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21 現れた女性

 ハーピー達から逃れて僕達は先へと進んでいったが、そのうちにレオのお腹が「くぅー」と泣き出した。


「ホッとしたらお腹が空いてきちゃったよ」


 恥ずかしそうに笑うレオに、僕も生まれ変わってから何も食べていない事を思い出した。


「何処かで休憩しようか。何か食べ物は持ってる?」


「いや。森に入ってから魔獣を仕留めようと思っていたからね。上手いこと魔獣が出てきてくれたらいいんだけれど…」


 それから僕達は休憩場所を探しつつ、魔獣も探すという行動に出た。


 しばらく歩いていると、火を起こす事が出来そうな地面がむき出しになっている場所があった。


「よし、ここにしようか」


 歩きながら集めていた薪を置いてかまどを作る。


 火を起こしてレオがマジックバッグから取り出した鍋に水を入れて火にかけた。


 後は肉を調達するだけだな。


 そのうちに、向こうの茂みがガサガサと揺れて、一匹の小動物が顔を出した。


「角ウサギだ!」


 角ウサギはレオの姿を見ると、回れ右をして茂みの中に隠れようとしたが、それよりも早くレオがその身体に剣を突き立てた。


 ちょっと可哀想だけれど、生きていくためには仕方がない。


 レオは手慣れた様子で角ウサギを解体すると、肉を鍋の中に放り込んだ。


 他にも野菜や調味料を加えてスープにしている。


 グツグツと鍋が煮えてきたところで、レオが味見をする。


「うん、いい感じだな」


 レオは器にスープを盛ると、僕の前へと置いた。


「小さく切ってみたんだけれど、食べられるかな?」


「ありがとう」 


 僕の口に入れるには少し大きかったけれど、何とか食べられた。


 食事を終えて後始末をしていると、不意に何処からか女性が現れた。


「あら、こんにちは」


 女性はレオに向かってニコリと笑いかける。


「…こんにちは」


 レオが戸惑ったように返事をすると、女性はいきなりレオの腕に絡みついた。


「うわっ!」


 レオは慌てて女性から逃れようとするが、女性はしっかりとレオにしがみついたまま離れようとしない。


「ねぇ、あなた。私の事が好き?」


「え?」 


「私の事が好きでしょ?」


 会ったばかりの女性に「好きか」と聞かれても答えられるわけないだろう。


 僕はレオから女性を引き剥がそうと彼女の服を引っ張るがびくともしない。


「ヤダ、何、この小さいの」


 パッと払われて僕の身体は遠くに弾き飛ばされる。


「フィル!」


 レオが焦ったように僕を呼ぶが、僕は何とか体勢を立て直してレオの所へ飛んでいく。


「こいつは多分、リャナン・シーだ」


「リャナン・シー?」


「ああ。人間の男の愛を探し求めているんだ。ターゲットを決めたら愛してくれるまで付きまとうんだ。けれど、男がリャナン・シーを受け入れたら男の命を吸い取って生きていくんだよ。だからそのうち男は衰弱して死んでしまうんだ」 


 このままだとレオに付きまとって離れなくなってしまう。


 そうなる前にレオから引き剥がさないと…。


 すると僕の身体が光り、またしても元の姿へと変化した。


「え?」


 リャナン・シーはいきなり現れた僕を見て、目を瞬かせた。


「ま、まさか、フィルバート様?」


「リャナン・シー! レオは僕と一緒にライトエルフの国に行くんだ。邪魔をするな!」


 僕が怒鳴りつけるとリャナン・シーはレオから手を離すと、その場に跪いた。


「申し訳ございません。まさかフィルバート様がいらっしゃるとは…」


「わかったらさっさと行け!」


「はい、失礼いたします」


 リャナン・シーは僕達の目の前からフッと姿を消した。


 リャナン・シーの姿が見えなくなると、レオはふうっと大きく息を吐く。


「助かったよ、フィル。…いや、その姿だとフィルバート様って呼ばなきゃダメかな?」


 レオにそう言われて反論しようとしたところで、またしても小さな姿へと戻っていった。


「ああっ、もう!」


 いつになったら完全に元の姿に戻れるのだろうか?

 

 僕はがっくりしたまま、レオが片付け終えるのを待った。


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