表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

時間戦士は永遠の夢を見るのか・番外編「木曜日」

時間戦士は永遠の夢を見るのか・番外編「鏡の前で」

作者: 刹那メシ
掲載日:2026/03/20

※継続して「時間戦士は永遠の夢を見るのか・番外編」を読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。おかげ様で、先日、本編単体でのPVが1000を超えました。心から感謝申し上げます。


これは「時間戦士は永遠の夢を見るのか」本編の第8話「しおんの花言葉」の直前の出来事になります。未来から来た女性タイムトラベラーであるアミカナは、自身がアンドロイドであることを隠して、大学生の志音と行動を共にしています。本編では描き切れなかった、互いに惹かれていく二人の心の触れ合いやすれ違いを描いています。本編未読でも、少しは楽しんで頂ける……ことを願っています。

<木曜日>

 アミカナは一人、冷たい水で顔を洗っていた。蛇口の栓が甲高い音を立てる。やがて、タオルで顔を拭いた彼女は、タオルを頬に当てたまま、洗面台の前に立ち尽くした。

 多分、分かってしまった。歌の意味が……

 彼には言えない。言えばきっと、何とかしようと、彼は言い出す。議論している時間はない。

 軍の球体への接触は11時。それをきっかけに、きっと球体からは大きな反撃がある。しかも自動攻撃のはずだ。容赦はない。軍も簡単には引かないだろう。ここは戦場になる。

 重要参考人の確保が最優先だ。どれだけ時間がかかる? 安全な場所まで退避するのに。志音が免許を持っていることは確認した。開店と同時にレンタカーを借りて、2時間走らせれば、最低でも60キロは離れられるはず。距離は問題ない。内海を挟んだ半島方面に行けば、遠くから街の様子を観察できるかも知れない。

 ほんの一瞬、二人での逃避行のイメージが頭をよぎる。何もかも捨てて、運命の手が届かないほど遠くへ……。そして苦笑する。ほんと、どうしようもないわね……

 歴史改変阻止者失格でもいい。だが、だからと言って責任から逃れることはできない。資格があろうがなかろうが、私以外に、やれる人間はいないのだ。

 昨夜は見ることのできなかった鏡を見る。青白い顔だ。血など通っていないのに――いや、通っていないからこそなのか?――血が通っていないから、そんな決断ができる?

 笑顔を作る。有無を言わせない、とびきりの笑顔が必要だ。

 だが、鏡の中の自分の顔に、心が鈍く痛む。何がそんなに楽しいの? 今からたくさんの人が傷付くというのに。

 いや、私の気持ちはどうでもいい。彼に不信感を与えてはいけない。それが第一目的だ。

「……朝だよ、志音……」

 鏡に向かって小さく声を出す。ダメだ、もっと明るく。

「……志音……起きて……」

 ふと、小さな物音が気になって背後を振り返る。まだ起きないで。準備できてない。

 ひとしきりの予行演習の後、彼女はそっとリビングへ戻った。志音は、床の上で毛布にくるまり、寝息を立てていた。

 声を掛ける前に、彼女は彼の寝顔を眺めた。意外にあどけない。思わず顔がほころぶ。

 ……この顔、どこかで見たような……

 何度目かの不思議な懐かしさを感じる。そんなはずはないのに。

 私は、どうして彼に声をかけたのだろう?

 結果的に、それは間違いではなかった。それだけは、自信を持って言える。

 昨夜の彼の言葉を思い出す。

 ……そう、だから、これがベストな選択なの……

 息を吸った彼女は、溌剌とした大きな声を上げた。

「志音! 起きて!」


挿絵(By みてみん)

お読み頂きましてありがとうございます。公開中の平行宇宙編については、本編・番外編との温度差に戸惑う方もおられると思いますが、屈託なく笑う「時間戦士」の面々も書いてみたいと思いました。本編・番外編とは全くの別物としてお楽しみ頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ