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第二王子は公爵令嬢に忠誠を誓う  作者: 風月 雫
第1章

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第18話 sideカール ガーネット・ローザン男爵令嬢

よろしくお願いいたします(#^.^#)

 ロッソ公爵が言っていた通り、卒業パーティーで王太子がクリスティーンに婚約破棄を言い渡した。

 公爵が報告を受けた内容には、その王太子の隣には、あのガーネット・ローザン男爵令嬢が一緒にいたという。




 あの令嬢は曲者だった。

 私が男爵位の授かった頃は同じ男爵家なのに、見下すような目で見ていた。私も相手にはしなかった。それにも関わらず、私がロッソ公爵の後継者候補に名が挙がれば、コロッと態度を変えてきたのだった。


 夜会やパーティーなどがあれば、何だかんだと色目を使って言い寄ってきていた。しかし、私には変な令嬢が寄ってこないようにとロッソ公爵が目を光らせていた。ロッソ公爵だけではない。実家のロゼオ侯爵家もそうだった。


 けれど、ある日の王家主催の夜会でのことだった。

 ローザン男爵令嬢がロッソ公爵、ロゼオ侯爵の目を搔い潜って私に言い寄って来た。


「カール様。二人でバルコニーに行きませんか?」

 

 ほんの一瞬の隙だった。

 私の腕にベッタリと体をくっつけ腕を絡めるようにして組み、言い寄って来た。そのまま人気のないバルコニーに連れて行かれそうになる。一気に鳥肌が立った。

 自分の軽率な行動でロッソ公爵家に迷惑をかける訳にはいかない。そう思った私は彼女から離れようと、腕を軽く引き抜こうとした。けれど引き抜けず、焦った私は少し乱暴に引き抜いた。蛇のように絡む彼女は急に押されたかのように、か弱くドサリと後ろに倒れた。ワザとらしく甚だしい。


「きゃあ!」


 しかし声だけは大きかった。夜会でそんな大声を出して倒れれば、自然と会場中の視線を集めてしまう。案の定、何事だと周りが騒ぎ立てる。


 見るからに演技だと分かるが、ロッソ公爵家の後継者となるものが、見て見ぬ振りも出来ない。ここで「大丈夫ですか?」と声を掛け、手を差し伸ばさなければならない事は理解していた。けれどそんな事をすれば、この馬鹿令嬢の思うツボだと感じた。しかしそのまま素通りすることも出来ない。このまま踵を翻すことが出来れば、どれだけ良いだろう。


 俺は歯を食いしばり、手を差し伸べようとした時、横から違う手が伸びるのが見えた。この国の国王と同じ金色の髪のクラウス王太子殿下だ。


「ローザン男爵令嬢。大丈夫か?」


 ローザン男爵令嬢の方を見ると、手を伸ばしたのが王太子だと分かった彼女は、もう顔をうっとりとさせていた。クラウス王太子は何故かしたり顔をし、床に座り込んでいた彼女は嬉しそうに彼の手を取り立ち上がった。


 彼女は自慢げな顔をして私を見る。その顔は勝ち誇ったかのようだった。


 助かった。あの顔は、多分王太子に乗り換えたのだろう。


 案の定、先程の私に絡みついたように、王太子の腕に絡みついている。そして何故か王太子も私の方を見て、ドヤ顔でニタリと笑っていた。


 あの笑みはどういう意味だ?


 どちらにせよ、ローザン男爵令嬢の興味が私から王太子に移ったのならと、私は安堵の溜息を漏らす。

 しかし、ベッタリとくっ付いてるあの二人を見ると、疚しいというか、苛立つ感情が沸き上がって来る。この夜会には王太子の長年の婚約者、クリスティーンも来場していた。いくら王家主催といって好き放題もどうかと思う。


 視界に入ったクリスティーンを見ると、彼女は何もなかったように他の令嬢と談話していた。気にはしていないようだ。


 カール、とふいに後ろから名を呼ばれ、肩をポンと軽く叩かれた。振り向けば、実父、ロゼオ侯爵だった。


「気を付けろ。公爵家から信頼を失うなよ」

「はい。分かっております」

「解っているのなら良い。もう直ぐダンスが始まる。クリスティーン嬢をお誘いしなさい」


 ロゼオ侯爵は違う方向に目を向けた。私もその視線を追う。父は王太子を見つめていた。彼は見るからに婚約者と踊る雰囲気ではない。先ほどのローザン男爵令嬢とべったりとくっ付いて離れる様子がなかった。


 ダンスが始まろうとしても、王太子はクリスティーンをダンスに誘うような気配がない。このままでは、彼女は不本意な男性とダンスをすることになるかもしれない。だからだろう、ロゼオ侯爵は「早く」と私を急かせる。私は彼女の元に急いだ。


「クリスティーン嬢、一緒に踊っていただけますか?」


 いつも読んでいる愛称ではなく名前で、彼女に手を差し伸べる。


「カール様。喜んで」


 いつもは『カール兄様』と呼ぶ彼女も『カール様』と呼んだ。白い手が俺の掌に乗った。

 可愛い妹がニコリと微笑む。彼女はロッソ公爵と同様、顔に感情を出さない。けれど、兄のように接してきた私には、このような微笑みを見せてくれる。


 生演奏のワルツの曲が流れると、優雅に彼女はステップを踏む。


「クリス、ダンスを習っていて良かっただろう?」

「はい」

「とても上手だ」


 踊りながらダンスを褒めるとクリスティーンは顔を少し赤らめる。それを見た周りの男どもがうっとりとしているのが見えた。


 その中にジルベール第二王子の姿もあった。彼もクリスティーンの事を想っているのは知っていた。しかし、王太子の婚約者に言い寄る事も出来ないはず。指を咥えて見ているだけだろう。

 ジルベール殿下が王太子になれば、クリスティーンは彼と婚約することになるかもしれないが、そうなる可能性は少ないだろう。シャルロッテ様がロッソ公爵の後ろ盾をもうすでに持っている。クリスティーンが必ずしも王家に嫁ぐ必要もなくなるのだ。

 そうなれば、前々から騎士になりたいと言っていた彼女の目標も叶うかもしれない。

 全ては、今の現状ではそれは不可能だった。


 ワルツを踊りながら、いつかこの可愛い妹の、クリスティーナの目標が叶う日が来ればいいなと密かに思いながら、曲の終わりと共に、彼女の手を離した。




 あれから、数か月後。

 今日はクリスティーンの卒業パーティーだ。

 彼女は嬉しそうに意気揚々、早々と帰宅してきた。

 

 そう、彼女の夢の通り、クラウス王太子が彼女に婚約破棄を言い渡したのだ。

 ロッソ公爵に報告された内容は、王太子があのローザン男爵令嬢と婚約すると皆の前で宣言したと。

 これで、ロッソ公爵の思い通りになる。この日のために公爵は動いていたのだ。そして直ぐに他の公爵家にも連絡が行く。そして、国王に反感を持っていた貴族たちにも連絡が行った。


「よう! 婚約破棄だって?」


 ブル公爵も昂奮気味にロッソ公爵に訪れていた。

 この国の三大公爵家の結束は固いが、流石にクリスティーンの『夢』の話まではブル公爵にもヴェルデ公爵にも伝えていなかった。


「よく、破棄になると予想を立てたものだ」


 バン、バンとロッソ公爵の背中を叩いたのはブル公爵だった。


「ああ、あの蛇のような令嬢がいたからな」


 ロッソ公爵はそれらしい理由を述べる。


「あ、ローザン男爵令嬢か? クラウス王太子殿下もあんな令嬢を選んだものだ。俺なら、クリスティーン嬢一択だな」


 ロッソ公爵の冷めた蒼い瞳は、ブル公爵を睥睨するような目で見る。それを見た彼は「おお、こわっ!」と肩を竦めた。


「それで、お前の従姪はどうするんだ?」

「すでにあれがジルベール殿下に話をしてあると言っていた」


 ブル公爵は片眉を上げる。


「えらく段取りが早いじゃねえか?」

「奴らに与える時間はない。さっさとジルベール殿下に国王になってもらう」


 奴らとは国王、王妃、王太子の事だろう。

 その後の対応も早かった。反感を抱いていた貴族たちが続々とロッソ公爵家に訪問してきたのだ。

 そして、その数は思っていた以上のものだった。


 そのお陰で、すんなりとあの三人を捕らえることが出来た。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります。

次回更新は3月14日前後あたりの更新予定をしておりますが、遅れるかもしれません。

その時は活動報告でお知らせいたします。

また読んでいただけると嬉しいです。

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