表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乞食姫と呼ばれた王女  作者: 大介
第1章 孤児院の改革
8/62

洗脳された子供達

エリーがお城に来て1年以上経つのですね。


エリーがお城にいるだけで世界が変わったみたいです。

輝きが私を癒してくれるのです。

見ているだけで幸せなのです。


私が探していた綺麗な色は彼女の事かもしれません。

そんな風に考えてしまう程、エリーが大切な、本当に大切な友達なのです。


「エリー、今日は勉強が休みですよね?久しぶりに孤児院を見に行きませんか?」

「そうですね。どうなっているか気になります。連れて行って下さい」


孤児院には顔馴染みもいるでしょう。

エリーは楽しみで仕方が無い様ですね。


馬車で孤児院に向かいます。

馬車から下りたエリーは暫く声を出しませんでした。


「これ程の状態になっているのですか…。あまりに凄すぎて、言葉では表現出来ません」

「さあ、中に入りましょう。エリーが覚えている方もいるでしょう?」


「はい。会って話してみたいです!」

「それでは中に行きましょう」


エリーは興味深々といった感じですね。

感情の色が様々に輝いています。


「エリー、知っている方を見つけたら話してきても良いですよ」

「分かりました。話に行ってきます」


私達はクリスタの元に向かいます。

「クリスタ。孤児院の現状はどうですか?何か問題はありませんか?」

「はい。スラムから来た方達は護衛騎士を目指すべく訓練していますし、ケヴィンも子供達と仲良く遊んでくれています。それに彼が中にいれば安心でしょう。近衛騎士ですから様々な面でとても優秀で助かっています」


私の判断は間違っていなかった様です。

そんなケヴィンが突然外に飛び出しました。


彼は子供達の相手をしながらも常に警戒を怠っていないのです。

さすがだと思いますがそんな彼が飛び出したのです。

何かがあると思った方が良いでしょう。


ケヴィンが1人の男を捕縛してきました。

「王女様、クリスタ。この男が孤児院を監視していましたので捕縛しました。今後の対応をお願いします」

「分かりました。部屋を用意します。王女様、お願いします」

「任せて下さい」


部屋に入り、男は椅子に縛られました。

「彼を話せるようにしてあげて下さい」

「かしこまりました」


早速といった感じで男は話し始めます。

「俺はただ立派な建物を見ていただけだ。捕まえる事は無いだろ」


嘘ですね。

貴族から指令を受けている可能性が高い気がします。


「あなたが正直に話せば命は取りません。どうしますか?」

「だから、俺は建物を見ていただけだって」


プロ意識でしょうか?

簡単には話す気にはなりそうもありませんね。


私は領を順番に告げます。

「バルツァー領、アーベライン領、ファクラー領、フンボルト領、インメル領」


なるほど。

「インメル領の貴族から依頼を受けましたか。話しませんか?まだ間に合いますよ?」


かなり焦りが出始めましたね。

表情を変えないのは流石ですが心の中までは隠せません。


見破られていると思ったのでしょう。

直ぐに対応を変えました。


「ちょっと待った。本当に間に合うんだな?嘘じゃないな?」

「ええ。私はこの国の王女です。そうですね、孤児院で仕事をして頂きましょう。子供達の相手をするのでも、周りの警戒をするのでも構いません」


不安が見えますね。

相当の相手からの依頼の様です。


「仕事に不満は無い。ただ俺が仕事をしていないのが分かったら確実に暗殺されちまうんだよ」

「それ程の相手ですか。分かりました。あなたに依頼した貴族は必ず極刑にします。バルツァー領の貴族と関係者を極刑にしたのは私です。これならば安心でしょう?」


少しは安心して頂けた様です。

これで話して頂けるでしょう。


「分かった。俺の名はホルスト。その情報は知っているから、まさか王女様が取り組んでいるとは思わなかったよ。依頼内容は孤児院を燃やす事だ。だが出来なかったよ。子供達は笑顔だし勉強も一生懸命にしていたしな。だがインメル侯爵家はヤバいんだ。俺は仕事を受ける前に相手の事を調べるんだが、あそこは300人以上の孤児を強力な薬で洗脳している。何に利用するつもりか分からないが自分達以外を人間だと思っていない。それに100人以上の私兵を隠している。仕事を拒否したら、俺もその場で殺されていたよ」


嘘は言っていませんね。

情報の内容が酷過ぎます。

その様な事をしている貴族がいるとは…。


絶対に許しません。

「分かりました。ホルストはクリスタの指示で仕事をして下さい。私は直ぐに対応します。お城に戻ります。アンナ、エリーを呼んできて下さい」

「かしこましました」


馬車の中でエリーに話しかけます。

「突然お城に戻る事になってごめんなさい。楽しめましたか?」

「はい。皆が幸せそうで、少しだけ羨ましかったり…」


なるほど。

訓練プログラムがきつくて孤児院で勉強をしたいのですね。


満面の笑みで告げます。

「エリーの教師はヒルデです。これは決定事項です」

「ですよね…。分かっていました」


そんなに悲しい顔をしないで下さい。

気持ちはとても分かりますが頑張って下さい。


お城に戻るとエリーと別れ、王の間に向かいます。


「お父様、お母様、大変な情報を得ました。インメル侯爵家が孤児300人以上を強力な薬で洗脳して待機させています。さらに私兵を100人以上隠しています」

「なんだと!緊急事態だ、直ぐに出兵をするぞ」

「強力な薬で洗脳ですか…。手と足を縛り口を塞いで私の実家に送る必要がありますね。一度ここの訓練所に集めて下さい。睡眠薬などの準備をする必要がありますし、私の実家を知られる訳には行きませんから」


お母様の実家は諜報関係の仕事を専門に請け負う特殊な家系です。

国家機密の中で最高機密扱いです。


家族とお母様の専属護衛騎士以外は場所を知りません。

お母様は近衛騎士の1人に声をかけます。


「300人以上を実家には運べるように準備しなさい」

「かしこまりました」(専属護衛騎士)


お父様は出兵の声を上げます。

「薬で洗脳されている子供達は必ず保護しろ。騎士300人と衛兵300人で私兵と侯爵家の関係者を皆殺しだ。今すぐ出兵の指示を出せ」

「かしこまりました」(近衛騎士)


「お父様。貴族は孤児院と私を目の敵にしています。孤児院の防衛を強化して下さい」

「そうだな。子供達が遊べ大人達が訓練出来る範囲を残して壁で囲う。検問所を作り常に騎士に守らせよう」


そこまでしたら安心ですね。

必要な経費は全て潰した貴族の財産です。

問題は何もありません。


王都民からも勉強したいと言う声が上がっていますが、それだけ施設が充実しているのです。

気持ちは分かりますし、最終的には王都民も勉強出来る様にするつもりで改築されているのです。


クリスタが、改築が始まる前に要望書を提出してくれましたので対応出来ました。


彼女は本当に優秀です。

目の前の仕事だけではなく、部下を使い孤児院の外の声も拾っているのです。


出兵してから5日経ちました。

縛られた子供達が訓練所に集められていきます。


薬が切れているのでしょうか?

物凄い呻き声を上げています。


「これほど酷いとはね。かなり強い薬を使われているわ。何て事をしているのよ、同じ人間にする事ではないわ。子供達に睡眠薬を投与しなさい。かなり苦しいはずよ。直ぐに眠らせてあげなさい」

「かしこまりました」


お母様が本気で怒っているのは見た事がありません。

それほどの惨状です。


これは何でしょう。

人にする事ですか?


こんな事をしたいから私や孤児院の改革が邪魔なのですか?


狂っています。

本気で理解出来ません。

何故自分達と孤児が同じ人間だと思えないのでしょう。


貴族は運が良くお金を持っている家に産まれただけ。

孤児は運が悪く孤児院に行く事になっただけ。


王族だってそうです。

人が産んでいるのです。


こんな残酷な事を平気でする。

貴族がそのつもりなら、私も自分の権力を使い徹底的に対抗します。

王国では私兵を持つと極刑です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ