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東日本戦記  作者: 繧繝
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照和の覇者

※※12月13日夕方 日本帝国 大阪府 大阪市 中部軍管区庁舎※※


首相兼陸軍大臣・東城と、憲法上統治権の総覧者とされている皇帝・博仁(ひろひと)は、大阪の軍庁舎にいた。


彼らは昨日の神宮親拝の後帰京する予定だったが、昨日の地震で鉄道が動かなくなってしまったためである。


軍管区庁舎の職員たちは雲の上の存在とも言える彼らの突然の来訪を、驚きと畏敬の念を持って歓待した。



そんな矢先のことである。

けたたましくサイレンがなる。


空襲警報だ。


それから1分も経たない内に上空から音声が聞こえてきた。

「━━━━す。━━━日本━━━隊━す。━━━━━━━━せん」



その後庁舎の軍人たちは、空中から降ってきたと思われる紙を確認したのであった。




空襲警報が止み、東城たちのもとにも報告が上がってくる。

中部軍司令官が話す。

「申し上げます。

先ほどの空襲警報の相手ですが、彼らは“日本国自衛隊”を名乗つてゐました。

正体不明の相手でしたが領土防衛のため零戦による防空措置を執つたのですが、情けないことに、彼らの航空機は非常に速く全く当たらなかつたさうであります。信じがたいことですが、その速さは米軍よりも速いと報告されてゐます。

その航空機からの放送では繰り返し敵意がないことを伝へてをり、実際被害はありませんでした。

また、こちらが彼らが落とした紙であります」


そう言って軍司令官は東城に紙を渡した。


紙にはこう書いてある。

「我々は日本国自衛隊である。そちらに対する敵意はなく、伝へたいことがあつたため航空機を使つた。驚かせてしまつたことを御詫びする。

我々は大阪にやんごとなき地位の方がいらつしやつていることは把握している。

明朝8時、我々は再びそちらに参るのでその御方々と会談させてほしい。危害を加へることはないと約束する。

これは帝国存亡の危機を乗り越へるための唯一の手段である」



紙を見た東城は言う。

「米軍の撹乱か...?それとも軍のクーデター...?

このやんごとなき地位の方とは恐らくは皇帝陛下のことであらう。彼らは何故それを知つてゐて...そもそも自衛隊とはなんなのだ?」


「全くわかりません」軍司令官は困惑した顔で言う。


後ろで聴いていた皇帝が言った。

「その自衛隊とかいふ飛行機が米軍より速かつたといふのは本当ですか?」


「!

(おそ)れながら申し上げます。

零戦乗組員の全員がさう言つてをるのです。ひとりふたりなら妄言と切捨(きりす)てるのですが、10数機全ての隊員がさう言つてをるさうで...また地上から高射砲で敵を殲滅せんとしていた者たちが言ふには、速さもさうだが、敵の飛行機にはプロペラが付いていないやうに見えたと...零戦の乗組員員の何人かもプロペラがないことを確認したと...」軍司令官が戸惑いながら話した。



そこに電報が入った。

中身は以下の通り。

「ニツポンコクジヱイタイトナノルモノコシ

カレラニホンジンニミユ

ワレラトリアエズホバクセリ

タイワウコフ」



「自衛隊を捕縛したとのことであります。これは岐阜の各務原陸軍飛行場からの電報ですね。対応を乞うてをります。如何いたしませう...」と軍司令官。


中部軍管区は岐阜もその統轄区域に含むため彼らは電報を寄越したらしい。


「また自衛隊か?我が国にそんな組織などないはずだが?

米軍より速くプロペラのない飛行機を持つというのは流石に事実でないだらうが...正体不明の飛行機を持つ正体不明の組織か...。

そんな組織がいきなりできるはずもないし...何がどうなつてゐる?」東城は不思議そうな顔をしている。


また電報が入る。今度は国鉄からだ。


「シヅオカシヨリサキ ミタコトモナイコウケイナリ

デンシヤカイツウマダサキニナルコトウタガヒナシ」



「“見たこともない光景”といふのはどういう意味だ?

東日本は先の地震で壊滅したといふのか?

まさか米軍の新兵器ではあるまいな...いやそこまでの兵器なら大阪になにもしてこないわけはないか...」東城はブツブツと呟いてゐる。

「とりあえず電車の開通にはまだかかるやうだし、東京の様子も分からない。

帝都が壊滅などあつてはならないことだが、政治の遅滞は許されないし、私はしばらくこの大阪で政務を執らうと思ふ。軍司令官、各県各軍にその旨を電報しておくように頼む。

...それにしても自衛隊か...明日奴らはまた来るのだったな?

皇帝の代はりに私が応対しやう。勿論敵の武器は全て没収した上での会談だし、奴らの目的を知る必要がある」

「照和」と表記しているのは、モデルの人物と過剰に同一視されるのを防ぐためです。

同様の理由で「皇帝」「東城」となっています。

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