22 立ち塞がる者
食事の片付けを終えて再び歩き出した僕達だったが、足を進めるにつれて徐々に辺りの景色が変わってきだした。
森の中を歩いていたはずなのに、いつしか砂漠地帯を歩いているのだ。
「レオ、変だよ。森の中を歩いていたはずなのに、いつの間にか砂漠を歩いてる」
「ほんとだ。引き返そうか?」
レオがくるりと踵を返したが、
「あれ?」
と、戸惑ったような声をあげる。
僕も振り返って見てみたが、歩いてきたはずの森の姿はなく、辺り一面砂の大地が広がっているだけだった。
「どういう事だ? 森が無くなってる」
いきなり辺りが砂漠地帯になるなんて、もしかしてこれは幻覚なのだろうか?
「仕方がない。先に進むしかないだろう」
僕はレオを促して先へと進む。
すると、突然目の前に大きな物体が現れた。
「これはスフィンクス?」
「どうしてここに?」
目の前に現れたのは頭は人間、胴体はライオンの姿のスフィンクスだった。
スフィンクスは僕達の気配を察したのか、閉じていた目を開けるとギョロリと僕達のほうを見下ろした。
「ここから先は通さぬ。通りたければ私の質問に答えよ。答えられなければお前達を食ってやる」
ん?
なんだ?
まるであの有名な神話のようなパターンだな。
そう思っているとスフィンクスはおもむろに問いかけてきた。
「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足となり、足が多い時ほど弱い生き物は何だ?」
神話さながらの問い掛けに僕は内心がっくりとうなだれる。
僕が口を開くより早くレオが答えた。
「そんなの決まってるじゃないか。僕達人間だよ」
随分とあっさり答えるレオに驚いたが、今はこのスフィンクスから逃れるのが先だ。
神話では正解を言い当てられたスフィンクスは飛び降りて死んだとなっているが、今この場では飛び降りられるような場所はない。
どうするのかと見ていたら、スフィンクスは「クックッ」と笑い出した。
「よく答えられたな。だが、やはりお前達を通すわけにはいかん。さあ、どちらから食ってやろうか?」
何だよ。
答えられたら通してくれるんじゃなかったのか。
レオは素早く剣を抜いたが、それよりも早くスフィンクスの前足がレオ目掛けて振り下ろされる。
「うわっ!」
間一髪でスフィンクスの前足から逃れられたが、体勢を崩したレオはその場に倒れ込む。
「レオ、危ない!」
倒れ込んだレオに向かって再びスフィンクスの前足が振り下ろされようとした時、僕の身体は元の大きさに戻り、何処からともなく現れた剣を手にしてスフィンクスの前足を斬りつけていた。
「ギャアっ!」
ポタポタと前足から血を滴らせたスフィンクスは、悔しそうな顔を僕に向けるとフッと姿を消した。
スフィンクスがいなくなった途端、辺りは元の森へと戻っていた。
「レオ、大丈夫か?」
剣を持ったまま、振り返った瞬間、僕の身体は元の小さな妖精に戻り、剣も何処かに消えてしまった。
「ありがとう。フィルには助けられてばかりだな」
「良いんだよ。それよりもさっきから襲われてばかりだな。それにしてはすぐに逃げて行ったりして、何が目的なんだろうか?」
「さぁね。とにかく先に進もう」
立ち上がったレオはズボンに付いた砂を払うと、僕を促して歩き出す。
僕はレオの側をふわふわと飛びながらついて行くのだった。