃった」

「バカ! そんなん無視すりゃいいだろうが!」

「でもね才兎、才兎のこと嫌いになるか好きなまま死ぬかって考えたら、死んだ方がマシじゃない?」

言葉が詰まる。俺はあいつと同じ選択を迫られた時、きっぱりあいつを捨てられるだろうか。

答えは、きっと否だ。

お互いがお互いに依存していたから、片方がいなくなるなんて考えられない。

でもな、それはお前だけじゃないんだよ。

「じゃあね才兎。大好きだったよ」

「っ、おい……!!」

今更手を伸ばしたって間に合わない。そんなことは百も承知だ。

それでも、手を伸ばしたら。あいつは掴んでくれる気がしたんだ。

そ ん な の 気 の せ い で し か な い と い う の に

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ