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「凜古風」だった頃のリメイク作品

ボーカロイド達のフィギュアに追いやられる三国志フィギュアたち・・・でも、アノ人「達」が覇道を突き進んだんだ。

作者: 凜古風

 ボーカロイド達の猛攻により、フィギュア棚は占拠されていった。そうして、三国志シリーズの、劉備・関羽・張飛もフィギュア棚からリストラされることとなった。

 彼らの最期の言葉を聞き届ける、トイ・ストーリ的な物語。


 フィギュアを買う財力も置く場所もない凛古風(リンコフ試作二号機)です。

 そんなフィギュア通の棚では、例の義兄弟達が話をしています。

 凜古風時代に投稿した小説のリメイクになります。

 ここはある青年の一室。青年の趣味はフィギュア収集だ。コレクターが住まう部屋の見本のごとく、フィギュア達は整然と並べれられている。


 その中でも、最もお気に入りのフィギュアを飾る特等席には……

「ラーメンは♪ ぶ~とん♪いかとん♪ かこうとん♪」

青緑色の髪の毛をしたボーカロイドが歌う俳句のキャッチフレーズCMで大ブレイクした夏侯惇かこうとんくんフィギュアが飾られていた。男女を問わず、このラーメンのキャラクターは受け入れられていた。


「『麺は三分計れ』ですか。私が唱えた、『天下三分の計』もかたなしです」

 諸葛しょかつりょう孔明こうめいのフィギュアは、夏侯惇かこうとん君のキメ台詞にため息をついた。

 

「おうおうおう、天才軍師、孔明こうめいさんよぉ、何とかなんねーのか?このままだと、俺達もジリ貧で売り飛ばされちまう。夏侯惇かこうとんごときに遅れをとっていいのか」

 豪傑、張飛ちょうひのフィギュアが孔明こうめいに叫ぶ。

 

曹操そうそう殿も、呂布りょふ殿も、個人売買サイトで処分されましたしなぁ。夏侯惇かこうとん殿の天下はゆるぎないかと。我が妻をモデルにしたパリピ孔明のヒロインすら、処分される始末『露出が少ない』とかの理由は、納得がいきませぬ」


 およよよ~と、泣き崩れる孔明。


「孔明殿の新妻、ツキミエイコ● 殿まで売り飛ばすとは、何たる鬼畜。義に反しますぞ、兄者ぁああ、今こそ立ち上がるとき」

 孔明のことがチョット嫌いな関羽も、今回の件については腹をたてていた。


「それどころではない。先日も無双ゲームのコラボ参戦で、我々は、ボーカロイドの小娘達が振り回す、ネギやマグロにボコボコにされたではないか。主殿の愛着が我々から離れていっているのは確実」


「うがぁああああ。青緑髪ツインテール悪魔ボーカロイドめ、ネギで俺様をいたぶりやがって。っていうか、あの『ネギ』強すぎ。俺様の蛇矛でも切れねーんだぞアレ」

 ボコボコにネギで殴られ、倒された後、『うごけ! このからだよ~っ! このきんにくはみせかけかぁ~っ!』と叫んでいる最中、尻の穴にネギを刺された張飛が、恨み言を叫んだ。


桃色ロングヘアー死神ボカロサンニンメも酷かった。冷凍マグロでブン殴られた俺の身にもなってみろ」

 300kgもある冷凍マグロを何度も叩きつけられた関羽も恐怖におののく。


「しぃ~、聞こえたらどうする。近いんだぞ」

 劉備が二人の声を制した。


「「もうおそい、聞いちゃった、報告しよーっと」」

 黄色い男女の双子ボーカロイドフィギュアが、隠密行動で大活躍していた。


「しまった、逃げるぞ……」

と、劉備が動こうとしたのだが、時すでに遅し。


 青緑髪ツインテール悪魔ボーカロイドのフィギュア20体と、桃色ロングヘアー死神ボカロサンニンメ5体に囲まれた。

「こっ孔明、策を巡らせ。関羽、張飛、ゆくぞ」

 劉備が叫んだ。

「「おうっ、我らとて、歴史に名を遺した豪傑」」


だが、しかし、「価格=戦闘力」の、このフィギュア棚の世界では、無力であった。

「塩ビ製の安物4体で、シリコン製ガレージキットの私達25体にかなうワケないじゃない。あなた達1体なんて、この縞パンよりも安いんだから」


「「「「む、無念……」」」」

 4人で5千円vs25体で50万円、その戦力差は100倍。孔明が策を巡らせても勝てるハズがない。

「ぱ、パンツ以下の値段だと。おのれ、おのれ、ボカロ共め、この恨みいつか晴らしてくれる」

 関羽のフィギュアが血の涙を流しながら、嗚咽する。

「どうやら、それも敵わぬようです。主が我々の処分を決定しました。私以外ですが」

 孔明が残念そうに報告した。


「とうとうこの時が来たか、桃園の誓いよろしく、3名同時に飾り棚から排除されるならば、史実よりも良いではないか。ボカロ達にイジメられるのもヤダし」

 劉備が諦めた顔で、そう呟く。


「これから先は、私一人で、ヤツラの横暴に耐えよと。私も連れて行って下され、殿!」

 孔明が懇願をする。

「いや、決定権ないし」

「一番の有名人だからなぁ。孔明は。三国志知らない人でも知ってるくらいな」

「ミニスカ&縞パンの美少女に囲まれておけばよいじゃないか」

 棚からリストラされる3名が、劉備、関羽、張飛の順でぼやいた。


「持ち主様は、緑髪~青髪まで全てをそろえようとしておりますし、下着のしまパンのストライプの太さだけでも語り出すと1日を超える熱の入れよう。そのような巨大勢力の中に残される私の身にもなってください」

 トホホホと孔明が情けない声を上げる。


 そうこうしているうちに、持ち主の青年が入室してきた。


「くっ個人売買サイトの梱包の箱が来た。かつては個人オークションだったのだがな。3箱か。我ら義兄弟をセット販売せずに、バラ売りするようだな」

 劉備が気づくと、フィギュア棚は空けられ、3体が販売用に撮影された。

「後は、売却を待つのみか・・・南無三」


 翌日、関羽が梱包された。

「劉備兄ぃ、張飛・・・できれば、同じ購入主であることを願って、さらばだ」

 そうして、関羽はメルカリ便で旅立った。

  ---関羽SOLD OUT---


「またもや、関羽からか。皮肉なものよ」

「関羽兄ぃの人気も凄いですからねぇ。関帝聖君を祀る関帝廟とか武廟とか」

張飛ちょうひびょうと我が恵陵と違って各地にあるものな」

「私は定軍山の田舎にひっそりと埋まっております」

「「去年まで、パリピを謳歌していたんだからいいだろうが」」

 孔明が突っ込まれた。


 その翌日、張飛が梱包された。

「これまた、関羽の次は張飛か」

「劉備兄ぃ~、いつかどこかのフィギュア中古ショップでめぐり会おうぜ」

 劉備と張飛は、涙の別れを語り合っている。

「私が入手した情報によりますと、張飛殿は、スクール水着の夏侯三娘(かこうさんじょう)フィギュアの隣に飾るとか何とか書き込まれておりました」

 孔明が最新情報を教えてくれた。

「張飛・・・めっちゃええやん」

 思わず関西弁になる劉備、現状を解説する孔明。

「ボーカロイド達の横暴に耐える未来しかない私からすると夢のようです」

「俺の時代がキター」

 張飛は、ウキウキしながら、幼妻おさなづまの元へ発送されていった。

  ---張飛SOLD OUT---


 孔明と劉備が話す。

「また、我らが残りましたな、殿」

「ああ・・・しかし、俺って張飛より人気ないのかな……」

「いえいえ、殿は趙雲、私、関羽の3強に次いで人気のはずです。張飛殿は数は少ないのですが、一部に熱狂的なファンがおりますので。」

「カルト人気か。全体人気もカルト人気もあるのが3強で、俺は全体人気しかないということか。」

「はっ、おっしゃる通りにございます」


 そうして、持ち主の声が聞こえた。

「劉備が売れねぇな・・・半額セールすっか」


「俺……半額セールかよ。蜀を治めていたのに」

「殿、おいたわしや……」


 さらに、持ち主の声が聞こえる。

「孔明は、プレミア価格で売れるんだけどなぁ。

 もうちょっと値上がりしないとなぁ」


「・・・孔明、裏切ったな」

「そ、そんな。殿、お気を確かに」


ピコーーン!

「おっ、劉備売れた。梱包、梱包」


「俺は、半額から値上がり無しかよ。ちくしょぉおおおおおお」

「ああ、殿の人徳スコアがダダ下がりです」

「もうよい、さらばだ孔明。ボーカロイド達の横暴に怯えながら生活しておけ」

  ---劉備SOLD OUT---


「ああ、殿とのお別れがこのような形とは。悲しゅうございます」


 悲嘆に明け暮れる孔明は、さらにショックを受けた。

 夏侯惇かこうとん君フィギュアの隣に並べられたのは、かつて、お互いに知略を尽くして戦った呉の軍師、周瑜しゅうゆ

「なぜだ、なぜヤツが、あの特等席に座っている」

 さすがの孔明も冷静ではいられない。


 そうして、青緑髪ツインテール悪魔ボーカロイド達が新発売の商品を歌いだす。

「ラーメンは♪ ぶ~とん♪いかとん♪ かこうとん♪」

周瑜しゅうゆラーメン♪ 醤油しょうゆ味♪」


(おしまい)


改定後のタイトルを呼んで気が付いた人も多いかもしれません。

アノ人「達」が覇道を突き進んだんだ。

「達」が加わっておりまする。

 「夏侯惇 & 周瑜」夢の初コラボ?

 え?BLのカップリングであった?

 そうですか……


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― 新着の感想 ―
[良い点] 再掲されたものを読んでみると、かなりイメージが変わりました。 [一言] このフィギィアは何十年経っても再放送される『NHK人形劇 三国志』? しかし『月英』が出るとすると『KOEI 真三國…
[一言] き・・・記憶にない作品W
[良い点] なるほど、夏候惇に続いて周瑜が脚光を浴びたのですか。 どうやらコレクターの青年は、フィギュアと同じくらいにラーメンも好きなようですね。 もしも往年のインスタントラーメン「楊夫人」が今も販売…
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