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東日本戦記  作者: 繧繝
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玲和の先見 3

「そのことなんですが...」と鳥羽が言う。

「どうやら、大阪に総理大臣が、あの東城英機がいる可能性があるのです」


「大阪に?あの東城英機が?」葉山が訊く。


「自衛隊員が西日本で読んだ新聞には、地震による混乱を収めるため首相自ら西日本に乗込み、諸々の政務を取り仕切っていると書かれていたそうです。だから国民は安心して過ごせとまぁそんな内容だったと」


「首相自ら?大阪に?そんなに被害を受けたのか?」


「いや」と西馬が割って入る。「そもそも地震によって我が国は東西で“分裂”しています。まぁ地震と東西分裂の因果関係は証明されているわけではありませんが、この推測はほぼ確実に当たっているでしょう。

つまり、地震の後に東城が東京を出て大阪入りすることはできないのです。

ただ単に東城はあの日西側にいたせいで東京に帰れなくなった。

電車が、東海道線は今動いてませんから。東西の裂け目で線路が切断されてるので。

それで帰京できなくなったからとりあえず大阪にいるだけだと思います」


「...要するに東城はたまたま西日本側にいたせいで我々側の時空に来てしまったと、君たちの分析はこういうわけだな?」


「はい。そしてその根拠というほどではないんですが、照和17年12月12日という日に東城が西側にいた記録が残っているんです」


「ほう。そこまで細かく残っているものかね」


「この日がたまたまですよ。

あの地震の日、照和17年12月12日、東城は照和皇帝と共に、太平洋戦争の戦勝祈願のため三重県伊勢神宮を訪れています。

彼らの時空の今年、照和17年は4月に初の本土空襲、6月には以後の流れを変えたとされるミッドウェー海戦があり、戦況は悪い方に傾いています。

そのため皇帝と首相揃っての参拝となったようです」




その後も数々の報告を受けた首相は、この事態の終結のため極秘に東城らと会うことを決めた。



照和の西日本をこのまま放っておくわけにはいかない。

西日本の人々は“今”が戦争中だと思っている。

西側には武器を持った日本兵も大勢いるし、なにより、東西境界付近では既に西側の住人がこちら側に来ている報告が上がっている。

このままでは混乱は避けられない。事態の打開は早急に行う必要がある。


そのような状況で、彼らのトップ、つまり皇帝と首相が西日本側にいたのは好都合だった。

彼らの指導力は必要だ。もし彼らがいなければ、西日本の“統一”はかなり時間を要するだろう。

そうなればこちら側にも被害が出るのは間違いない。


葉山は、日本国と日本国民の平和を保つために、東城にこの奇異な事態を可及的速やかに把握させる必要があることを強く自覚した。


12月13日午後1時32分。

全ての報告を受けた葉山は西日本の統一を決意する。


そして自衛隊はこの数時間後、大阪で東城らとの会談を望む葉山の意思を伝えるのだった。

これで自衛隊の大阪派遣の理由を説明する「玲和の先見」編は終わりです。

次話は12月14日午前8時の自衛隊ヘリ大阪到着以降の話になります。

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