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25 二人の子供

 気を取り直して僕とレオはライトエルフを目指して歩き出した。


 森の中を歩いていると、向こうの方から二人の子供が歩いてくるのが見えた。


 一人は十歳くらいの歳の男の子で、もう一人は八歳くらいの女の子だった。


 二人の服はつぎはぎだらけで、貧しい暮らしをしているのが一目で見て取れた、


 男の子は手に空っぽの鳥籠を持ち、反対の手で女の子の手を握っている。


 どうやら兄妹のようだ。


 何か探し物をしているらしく、あちこちをキョロキョロと見回しながらこっちに向かってくる。


「まるで『青い鳥』に出てくるチルチルとミチルみたいだな」

 ボソッと呟いたのをレオが耳聡く拾ったようだ。


「本当だ。これで『幸せの青い鳥を探しています』なんて言ったら完璧だね」


 そのうちに二人は僕達の前までやってきた。


「こんにちは」


「こんにちは」


 挨拶をすると、男の子の方が返事を返してくれたが、女の子の方はサッと男の子の後ろに隠れてしまった。


「あっ、こら、ミリル。ちゃんとあいさつをしなくちゃ」


 男の子に促されて女の子は男の子の陰に隠れたまま、小さく「こんにちは」と言った。


「こんにちは。君達は兄妹かな? どうしてこんな所にいるの?」


 レオが少し身を屈めて二人に問いかける。


 二人はサッと顔を見合わせたが、男の子の方が答えてくれた。


「僕はチャーリーです。こっちは妹のミリル。僕達は今、青い鳥を探しているんだ。何処かで見ませんでしたか?」


 レオと話していた通りの答えが返ってきて、僕とレオは思わず顔を見合わせた。


「ここに来るまでには見てないな。どうして青い鳥を探しているの?」 


「飼っていた鳥がいなくなっちゃったんだ。それで、近所のおばあさんが『青い鳥を見つけると幸せになれる』って言うから二人で探しに来たんだ」


 チャーリーはそこでがっくりしたように項垂れた。


「そっか…。何処にもいないんだね」


 すると、チャーリーの陰に隠れていたミリルが何事かをチャーリーに囁いた。


 それを聞いていたチャーリーは徐々に笑顔になっていく。


「…そっか…。そうだよね。じゃあ、ミリル。頼んだよ」


 二人が何を話していたのかはわからないが、その顔付きからしてロクな事ではないと察せられた。


 レオが「ねえ、君達…」と手を差し出した所で、ヒュルッと何かがレオの身体に巻き付いた。


 それは地面から張り出した蔓だった。


 その光景を見た途端、ドクンと僕の心臓が跳ね上がる。


(あの時と一緒だ! 陛下もあのように…)


 レオは巻き付かれた蔓によって身体を拘束され動けなくなっている。


 レオに近寄ろうとした所でチャーリーが鳥籠の扉を開けて叫んだ。


「あの妖精を吸い込め!」


 途端に僕の身体は鳥籠の中へと吸い込まれていく。


「うわあーっ!」


 気が付けば僕はチャーリーが持っている鳥籠の中に入っていた。


「出して! チャーリー! ここから出してよ!」


 チャーリーはそんな僕を見て黒い笑みを浮かべる。


「ダメダメ。せっかく捕まえたんだから。さあ、僕達のお家に帰ろうね」


 チャーリーはミリルと手を繋ぐと元来た道を帰っていく。


「レオ! レオ!」


 僕は遠ざかっていくレオに手を伸ばしたが、届くはずもなかった。


 レオは絡まっている蔓から逃れようとするが、どうにも出来ないようだ。


 こうして僕達は離れ離れになってしまった。

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