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きらめく時間の見つけかた

作者: ごはん

風が少しだけ春を運びはじめた放課後。中学二年生の咲良さくらは、窓から差し込む陽の光を手のひらで受け止めながら、にっこりと笑った。


「今日も、きらきらしてる!」


その笑顔を見て、隣の席の光太は少し驚く。


「何が?」


「この時間だよ。なんか、心がふわってなるから。たぶん、踊ってるの、わたしの心が。」


彼女にとって「心が踊る時間」は、特別な宝物だった。たとえば、音楽室でピアノを弾いてるとき。お気に入りの文房具を見つけたとき。道端で猫があくびをしていたとき。

そんなふうに、誰かにとっては「なんてことないこと」も、咲良には小さな光の粒のように感じられるのだった。


**


ある日、光太がこぼした。


「俺、最近、楽しいって思うことあんまりないんだよね」


咲良はしばらく考えてから、言った。


「じゃあ、一緒に探そう?心が踊る時間。」


「探せるの?そんなの。」


「うん。だって、私がそうしてきたから。」


**


それから、ふたりの“心が踊る探し”が始まった。


朝、学校の裏庭に咲いたタンポポを見つけてはしゃぎ、図書室でお気に入りの本を交換し、帰り道ではカフェで限定プリンを半分こ。


最初は「ふーん」と言っていた光太も、ある日ぽつりとこぼした。


「咲良、これ…楽しいかも。今日、ちょっと心が揺れた。」


咲良の瞳が、ぱっと輝く。


「それだよ、それ!それが踊りの始まり!」


**


卒業アルバムの最後のページ。咲良はこう書いた。


「心が踊る時間は、自分でつくるもの。そして、誰かと分けあうと、もっと大きくなる。」


咲良のまわりには、今日もささやかな光があふれている。

たとえば、風に揺れるスカートの裾。たとえば、音楽の余韻。たとえば、誰かと目が合って、笑いあった瞬間。


そして彼女は、それらを見つけるたび、胸の奥でそっとつぶやくのだった。


「またひとつ、きらめいた」


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