玲和の先見 1
前話の前日の話です。
何故自衛隊ヘリが大阪に派遣され、東城がいることを知っていたのか、「玲和の先見」編です。(と言っても、たぶん2か3くらいまでしかありませんが)
中部軍管区庁舎に自衛隊ヘリコプターが降り、東城らとの接触を図る前日
※※玲和元年12月13日午前11時 日本国 東京 首相官邸 閣議室※※
昨夜、首相葉山は殆ど眠れなかった。
嫌な寒気のせいである。
日本に何があったのかすら分からない恐怖が彼を眠らせはしなかったのだ。
昨晩自衛隊による調査を命じた。そろそろ調査結果が入ってきてもおかしくない。
(これで少しでも何が起きたのか分かれば良いが...)
葉山はそう願わずにはいられなかった。
「首相!!失礼します!!穂坂です!」
「入りなさい」
「失礼します」
首相補佐官、穂坂が入ってきた。
「何か分かったか?」視線を上げるとそこには、穂坂の他に3人いた。
統合幕僚長の鳥羽と防衛大臣の小窪。
そしてその後ろには明細服を着た首相の知らない人物。
「...防衛省トップが二人も揃って...一体どうした?
あ、いや、とりあえず座ってくれ」
(あの表情...ただ事ではなさそうだ。
まさか本当に電磁パルス...?
いや、それは違うはずだと昨日話したか...じゃあ別の何か?
新兵器か?戦争なのか?)
腰を下ろす間に葉山は頭を巡らせる。
「首相。事態は戦争より厄介かもしれません」統合幕僚長の鳥羽が告げた。
「というと?」
「こちらを見てください」首相の知らない人物が言う。
「君は?」
「すみません、まだ紹介してませんでしたね。こちらは防衛省情報本部本部長の西馬です」鳥羽が紹介する。
「西馬です。首相こちらを」
そう言って西馬が見せたのは、何枚かの大阪の航空写真だった。
「これがどうかしたのかね?」
「それでこちらが先月撮影した大阪です。撮影高度や場所が違うので分かりづらいのですが、埋立て地の辺りをよく見比べてみてください」
葉山首相はじっくりと写真を比べ、そして言った。
「埋立て地が消えている...?」
「そうです!」と小窪。「首相、大阪湾の、関空や夢洲、神戸空港もないんです!」
「ここまで消すとは、核か!?核兵器が使われたのか?どこの国だ!?」と驚く葉山。
「いえ...実はそうではないようなんです。」
「?...というと?」
「先ほど撮影した写真の拡大版をご覧ください。こちらのここ、ここは川先重工の神戸造船所です」
「...ここは残っているようだな、そうか、敵の攻撃ならここを残すのはおかしいな。この造船所といえば、確かうんりゅうとかの潜水艦を作っている日本防衛戦略の要だったはずだから...」
「はい。その通りです。そしてこの神戸造船所のドッグのここ...」
葉山が写真を除込む。
「...船があるな。この船は...なんの船だ...?」
「空母です。形から見て、大鳳型の空母だと思われます」
「たいほう...?」
「はい」
「我が国は空母など法文上は作っていないが...いやまぁそれはともかく...空母もとい、いずも型護衛艦は今、横須賀と呉に配備中ではなかったか?この写真は神戸だろう?」
「いえ...ですから、これはいずも型護衛艦ではありません。大鳳型空母です」
葉山は困惑する。
鳥羽が口を開く。
「...首相、驚かないで聴いていただきたいのですが、様々な事情を考慮したところ、現在の西日本は戦中の照和17年のようなのです」




