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ファルコンの瞳

作者: 白猫

大海原で唯一、世界に一つしかないナイトメア石を見つけた海賊として名を上げた男。キャプテン・ファルコンと口に出せば、口に出した者がすべて監獄行きになった時代。しかし、ある嵐を境にキャプテン・ファルコンの船、チャイルド・ファルコン号が姿を消し、ナイトメア石やキャプテン・ファルコンはいつしか、錆び付いた伝説となってしまった。




多くの海賊が集まる港、ソフェアナでは、数人の男たちが己の指名手配を見つけては歓喜をあげていた。指名手配は海賊にとって、己の強さを表すものと同じため、喜びでしかなかった。その海賊たちの指名手配の中に、一人の女の指名手配が張り出されていた。その賞金は驚くほど高く、目を見張るものがあった。

「何者だろうな。海賊団の名前は書いてない。とすると盗賊か何かだな」

図体の大きい男はあごに手を当て、周りにいる仲間に聞いてみたが、誰もその正体を知るものはなかった。すると、背後に一人の老人が現れた。

「海獣使いの魔女。そいつは立派な漁師だよ」

海賊たちは老人が話しだすのを待った。老人は辺りを見回してから、静かに言った。

「噂では、海の怪物たちの体の一部を身に着け、魚を売り、その魚を食べたものは数日後に亡くなるって話だ。今までに何席の船を沈めたのか分からないそうだ」

老人はにやりと笑うと、単なる噂だがな、と言い捨て、どこかへ消えていった。

海賊たちは一瞬固まっていたが、腹を抱えて笑い出した。

「漁師なんぞの首に、こんな大金がかけられるとは、海軍も腰抜けになったものだな」

「そろそろ船に戻るぞ。食料も積み終わった頃だろう」

背の低い男は港にたたずむ大きな船を小型望遠鏡で覗き、食料の運搬が終わった事を確かめた。

「早く行かないと船長にどやされるからな」

海賊たちは己の船へと戻っていった。



フライング・グリフォン号は、海賊界の中でも数少ないキャラック船である。今はガレオンなどを好む海賊が多く、キャラックのように速度が遅く、風に弱い船はあまり見かけられない。

「今日も良い天気でよかったですね。船長」

「そうだな。だが油断は禁物だ。海の女神は自由気ままだからな」

フライング・グリフォン号はソフェアナを後にし、次の島へと出航した。



しばらくの間、天気も風力も快調で、船員たちは甲板で昼寝をしていた。しかし、のどかな時間も短く、見張りをしていた船員が寝ている船員に大声で怒鳴った。

「前方に小船を発見。人が乗っている様子です」

船員は急いで起き上がり、見張りが指差す方向に顔を向けた。そこには一般のスループ船よりも一回り小さいスループ船が波に揺らされ、漂っていた。

「漂流者か。あんな小さい船でこの海を旅しようなんざ、海を知らないガキかもしれんな」

船長は、とりあえずそのスループ船の横に船を付けるように指示した。フライング・グリフォン号はその場に錨を降ろし、スループ船が近づくのを待った。スループ船はゆっくりと進み、フライング・グリフォン号の横に付いた。そしてグリフォン海賊団が目にしたのは、三つ網状の髪を下げた女性というにはまだ幼い少女だった。

「海賊にしては、ずいぶんと警戒心が薄いのね」

少女は錨を手で降ろし、こちらを見下ろす海賊たちを見上げた。

「あたしは魚を売りながら海を旅する漁師。別に怪しくないから心配しないで」

少女の言葉に少し緩んだ船員たちの中から、警戒を解くなと騒ぐ船員が数名いた。

「こいつは海獣使いの魔女だ。魚を売っては船を沈める海の怪物だ。本当にいたとは思わなかったがな」

「別にあたしの事をどう呼ぼうが関係ないけど、船を沈めるのは最終手段の時だけよ。あたしだって、海賊ごときに命をあげるつもりはないんだから」

少女は足元に転がる紙の束を投げ渡した。

「それが請求書。普通の魚ならいつでも取れるけど、海の怪物は見つけるのに時間がかかるから、高いし船に泊めてもらうことになる。と言っても、あまりの怪しさに信用する人は少ないけどね」

「面白いじゃないか。漁師の娘、こっちへ来い。話はそれからだ」

突然現れたのは、メインマストに寄り掛かり、請求書を眺める船長だった。少女は降ろされたロープで船に上がり、船長と向き合った。

「あたしはフィー。ルリ島出身の漁師よ」

「俺はこの船の船長、グリフォンだ。お前らも名乗れ」

グリフォンの命令通り、船員が名乗ろうと口を開けかたが、それはフィーによってさえぎられた。

「言わなくても知ってる」

フィーは船員に近づき、一人一人と握手し始めた。最初は、長い髪を一つにまとめた青年。

「レイ。二つ名はステュムパーリデスの鳥、または怪鳥の長。体術を得意としている」

唖然とするレイから離れ、その隣にいた図体の大きな男と握手を求めた。

「ドッチ。二つ名は地獄の番人。サーベル使い」

フィーは次々と船員の名前を言い当て、握手をしていった。

「そして最後に、キャプテン・グリフォン。特に目立った特長はないけど、海軍の目の敵にされている」

「よく知っているな。指名手配書か」

グリフォンはゆっくりと腕を動かした。フィーはその行動を逃さず、軽々しい動きで後ろに下がった。それと同時に銃声が鳴り響き、フィーがいた場所には幾つもの銃弾による穴が開いていた。

「よく分かったな。ウチの最強の狙撃手の狙撃を見破るとは」

グリフォンの言葉が終わらないうちに、まだ若い青年が左手に銃を構え、姿を現した。

「簡単よ。この海賊は警戒心の薄さゆえに、幹部の情報は色んな所に漏れている。そして、噂でよく聞くのが、金の髪をなびかせ船を沈める青年。リトル・レオ」

フィーは身に着けていたジャンパーを脱ぎ捨てた。ジャンパーの下には多数の武器が隠されていた。そのうちの一つ、小銃を構えた。

「ずいぶんと物騒な小娘だな。本当に漁師か」

船員たちがフィーを取り囲み、銃を突きつけた。しかしフィーはそれに動じず、今度は腰に巻いているウェスト・ポーチから小型の手榴弾を取り出した。

「言ったでしょ。海賊に殺されたくないって」

グリフォンはしばらく黙っていたが、突然笑い出した。

「気に入った。お前ら、銃を降ろせ。小娘、良かったら仲間にならないか」

突然の発言に、グリフォンの隣で銃を構えていたリトル・レオは船長に銃を向けた。

「船長。ここは海賊の船だ。漁師の船じゃない。ましてや、女が乗る船でもない」

「チビライオンに言われたくないわよ」

フィーの言葉が癪に障ったリトル・レオはフィーに向かって銃を発砲した。その動きは一瞬で、誰もが見ることが出来ない早業だった。しかし、銃弾はフィーには届かず、何かによって弾かれていた。

「あたしは簡単には殺せない。ルリ島最先端の技術でつくられた、シーカメレオンMM5がいるから」

フィーの周りには漆黒の壁が立ちすくんでいた。フィーの合図と共にその壁は形を変え、緑色の大型オウムに変わった。

「ついでにあたしの実力は賞金三千ベル。そこにいるチビライオンよりも大きいのよ」

「うん。大きい」

オウムはフィーの肩の上で同意した。

船員たちは銃を降ろし、グリフォンの答えを待った。

「ルリ島といえば、漁業の技術が進んでいる島と聞く。そのオウムもその一つだ。お前ら生身の人間には敵わん相手だ」

グリフォンは一人で唸っていたが、すぐに顔を上げた。

「仲間にする。小娘の返事しだいだがな」

グリフォンの言葉にフィーは手を差し出した。

「いいわよ。どうせ普通には生きていけないんだから」

「ないんだから」

シーカメレオンMM5は羽をばたつかせながら言った。



こうして、漁師フィーは一つの海賊団に仲間入りした。そして、しばらくもしないうちに、この海賊団に起こる多くの事件を知る事になる

良かったら感想をください!!


出来れば連載したいと思っています。

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