たまには悪役令嬢から婚約破棄してもいいわよね?
悪役令嬢。
元の世界で何度もその言葉は聞いたことがあった。
最後はバッドエンドまでがお約束。
何とも可哀想な役柄なのだろう、といつも思っていた。
だが、まさかその悪役令嬢に自分が転生するだなんて……。
私のここでの新たな名前はソフィア。
何とも優しそうな雰囲気のある名前なのだが、実際そんなことはなかった。
私が転生するまえのソフィアという子は親の脛をかじって周りに暴言を振りまいている子だったらしく周りからは嫌われていたらしい。
何故そう分かるのかと問われれば彼女の日記に書いてあったからだ。
「今日も皇太子のことを虐めてやったわ」
とか本当にくだらないことだと思う。
でも、読み進めていくうちに私は気づいた。
あ、この子、皇太子のことが好きだったんだ。
うん。間違いない。
だってやる虐めの方法が可愛いんだもん。
自分と一緒に倉庫に閉じ込めるとか、ちょっと期待しちゃってるよね?
でも、日記を見る限り、あまり皇太子からの反応はよくない。
たぶん、これ嫌われちゃってるわ。
あー可哀想。皇太子も罪な男ね。
と、部屋で日記を読みながら思っているとドアが開いた。
「ソフィア様。お食事の時間です」
「お食事?」
ああ。ご飯のことね。
いちいち、めんどくさい言葉を使わないでほしいな。
それにしても何なんだろう。
この世界に来てからの始めての食事か。
服とかは基本的に元の世界と同じだから、食べ物も同じだといいんだけど。
虫とか出てきたら絶食するから。
「ソフィア様」
「ああ。分かった。今行くわ」
私は立ち上がりながらそう答えた。
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「本日は隣国のヘルベルト国産の肉を使った料理となっております」
へえ。全然わからないけど凄そうね。
というか、前に座っているイケメン誰?
「ほら。どうして今日は静かなの? ソフィア。
皇太子様と結婚したいんでしょ?
もっとアピールしなきゃ」
そう話しかけてくる横に座る女性の人。
この人も誰か知らないけど、たぶん話し方的に私のお母さんなのかな?
となると私はやっぱり皇太子と結婚したがってたってことか。
うん待って?
今の話し方だとこのイケメンが皇太子!?
「あなたが皇太子?」
「そうだが」
やっぱり。へー、なかなかいい趣味してるじゃない。
でもね、私のタイプじゃないんだわ。
確かに世間一般から見ればイケメンだよ?
でも、私は好きじゃない。ナルシストそうだし。
「……なあ、ソフィア」
皇太子が私のことをじっと見つめてる。
あ。そっか。私がソフィアか。
「はいはい。ソフィアです」
「……婚約してくれないか?」
「は?」
ちょっと待って。何婚約って?
いや知ってるけど意味わからないんですけど。
だって日記見た限り絶対私のこと嫌ってたって。
うん。絶対。確信もっていえる。
怪しい。何か裏あるって。
よし、ここは様子見だ。
「どうして? どうして私と婚姻したいの?」
「どうしてって言われても……」
え? 何でそこで詰まるの?
婚姻って人生の一大イベントだよ?
そんな適当に理由もないのにホイホイいうことじゃないよ?
すると、私はあることに気が付いた。
皇太子の目の奥ニヤニヤしてない?
あ、分かった。
私が転生するまえのソフィアだったら絶対オーケーしてる。
だからきっとそこで、婚約破棄することで今までの恨みを全部晴らそうとしてるんでしょ?
そうだ。絶対。
許さん。
「お断りしま……」
いや、ちょっと待って。
これだと、皇太子はただ告白して振られた人だけで終わってしまう。
うーん。
何かもったいない気がするんだよな。
だって私の運命狂わそうとしてたんだよ?
これじゃあ、あまりにも優しすぎる処罰じゃない?
もう少し、懲らしめてやりたい。
あ、そうだ。
「いいわよ」
「本当か。よかった。それじゃあ、来月に式をあげることにしよう。
いやー。本当に嬉しいよ」
はいはい。いりませんから、そういうの。
もう分かりやすいの。
どうせ来月っていうくらいだから今月末くらいには婚約解消して、そのことをまわりに言いふらして私に恥をかかそう、という寸法てしょ?
なら、話は早い。
それより前に私が婚約解消すればいいだけのこと。
きっと皇太子は自分から婚約解消を私に申し出た、と大々的に伝えるために多くの人にたった今婚姻したことを言いふらすはず。
ならそれが終わったころを見計らって婚約解消すればいいんだわ。
私って天才!
「ええ。楽しみにしてるわ」
私の名演技に皇太子も見事騙されている。
ドンマイ。ドンマイ。
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一カ月ほどたった。
この間にも、皇太子は私に全く触れようともしてこなかった。
普通、婚約したんだから、するべきだと思うんだけど。
やっぱりおかしい。
婚約解消するつもりなんだわ。
よし、今日にしましょう。今日がいいわ。
あまり、遅すぎても先に越されてしまう。
それだけは避けないと。
あ、あそこにいるのは皇太子!
「皇太子様」
「ソフィアじゃないか」
「あの、お話が」
「実は僕もなんだ」
「「……婚約解消してくれないか」」
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