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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 異世界召喚編

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149話 ナイトの手記

「ここが深域にある、かのナイト・ブルームスタットの研究所……」


 レルゲンの護衛によってディシアはナイトの研究所跡の調べを進めている。

 しばらく探索を進めている内に、ディシアの調べていた手が止まる。


「何かあったのか?」


 レルゲンがディシアの下へやってくると、ディシアが見つけたメモの走り書きのような物を手にしている。


「はい。恐らくは研究をしている時に書いた手記のような物だと思います。ヨルダルクでよく使われていた暗号のパターンを少し自分なりに変更しているようですが、時間をかければ全て解読ができるかと」


 レルゲンがどうやって書いてあるのか確認するが、全くと言っていいほど理解できる文字ではなかった。


「確かに俺や中央の研究者にはただの落書きにしか見えないかもな。回収していなかった理由もわかる」


「ええ、研究者には自分の研究資料を守ることも必要ですから、ヨルダルクに詳しい人物がここを訪れることは考えていなかったのでしょう」


「ざっくりでいい。今すぐに読める内容はあるか?」


「少しお待ちください」


 ディシアが紙に単語を書き留めながら、解読を進めると「――そんなことが、可能なのですね」と小さく呟く。


 レルゲンに手記の概要を説明するディシアの表情は、どこか晴れやかだ。


「簡単に言うと、研究所の場所に深域を選んだ理由と、転移魔法陣で繋ぐ距離の概算方法について書いてあります」


 レルゲンたちが知りたがっていた内容と合致した手記が運良く見つかり、二人で手を合わせる。勢いでディシアもレルゲンのハイタッチに応えてしまったが、サッと合わせていた手を離して更に続ける。


「まず深域を選んだ理由は簡単です。他の実力者が来たとしても深域のど真ん中に位置するここまで到達することは、天歩の加護や念動魔術による飛翔ができなければ不可能という研究内容の秘匿のためです」


「ナイトもここまでは飛んできたのか」


 ディシアが頷き、続いて転移魔法陣についての解説をする。


「どうやらナイトは転移魔法陣の概算を自己流で手にしたようです。距離の概算は特殊な計算式で行っているようで、今すぐには分からないですが、こうも書いてあります。ヨルダルクで秘匿している神託の巫女の占星術を使えば、距離の概算はもっと簡単だっただろう、と」


「なるほど、神託の巫女か。初めてディシアと会った時も神託の話をしていたよな。占いの類か?」


「簡単に言ってしまえばその通りです。しかし、ヨルダルクを長く離れていたナイトはどのように神託の巫女の存在を知ったのか……占星術という単語も最高意思決定機関の人間でもなければ知り得ないような極秘事項ですが……」


「それはまた追々調べていこう。今はまず」


「そうですね、神託の巫女の下へ参りましょう」


 ディシアが手記を回収し、レルゲンと共に中央王国へ戻る。途中ディシアはカノンから前に聞いていた水龍に一度会って話をしてみたいと考えていたが、グッと堪えて深域を後にする。


「ヨルダルクのとある田舎町にある農村に今は暮らしているはずです。すぐに向かいますか?」


「ディシアが疲れていなければ、すぐにでも行ったほうがいいだろうな」


「移動はレルゲンにお願いすることになりますから、私は構いませんよ」


「わかった。俺も行ったことのない土地だから数日はかかるだろうし、一応周りには報告だけ入れておこう。また怒られるしな」


「――はい。では準備ができ次第、すぐに向かいましょう」


 レルゲンは女王とマリー、セレスティアに神託の巫女について軽く説明すると、なるべく早く帰ってくるよう伝えられたが、快く送り出してくれた。


 レルゲンたちが国を空けている間、残された者たちは悪魔が用意した転移魔法陣を監視するための塔の建設に注力するようだった。

 資材運びのために騎士団が駆り出されて、忙しなく動いている。


「マリー、セレス。俺がいない間、国の護りを頼んだ」


「わかったわ」

「お任せください」


 二人を同時に軽く抱き寄せて、背中を軽く叩いて離れる。歩いて行くレルゲンの後ろ姿を見ながら、マリーがセレスティアに問う。


「セレス姉様。どう思う?」


「わかりませんが、ここはレルゲンを信じましょう」


「――そうね」


 再び数日分の外出支度を済ませて、レルゲンはディシアを連れてヨルダルクにいるとされる神託の巫女の下へと飛んで行く。


 数日間の飛行を経てようやくヨルダルクの農村地域に到着したのだが、ディシアは結局レルゲンとの距離を縮められずにいた。


 ――折角の機会なのに親密に話せていないのは、やはり脈なしなのでしょうか……?


「ディシア、そろそろこの辺りだと思うけど、巫女はどの辺にいるんだ?」


「もう少し先になります。進路はこのままで」


「わかった」


 ディシアが下の景色を見やすいように、レルゲンは速度を落としながら進んでいくと、農村の小高い丘のようになっている一軒の木造家屋が見えてくる。


「あそこの丘に建っている家が、巫女の住んでいる場所になります」


「本当に田舎に住んでいるんだな。降りるぞ」


 レルゲンが降りて行くと、一人の女性が降りてくるレルゲンたちを出迎えてくれる。


「お待ちしておりました」


「……? 俺たちがここにくることがなぜわかったんだ?」


「それは中に入ってからご説明します」


 すんなりと初対面のはずの二人を通す金髪のショートカットの女性は、レルゲンたちより少し年下に見える少女だった。


 この少女が神託の巫女なのだろうかと思いながらも、二人は家の中に迎え入れられた。

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