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19 行く手を阻む者

 ダークエルフの女王の元に再び二羽のカラスが報告に訪れていた。


「カアァー、カアァー」


「カアァー、カアァー」


 カラス達の報告を聞き、ダークエルフの女王は「フフッ」と笑いを零す。


「そう。一時的ではあるけれど、元の姿を取り戻したのね。けれど、まだその姿を継続出来るほどの力は無いみたいね」


 ダークエルフの女王は側に控えている側近に視線を移した。


「あの三人を呼んでちょうだい」


「はい、直ちに」


 側近が部屋を出ていくと、ダークエルフの女王は窓の外の景色に目を向けた。


「さあ、もっと私を楽しませてちょうだい。そして一日も早くあの男に会わせてほしいものだわ」


 ダークエルフの女王は、ライトエルフの王との再会に思いを馳せながら、三人が来るのを待った。




 ******



 再びライトエルフの国に向かう道を進んでいると、妙に道がジメジメとしてきた。


「何だ、この道? 雨でも降ったのかなぁ?」


 レオがぬかるんだ道に不満をこぼしながら歩いていく。


 僕は飛べるから道が良かろうが悪かろうが関係ないけれど、レオはそうもいかないよね。


「ほんとだ。何だか急にぬかるんできたね。雨が降ったようには見えないけどな」


 レオが足元を気にしながら歩く横を僕はフワフワと飛びながらついて行く。


 さっきみたいに元の姿だったら一緒に歩けるんだけれど、どういうわけかあの瞬間だけで、元の小さい身体に戻ってしまった。


「僕を助けようとしたから元の大きさに戻れたって言ったよね」


 改めてレオに問われて僕はコクリと頷く。


「そうだよ。…という事は、またレオに何かあったらそれを助けようとしてまた元の姿に戻れるって事かな?」


 僕がパッと顔を輝かせてレオを振り返ると、レオは露骨に嫌な顔をした。


「え、何それ? まるでフィルの身体を元に戻すために危険な目に遭えって言ってるみたいじゃないか」


 …みたいじゃなくて、半分そのつもりだったんだけど、流石にそれは口に出してはダメだろうな。


「…え、…いや。そんな事は…」


 ついと顔を反らしたけれど、レオの視線が突き刺さるようにイタイ。


「助けてくれるのは嬉しいけれど、わざわざ自分から危険な目に遭うつもりは無いからね」


 レオに釘を刺されて僕は不承不承頷いた。


「わかってるよ。僕だって無理矢理レオに危険な目に遭わせるつもりは無いからね」


 レオから剣呑な空気が消えたので、僕はまたレオの近くに寄っていった。


 そのうちにザザザッと木の葉を揺らして風が吹いてきた。


「うっ! 何だ、この臭い!」


「何だ! 何か腐ったような臭いだな?」


 キョロキョロと辺りを見回したが、特に何も変わりはないように見える。


「変だな? 何の臭いだったんだろう?」


 首を傾げていると、突然何かが僕達の横を駆け抜けた。


「うわっ!」


 巻き上がった風に一瞬顔を背けると、いつの間にか目の前に一人の女性が立っていた。


「おや、こんな所に人間なんて、珍しいね。誰だい?」


 レオの事を人間と呼ぶあたり、この女性も妖精か精霊なのだろうか?


 全身黒いドレスに黒いショールを羽織っている。


「僕はレオ。ここにいるフィルと一緒にライトエルフの国を目指しているんだ」


 レオったら、そんなに簡単に自己紹介しちゃって良いのかな?


 前世の世界だったら個人情報云々で問題になっているところだよ。


 レオに自己紹介を受けた女性は笑ってみせるけれど、その笑顔が何となく胡散臭く感じるのは気の所為だろうか?


「あたしはアエローだよ。ライトエルフの国に向かうのかい?」


「ええ、そうです」


「ライトエルフの国はまだまだ先だよ。私の家はこのすぐ近くなんだ。良かったらひと休みしておいき」


 アエローに誘われて僕とレオは思わず顔を見合わせる。


 いくら何でも、知らない女性の家をいきなり訪ねるなんてしたくない。


 僕がちょっと首を横に振ると、レオはコクリと頷いた。


「せっかくの申し出は有り難いんですが、先を急ぐので…」


 レオがペコリと頭を下げて通り過ぎようとすると、道を塞ぐようにサッと誰かが立ち塞がった。


「何処へ行くんだい?」


 そこにはさっきの女性の姿があった。


(…いつの間に?)


 慌ててレオと向きを変えて逃げようとすると、またサッと誰かが立ち塞がる。


「何処へ行くんだい?」


 またさっきの女性の姿が現れる。


「!!」 


 気が付けば僕達はまったく同じ顔をした三人の女性に取り囲まれていたのだった。

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