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東日本戦記  作者: 繧繝
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照和の困惑

構成上時系列が前後していて、読まれている方には分かりづらいと思うのですが、地震が起きたのは12月12日、初話「玲和の夕刻」で首相が記者会見をしているのは12月15日です。

前話で自衛隊が中部軍司令部庁舎に紙を撒いたのは12月13日夕方で、今回の話はその翌日の12月14日の話となります。

分かりづらくて申し訳ありません。

※※12月14日午前7時55分 日本帝国 大阪府 大阪市 中部軍管区庁舎※※


中部軍管区庁舎は大阪城内にある。

元々は第4師団司令部が入っていたが、昨年照和16年から中部軍司令部が使っている。


中部軍は中部地方西部から中国地方東部までの中部防空管区の広域防衛の指揮計画と徴兵、動員の事務などを行う大規模組織である。その上位機関には皇帝直属の防衛総司令部が存在する。

司令部庁舎の重厚な外観は、ヨーロッパの古城のような堅牢さを見せつけていた。


今日その庁舎の前には警備の兵隊がたくさん並んでいる。


警備の兵隊らはまもなく来るであろう人が何者なのか知らされていない。ただ、基本的に撃ってはならないが向こうが怪しい動きをしたらすぐに仕留められるようにという難しい注文だけは伝えられていた。


今のところ自衛隊なる組織の存在は昨日自衛隊隊員を捕縛した岐阜の小隊と、この中部軍関係者しかいない。



「そろそろ来るはずだが」東城はその堅牢な司令部の中で呟いた。

(自衛隊とは何者で、あの地震は彼らによるものだつたのだらうか。

昨日はあれ以外にも各地で空襲警報が鳴つてゐる。去年4月に各都市を襲って以来の大規模な本土空襲...。

しかし我が国にはなんの被害もなく、報告によれば敵機はすぐに去って行つたらしい...不可解なことが多すぎる...)東城は独り考えていた。




突然空襲警報が鳴る。

誰かが敵機を確認したのだろう。


「来たか...」と東城。

警備に当たっていた日本軍の兵隊は皆司令部の中に逃込(にげこ)む。



その警報音の中で重低音が響く。

ヘリコプターのローターの回転音である。


もっともこの時期ヘリコプターは既に初期のものが開発されていたが、その姿を実際に見たものは少なく、その音を聞いてヘリコプターを連想できた兵はここにはいなかったが。


ヘリコプターは急降下している。



「何か放送されてないか?」司令部警備にあたっていた中原は近くの同僚に尋ねる。

「空襲警報だらう?」その同僚は応じた。

「いや、違ふ。よく聴いてみろよ」




「━━━━━━です」

確かにヘリコプターから声がする。

もうヘリコプターはすぐそこまで降りてきている。

「━━━敵意はありません」




数分して庁舎の陰から外を窺う中原はそこで、見たこともない重厚な機体と、良く見知った国籍マークを見た。

「あのマークは...白地に紅い丸......あれは我が帝国の...新兵器なのか?ならばなぜ警報が...?」



「我々は日本国自衛隊です。敵意はありません。繰り返します。敵意はありません」

そう告げるヘリコプターはもう浮いてはいない。着陸を終えていた。



呆気に取られながらヘリコプターを見る中原の周りに他の警備兵らが集まってきた。


「なんだあの機械は...」

「それにあのマーク...」

「日本国自衛隊と言つたように聴こえたぞ」

皆が口々に言う。一様に不思議そうな顔をして。



プロペラが完全に止まり、放送がよく聞こえる。

「我々は日本国自衛隊です。敵意はありません。繰り返します。敵意はありません」


そのヘリコプターUH-60Jは続いて

「我々はあなたたちと同じ日本人です。これから外に出ますが撃たないでください」と告げた。



ヘリの扉が開き、中から迷彩服とスーツを着た人が出て来た。

鞄を持ったまま2人とも両手を上げている。

続いてもう1人、明細服の男が降りてきた。



帝国陸軍一等兵中原はそれをぼんやりと眺めていた。

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