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第二王子は公爵令嬢に忠誠を誓う  作者: 風月 雫


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第7話 俺は国王になる

読んでくださりありがとうございます。

クリスティーン嬢の家名をグランティア公爵からロッソ公爵に変更しております。

申し訳ございません。

 俺は部屋で一人、呆然とソファーに座っていた。


 ――では、この国を守ってください。国王として。


 クリスティーン嬢が真剣な眼差しで俺に言ったことは、これは公爵も同じ想いなのだろう。

 情けないことに俺はすぐに返事を返せなかった。国王として国を引っ張っていけるか自信がない。

 黙り込んだままの俺に彼女はそっと微笑んだ。


「急なお願いですが……ジルベール殿下しか、この国を任せられる方はおりません」


 彼女は、暫く俺を一人にした方が良いと思ったのか、それだけ言うと、後ほどまたお伺いしますと部屋から出て行った。


 両手で頭を抱え込み、どうしたものかと悩む。

 今まで俺は王位なんて興味が無かった。一応、国王の子で第二王子という肩書があったが、結局は側妃の子だから自分には関係のないものだと思っていたからだ。家庭教師をつけてもらい、いろんな事は学んできたが、王太子としての教育を受けて来たわけでは無い。それを今更、『国王になれ』と言われても「はい、分かりました」とは言えるはずもなかった。頭と気持ちが追いつかず、大きな溜息が出る。

 

 どうしても、俺が国王にならなければならないのか?


 確かに、今のままでは王家は国民の信頼を失うだろう。しかし、王位継承権を持っているのは、俺だけじゃない。このグランティア公爵だって、元を辿れば王家の人間だ。何番目かに継承権があったはず。だから、クリスティーン嬢も持っているはずだ。


 それなのに、なぜ俺なんだ?


 俺が一番王位継承順位は近い。しかし、可能ならば、彼女が女王になって、俺が護衛騎士で良いんじゃないかと思ってしまう。どちらかと言えばそちらの方がしっくりくる。




 あれからどれくらい時間が経っただろう。

 外の様子を見れば、陽が傾き始めている。騒がしかった人の出入りも今では少なく、落ち着いていた。


 国王は俺と母が王城から姿を消したことに気付いているだろうか。否、使用人辺りは気付き始め騒いでいるかもしれないが、国王とクラウスは気付いていないだろう。仮に、気付いたとして何の気も止めずにいるに違いない。


 俺がいなくなっても痛くも痒くもないか――。


 はあ、と俺は深い溜息を吐いた。

 小さい頃から、王城内では殆ど邪魔者扱いだった。しかし、ごく一部の貴族たちや使用人たちは俺を王族扱いして大事にしていてくれた。グランティア公爵もその中の一人だ。


 否、大事にしてくれたかは不明だが、まあ王族として接してくれていたな。


 クリスティーン嬢も学園にいた時から、俺に敬意を払ってくれる数少ない一人だった。


「…………」


 彼女の力になりたい、その気持ちに偽りはない。だが、それが俺が国王になるとは、また別の話だ。

 俺は天井を仰いだ。

 漠然とした気持ちでいると、ドアの鳴る音が聞こえた。


「はい、どうぞ」


 入室の許可を出すと扉が開く。

 椅子にもたれ掛かっていた俺は、慌てて身を起こした。公爵だ。

 

「殿下。まだ、覚悟が決まりませんか?」


 相も変わらず、冷たい視線を送ってくる。もう少し柔らかい表情をしてもらえると言いたいこともすんなり言えるはずなんだが、と尻込みしてしまう。

 無言でじっと睨みつけるような感じで公爵はこちらを見ている。質問に答えないとダメなんだなと思いながら、何とか口を開いた。


「……公爵。俺は、今まで『王位』というものに全く興味が無かった。関係のないものだと思っていた」


 俺は、遠慮気味に正直な気持ちを公爵に伝える。何に戸惑っているのか伝えなければならないと思ったからだ。


「興味がない、関係のない――。それで国王になるつもりはないと?」


 不機嫌な低い声と共に蒼い瞳の鋭い視線が、まるで刃物でも喉元に突き付けられている感覚に陥る。


 すっと背筋に何かが伝い落ちる。

 ゴクリと俺は喉を鳴らした。

 馬鹿正直に言いすぎたかと、心の中で呟いた。


 しかし何が正解なのか、分からない。クリスティーン嬢の助けになりたい気持ちがある。しかし、王位に就け、国王になれ、と言われて、『はい、わかりました』といえる程単純な話ではないはずだ。


「殿下は、娘に好意を寄せていらっしゃるようですが……」


 は? と声に出そうになった。

 余りに唐突な事を公爵が言い出したから驚いた。しかも――軽く睨まれているように感じる。

 俺は目を見開きながら、ゴクリと固唾を呑んだ。

 まさか彼女の父親からそんな事を聞かれるとは思いもしなかった。しかも、昨日彼女は王太子、クラウスから婚約破棄されたばかりだ。


「殿下。国王になると仰っていただけるのであれば、娘のクリスティーン嬢を伴侶とさせて頂きます」


 なる! 俺は国王になる!!


 と――咄嗟に公爵の提案に叫びたくなる気持ちを必死に抑えた。

 まさか、公爵がそんな事を言い出すとは思いもしなかった。

 確かに彼女がクラウスの婚約者だったころから、ずっと彼女には横恋慕してきた。しかし、俺が国王になるのならと、また王家と婚約するとはあまりにも彼女の意思を無視し過ぎてはいないだろうか。


「公爵は、クリスティーン嬢を道具にしか思っておられないのか?」


 咄嗟に口から出てしまった言葉に、しまったと思った。滅多に表情が変わらないのに、公爵の表情は少し眉間に皺がよっている。また、背筋に何か冷たいものが伝い落ちた。


「……す」


 『すみません』の『す』まで出かかり、口を噤んだ。彼女の事を想えば、ここで謝るのは違う。だが、彼女の父親に言っても良い言葉だったのかと、ぐるぐると頭の中で考えてしまった。


「殿下は、娘がお嫌いですか?」


 好きだ! 好きですとも! と咄嗟に叫びそうになった。けれど、無表情でそんな事を聞かれても怖くて答えられない。


「嫌いですか?」


 もう一度、問われる。


「…………す、」


 好きですと言ってしまいたい。言ってしまいたいが――。


「ク、クリスティーン嬢の気持ちはどうなるんだ?」


 緊張して、声が震えた。

 俺は彼女の気持ちを無視してまで、そういう関係にはなりたくない。


「相手の気持ちを考えていたら、手に入るものもはいらなくなりますよ。嫌なら、よその国の王子と婚姻をさせるまでです。より良い同盟を結ぶ為に」


 ちょっと待てや!! と叫びたくなったのを堪える。これが父親のいう言葉か? それでは、彼女が可哀想だ。


「娘が可愛そうだとお思いですか? 貴族の娘に、しかも公爵令嬢となれば、政略結婚は致し方ない事です。それに、我が国には王女がおりません。殿下ともあろうお方が、それくらい理解されていると思っておりましたが。国を想えば、娘を同盟国に嫁がせ、繋がりをより強くした方が良い」


 公爵の言葉に俺は顔が引き攣る。王女がいないから、公爵は自分の娘を代わりにしようというのだ。


「何処に嫁がせるつもりだ」

「どの国も適齢期の王子はいます。これ以上関係を悪化させず、新たに同盟を組みなおすのも悪くはありません。北の方でも嫁がせますか?」


 北と言えば、アールムだ。アールムの動きが慌ただしくなり、戦争を仕掛けようとしている。彼女を嫁がせたところで、人質のような扱いをされる可能性だってある。そうなれば、あちらの要求を飲まざる得ない。


「そうなれば、向こうの王女もこちらに嫁いできてもらわなければなりませんね。殿下、どうです? アールムの王女を娶ってみては。確か11、12歳ぐらいです」


 どんいう父親なんだと俺は頭を悩ます。公爵は本当に娘を単なる駒としかみていないのか。まあ、俺も父親には恵まれなかったが、それでもクリスティーン嬢は本妻の子だ。どうして、そのような扱いが出来るのか不思議だった。


 このままでは本当にクリスティーン嬢をアールムに嫁がされてしまう。それならまだ、自分と婚姻を結んで、傍にいてもらった方が安心だ。

 俺は軽く息を吐き、決心を固める。


「分かりました。俺が国王になりましょう。それで、クリスティーン嬢は俺の傍においてもらえるんですね?」

「それは、殿下次第です。ただ王になればいい訳ではありません。皆に認めらるようになってください。殿下の価値を示してください。ああ、ちなみにですが、ジルベール殿下を国王に推薦したのは、我が娘です。期待を裏切らないでください」


 表情の変化が無かった公爵だったが、安に、国王に推したのは自分ではないからな、と念を押されたようだった。そして、ふんと鼻で軽く笑うと、公爵は部屋を出て行った。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は12月27日更新予定です。

読んでくださる嬉しいです。

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