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東日本戦記  作者: 繧繝
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玲和の夕刻

フィクションです。

※※玲和(れいわ)元年12月15日 日本国 東京都 千代田区 首相官邸※※


日本国内閣総理大臣・葉山新三が壇上に進む。


明滅する画面。

報道局のカメラが一斉にフラッシュを焚いた。


国内の全てのテレビが今、葉山を写している。

おそらく全国民が。比喩や誇張ではなく全国民が。今テレビを点けている。


液晶の中で首相が語り出す。

「本日は国民の皆様に極めて重大な話をしなければなりません。これは国家の非常事態と言えるでしょう。

どうか落ち着いて聴いていただきたい。

...諸々の調査の結果、我が国は東西に分裂したと言わざるを得ません。ただ詳しいことは目下調査中であり本日は事実を共有するのみに留めたいと思います。

皆様既にご存知と思いますが、長野県以西の地域と現在連絡をとることができません。今までは噂だけの情報であり、国民の多くが本気で取り合ってはいなかったと思いますが、西日本の消失は事実であります。

これは政府の公式見解です」


葉山の顔は筆舌しがたい表情を浮かべていた。


「━━━しかし、事実はそれだけには留まりません。

空撮やその他の調査により、さらに驚くことが判明いたしました。

私も今から申し上げることが事実であるとは到底信じがたいのですが、消失した西日本地域はどうやら終戦前のそれと“入れ替わって”しまったようなのです」



その後の会見で首相は写真など様々なものを取出し、この西日本消失が本物であることを裏付けた。


それでも国民の大多数は、首相の言葉を全て信じはしなかった。


それは別に政治不信のせいではなかった。

むしろ信じろと言われて信じる方が無理があるというだけの話だった。


国民は信じこそしなかったが、それでも首相が狂ったと考える者は少なかった。


それは皆が肌で得体の知れない何かを━━━違和感を既に感じていたからかもしれない。


いずれにせよ国民はまだこの現状を十分に咀嚼できていなかった。



首相は続ける。

「━━━因果関係は不明ですが、3日前12月12日の国土全土を震えさせる地震の後にこの事件が発生したため、政府としては何らかの関係があるものと考えています」


その後は今後も落ち着いて日常を続けてほしいことや、西日本への立入を一時的に禁ずる旨、そして一番重要な今後の見通しを話して会見は終わった。


テレビの前の人々は底知れない恐怖と嫌な寒気、それだけははっきりと感じていた。





※※照和(しょうわ)17年12月12日 日本帝国 三重県 神宮・内宮※※


歩きながら訊ねる。

「東城、ぼくはどうすべきだつたのだらうかね。

あのときはああするしかないと思つてゐたけれど、ぼくは意地でも止めるべきだつたのだらうかね。

今ぼくらは皇祖神さまにお祈り奉つたけれど、ぼくが臣民にできることは他に何があるだらうかね」



後ろに仕える彼は、東城は、泣いていた。

彼がこのとき何を思って泣いたのか、それはまだ誰も知らない。


その東城は泣きながら言った。

御宸襟(ごしんきん)を悩ませてしまつたこと、この東城、大変申し訳なくお思ひ申し上げる所でございます。御軫念(ごしんねん)あそばすこの事態を一刻も早く打開するために━━━」


彼らは、ちょうど神宮の橋に差し掛かろうとしていた。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ....


━━━突然轟音が地を這って辺りの空気を震わせる。


「陛下!!!!」


周りの者たちの叫び声。



皆が空襲かと思った。


今年4月、帝都を襲った敵機のエンジン音が思い出される。


皇帝の伊勢親拝も敵に知られないように極秘に進めてきたことなのに、まさか察知されていたとは━━━。


皆の脳裏に緊張が走る。



━━━しかしそれは空襲などではなかった。



その数分間に及ぶ轟音と地鳴りはやがて収まった。


「なんだつたのだらう」と皆が口々に呟く。



━━━地震にしては異質にも感ぜられたそれ。

そしてそれに対応するように生じた変化について、今の彼らはまだ知らない。


彼らも東京と同様、しばらくの後に彼らが新世界へと転移されたことを知るのだった。

はじめまして。

繧繝と申します。

がんばって書きますので、どうか応援してもらえませんか。もし応援してくれたらとても嬉しいです。

プロローグの残りの部分は割とすぐに投稿します。

覚えてたら読みに来てください。

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