謝るバーバス
とある異世界に大きな鍛冶屋を営なんでいる親方がいました。
その鍛冶屋はスプーンやフォーク、鍋に盾、さらには大きな剣を作ることができる場所でした。
黙々と鎚を打ちつける音がたくさん響くなか、ある男がひょこひょことやってきました。
「すんません、僕を雇ってもらえませんか?」
彼の姿を見た親方は手を休めてから渋々と面接を始めました。
「名は何という?」
「バーバスと言います」
「お前は鎚を振ったことは?」
「ありません、すんません」
「熱いのは得意か?」
「熱いのは苦手です、すんません」
彼に何を聞いてもできないことばかり。それでも親方は彼がしつこく雇ってくれと懇願するので仕方なく雇うことに決めました。
しばらくして親方はあることに気が付きました。
鍛冶屋の売り上げが上がっていたのです。
いつもと変わらない仕事をしていたのに、商品が多く売りあがる。そのことに疑問を持った親方は皆の仕事を見ることにしました。
まずは寡黙のサザー。彼女は話すことなく淡々と一つの物を物凄いスピードで作り上げる達人。
だけどいつも床に商品を散らかす癖があったのだが、今日は違かった。
「すんません、サザーさん、こちらの物をコパットさんに持っていきますね。」
バーバスがせっせと床に落ちた商品を拾って仕上げ係へと運んでいたのです。
「コパットさん、フォークが大量です。数を出せてなくてすんません、スプーンと揃えて、数も数えてシトリーさんに届けてくれませんか?すんません」
あちらでは、いつもは仕上げしかしないコパットが、一つ一つ丁寧に数を数えて仕上げをしているではありませんか。親方はこれでは作業が遅くなると感じましたが、ぐっと堪えて観察を続けました。
「ああ、シトリーさん。こちらの包装を先にやってもらえませんか?すんません紙を切らしてしまって。あ、そちらの包装は半分までにして残りはこちらを先にやってもらえませんか?すんません」
見るところに必ずいるのはバーバスの姿。謝りながらせっせと物を運んでは皆にお願いをして歩いていました。
親方は逐一指示なんか出したことがなかったので、その姿をみて鬱陶しいと思うようになりました。
そして鎚を握らずに働かないバーバスを親方は呼び止めました。
「おい、バーバス。お前いつからそんなに指示を出しているんだ。誰もそうしろとは言ったことはないだろう」
「すんません。すんません。誰も話さずにいるから作業が止まっているように見えて、つい」
「それに同じ作業を続けないと効率が落ちるだろう。なぜ一つのことをずっとやらせない」
「非効率ですよね、すんません。僕が勝手にやらしたんです、ほんとうにすんません」
親方は彼がしていたことに腹を立ててしまい、大声を出して問いただしますが返ってくる答えはすんませんの謝罪だけ。
自分の職場で好き勝手され、仕事の順序を崩されたことに怒りを覚えた親方はとうとう怒鳴ってしまいました。
「お前はクビだ!明日から来なくていい!」
「ううぅ。お役に立てず、ほんとうにすんませんでした。」
バーバスは涙を流して謝り、鍛冶屋を後にしてしまいました。
それから鍛冶屋はいつもの雰囲気を取り戻し、鎚の音だけが聞こえるいつもの職場に戻りました。
親方は床に落ちた商品を気にすることはありません。在庫になって積みあがっていて、売れない仕上がり品すらもそのまんま。
売り上げは元通りになって、全てが通常に戻りました。
親方は何も気にせずに鎚を振るいます。何も気にすることなんてないんです。
なぜかって?
一つの事しか目に見えていないからです。
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何が言いたいのかって?
答えを求めちゃいけないよ。
ただ、言えるのは、
視野が広い人ほど動いちゃって目を付けられるってことだよ。
でもそんな人が大事。周りを見て調整してくれる人、非効率に見えても、結果的に効率的な人。
でもみんな、それに気が付けない。
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一体私は何を書いているのだろうか。
ルビはかなり適当