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第二王子は公爵令嬢に忠誠を誓う  作者: 風月 雫


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第1話 婚約破棄

初めての投稿になります。

楽しんで頂けたら幸いです。

「クリスティーン!! 今日この時をもって、僕は陰湿な貴様との婚約を破棄する!! 僕はこの愛らしいガーネット・ローザン嬢と婚約する!」


 学園の卒業パーティーで金髪でブルーの瞳の男が、くるくると癖のあるピンク色の髪の令嬢の腰に手を回し、周りの生徒より高い位置から高らかに声を上げ叫ぶ。そしてその令嬢の顔を見つめる。令嬢は恍惚とした表情で見つめ返す。


 俺は離れた場所からその様子を見ていた。

 煌びやかなシャンデリアの照明で、華やかなホールの中央には深紅のドレスを着た令嬢、クリスティーン嬢が一人で平然と立ち、クラウスを見ている。

 高らかに声を上げた男は、この国、フランツ王国のクラウス・フランツ王太子殿下。俺の腹違いの兄だ。


 クラウスの婚約破棄宣言に周りがどよめく。


 そりゃ、そうだろうな――。


 この婚約には大きな意味があったからだった。


 クリスティーン嬢はこの国の筆頭公爵家、ロッソ公爵令嬢。彼女は幼い頃から国が決めたクラウスの婚約者なのだ。要するに、ロッソ家が後ろ盾になる事で、王家の地位は安泰という事だ。それをまさか、そんな彼女との婚約破棄をこんな場所で言い渡すとは、俺も思いもしなかった。


 そして、馬鹿兄のクラウスの横には、先程まで名も知らない品のない令嬢。噂によると男爵令嬢らしい。見た目はお似合いカップルだ。クラウスにはクリスティーン嬢は勿体ないと常日頃から俺は思っていたからだ。


 クラウスはクリスティーン嬢の悪行を言い連ねる。

 だが、それは馬鹿げたものばかりだ。ガーネット嬢のする事なす事にことごとく文句を言い、更には、教科書やノートに落書きをしたり、鞄を噴水の中に落としたりしたと言う。クラウスと仲良くしているガーネットに嫉妬し、彼女がすれ違い際に階段から突き落としたと。


 ああ、あれか?


 俺も落ちる瞬間を見たが、クリスティーン嬢とすれ違う前に落ちていた。

 大怪我でもしたのかと思ったが、単なる足を捻っただけだった。階段を降りて来て、五段目辺りから落ちれば、そんなものか。どうせ落ちるなら、もっと高い所から落ちれば良いものと思ってしまった。


 そして、その突き落としたというのも、クリスティーン嬢が階段を上る前の話。馬鹿げた笑い話だ。


 この馬鹿げた話は、王太子とその将来王太子の側近となる生徒たちしか、信じていない。他の生徒達はガーネット嬢の自作自演だと知っていた。


 する事なす事に文句を言ったというのは、ガーネット嬢があまりにも貴族のマナーを知らないからだった。それを丁寧に彼女は指導しただけだ。第一、婚約者がいる男子生徒たちの腕を組んだり、木の陰に、物の陰に隠れて抱き着いたりとしていれば、将来王妃となる彼女がガーネット嬢に指導して何が悪い。


 これでは、彼女が今までの苦労した王妃教育は一体何であったのだろうか、と俺は怒りが込み上げてくる。

 クラウスの婚約者として厳しい教育を受けて来たのにも関わらず、ここで婚約破棄などとふざけていると俺は思った。


 彼女を見ればショックからか、深紅のドレスを両手でギュッと握り、震え下に俯いていた。

 クラウスとガーネット嬢は勝ち誇ったかのように彼女を見下し見ている。


 俺にとっては、耐えがたい屈辱だった。何故なら、俺は密かに彼女に好意を寄せていたからだ。彼女は表情にはあまり感情を表さない。だが、時々ふと、愛らしい控えな笑顔を見せることがある。そんな彼女を俺は好きだった。


 クリスティーン嬢をお助けしなければ――。


 一歩足を前に出したところで、俺は下を俯いた彼女の表情が見えた。涙を流し泣いているのでは、と思ったら違う。必死で笑いを堪えているようだった。


「……」


 俺は声を掛ける事を躊躇していると、彼女は顔を上げ、クラウスを見た。


「分かりました。クラウス王太子殿下」

「はっ?」


 狼狽えるのは彼女ではなく、婚約破棄を叫んだクラウスだった。

 この時、彼女はクラウスに『王太子殿下』と敬称を付けて呼んだのだ。今までは『クラウス様』と呼んでいた。もう、自分は婚約者ではないという意思表示なのだろう。切り替えの速さに周りの生徒もざわつく。

 彼女は優雅にクラウスに一礼をすると、踵を返し会場を後にしようとする。彼が慌てたように声を上げる。


「おい! 待て! クリス! 婚約破棄だぞ!? この後自分がどうなるか気にならないのか?」


 彼女は、くるりと優雅にドレスの裾を翻しクラウスの方を見た。


「私の婚約者ではない方に愛称で呼ばれることは不愉快でございます」

「は?」

「確認ですが、この事は国王陛下はご存じでしょうか?」


 淡々と無表情でクラウスに質問する彼女に、クラウスは怯む。


「ま、まだだ。だが僕が決めたことに父は認めてくれるはずさ!!」


 彼女は大きく息を吸い込むと、それを一気に吐き出すように溜息を吐いた。きっと呆れておられるのだろう。

 周りの生徒たちはヒソヒソと話をしている。誰一人とクラウスを止める様子もない。


 王太子の婚約者を国王陛下の知らない所で婚約破棄宣言をし、新たに婚約者を勝手に決める。国を何だと思っているのか。馬鹿につける薬はない、と言うが、クラウスにも無いな。

 この国の行く末が見えた。俺はそう思った。ここにいる大半の生徒も同じ考えだろう。


読んでいただきありがとうございます。

ゆっくりの更新になると思いますが、楽しんで書いていこうと思います。

もし面白いと感じていただけたなら、応援やブックマーク、評価などいただけましたら励みになります! また読んでくださると嬉しいです。

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