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最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語♡♡♡  作者: ゆきちゃん
第1章 魔女は英雄を見つけた
1/108

1 魔眼であなたの真実を見た

第3作目の投稿です。

昨晩一旦投稿させていただきましたが、改訂部分が多かったので改めて投稿させていただきました。

申し訳ありません。是非是非、お楽しみください。

 ある異世界~ゴード王国の物語~


 ランカスター公爵家の3女クラリスは、侍女のメイと一緒に城のそばに広がる草原へ、ピクニックを兼ねて花摘みに来ていた。

 

 今、この国は戦時中でゴード王国内に敵国が攻め込んできていた。

 抑撃軍に兵を率いて加わっている父親の公爵からは、「戦争が終わるまで、絶対に城を出ないように」と強く申しつけられていた。


 花摘みの最中、そばに控える侍女はくどくど、くどくど、何度も言った。

「お嬢様。できるだけ早く城に戻りましょう。公爵様にきつく、しかられます。」


「メイ。もう少し待ってください。背の高い草の向こうの方から、とても良いにおいがします。きっと、美しい花々が咲いているに違いありません。」


「仕方がありません。勝手に1人で行ってくださいね。」

 彼女の性格をよく知っている侍女は、反対しても絶対に行くことをよく知っていた。


「わかりました。待っていてくださいね。」

 ずっと続いている緑の草をかきわけながら、クラリスは進んでいた。


「この奥にきっと、たくさん花が咲いているわ。」

 彼女は、良いにおいがする方向をさえぎる背が高い草をかき分けた。


 すると――――


 そこには、一面に美しい花々が咲いている空間が広がっていた。

 ところが、それだけではなかった。


 背のとても高い騎士が仰向けに寝ていた。

 その騎士は顔を両手でおおっていた。


 ところが、草をかき分け彼女が飛び出してきたのに、その騎士は全く気がつかず動かなかった。


「えっ。まさか…」

 クラリスはゆっくり、そうっと寝ている騎士の回りを動き回り確認した。


「やっぱり…」

 騎士は顔を両手でおおったまま、眠ってしまっているようだった


「…………」

 やってはいけないと思った。


 しかし、彼女はどうしてもやってみたい誘惑に勝つことができなかった。


 そして、眠っている騎士がおおっている両手を、自分の手で少しずつ外し始めた。

 やがて、騎士の顔が全て見えた。


 大変苦しそうな、苦難に満ちた顔だった。

 金色のくせが強い髪の毛、目が大きい美しい顔だった。


「泣きながら眠ってしまったのね。美形さん、きっとあなたは泣き顔よりも笑い顔の方が素敵ですよ。」

 クラリスはその顔に引きつけられて、のぞき込む体勢で自分の顔を近づけていった。


 突然、騎士は目を開けて目覚めた。




 気がつくと、目の前にとても美しい娘の顔があった。

 娘はこの国にはめずらしい黒色の髪で、光輝いていた。


 そして、透き通った海のように青い瞳、神秘なその奥にはたくさんの優しい気持ちが感じられた。


「レディ。起していただいきありがとうございました。目覚めた時あなたに見つめられていて、自分が天国にいるのではないかと思うくらい心が晴れました。感謝致します。」


 騎士は心の元気を取り戻して、泣きはらした顔で微笑んだ。

 それは、クラリスが予想していたとおり、とても素敵な顔だった。


「騎士様。大変、はしたないことをして申し訳ありませんでした。私は、ランカスター公爵家の三女クラリスと申します。」


「私の方から先に名乗らないといけないのに、失礼致しました。ゴード王国第3王子アーサーと申します。公爵の御息女でしたか、確かここらあたりはもう公爵の領地でしたね。」


「王子様!!! 御無礼をお許しください。」

 彼女は顔が近いことに気がつき、あわてて後ろのさがり、その場にひざまづいた。


「いえいえ、全く問題ありません。クラリス様、もう戦争は終わりました。我が国の大勝利です。お父上もすぐそばにいらっしゃいます。どうぞ、後についてきてください。」


 その後アーサーは立ち上がった。

 寝ていた時よりさらに背が高く感じられた。


(アーサー様。ごめんなさい。私、知りたいから…………)




 彼女は誰にも言えず秘密にしていたが、美しい青い瞳は魔眼だった。

 その魔眼で真実を見ることができた。


 彼女は彼の後ろ姿を見て心の中を透視した。

 そうして、普通の人には全く見えない、わからないものを見た。


 彼が着ていた甲冑は、既に汚れがきれいに洗い流されていた

 しかし、血がついた跡が、たくさんついていた。


 さらに彼の心の奥をのぞいた。

 彼女は彼が大変苦しそうにしていた理由がわかった。


 クラリスの優しさを感じたからかもしれない。

 歩きながらアーサーが心の中を打ち明けた。


「大勝利をしましたけれど、僕は全然うれしくありません。考えたとおりに軍を指揮し思いどおりに敵国の裏をかき、勝利しました。ですが、最後はたくさんの人が剣に切られ矢に射貫かれて命を落しました。僕には、彼らの死を彼らの家族が聞いた時の絶望が目に浮かびます。」


「…………あの、王子様。少しお待ちください。目がとても痛い。何か入ったようです。」


「あ、大変です。私が見て差し上げます。」


 彼は急いで彼女のそばにかけより、身長を合わせるようにかがんで彼女の顔をのぞき込んだ。


 すると、クラリスはアーサーの顔を両手で引き寄せた。

 一瞬、唇が合わさった。


 彼女はすぐに彼の顔を離して、優しくて強い口調で彼を励ました。


「アーサー王子。今日、初対面でございますが、(たみ)のうわさは存じております。神から惜しみないギフトを与えられた知略、武芸全てに全能の英雄。やがて英雄がこの世界から戦いを終わらせ、全ての人々に幸せをもたらすだろう――」


 さらにクラリスは続けた。


「やり遂げることができるのは、この世界の中で御身しかいません。とてもつらくて悲しいとは思いますが、進むしかないのです。」


 アーサーは、はっとしたような顔になり、再び魅力的な笑顔になり何回もうなづいた。

 そして前を向き再び歩き始めた。


 クラリスもその後について歩いた。


 最後に丈の高い草を抜けると、最初に彼女がいた場所と反対側の草原に出た。

 彼女の前に驚くべき光景が飛び込んできた。


 何万人の大軍勢が全てひざまずき、アーサー王子を出迎えていた。

お読みいただき心から感謝致します。


※更新頻度

最初は内容をしっかり検討させていただくためのお時間をいただきます。

週1回、日曜日午前中です。





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