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第6章 「准佐の私が贈る言葉」

「御無事で何よりです!昨日の『怨霊武者掃討作戦』では、本当に目覚ましい御活躍でしたね!」

 宿直室をチェックアウトしてルームキーも返却し、そのまま1階エントランスから支局ビルを出ようとした私達。

 それを呼び止める声と、慌ただしい足音が聞こえてくる。

「あっ、(ゆう)ちゃん!」

 随分と親しげだね、京花ちゃん。

 京花ちゃんの顔馴染みという事なら、私も知っていそうだけど…

「あれ…君は…?」

 私達の前で立ち止まったのは、まだ中学に上がったばかりと思われる、あどけない少女だった。

 ピンク色の髪を肩までのセミロングにして、白いヘアバンドをしているのが印象的だ。肩からスリングで吊るされた銃剣装備のトレンチガンが、この子の個人兵装のようだね。左肩の少尉の階級章の上には、「研修中」の札が付けられている。今年の3月に養成コースを修了した子かな。

 でも私、この子に見覚えはないんだよね…

「はっ、吹田千里准佐!自分は、此花悠(このはなゆう)少尉であります!自分の学籍は堺市立御幸通中学校1年3組であります!」

 踵を打ち鳴らせて姿勢を正した少女が、よどみのない声で行う自己紹介。御幸通中学校という事は、B組の淡路かおるちゃんの後輩に当たるみたいだね。

 そして、私は向こうを知らなくても、向こうは私を知っているんだね。

「お疲れ様です、此花悠少尉。私は堺県立御子柴高等学校1年A組、吹田千里准佐です。」

 此花悠少尉の気合いが入った捧げ銃の敬礼に、私も答礼で応じる。姿勢は正しく、それでいて上官らしい余裕を含んだつもりだけど、このニュアンスが伝わっていたら嬉しいんだけどな。

「紹介するね、千里ちゃん。この子は此花悠ちゃん。一昨年から去年にかけて、市立方違小学校からスクールバスに乗っていたので、護衛同乗勤務をしていた私達とも顔馴染みになった子なの。」

 なるほど。そのタイミングで、京花ちゃん達から私の事を聞いたんだね。

「自分は今年の春、正式の特命遊撃士として配属させて頂きました!今はまだ研修中の身の上ですが、昨日の皆様のような特命遊撃士になれるように、努力する所存です!」

 京花ちゃんの説明に此花悠少尉が続く。

 一昨年から昨年にと言えば、ちょうど私が作戦中に受けた重傷が原因で昏睡状態だった頃だね。それなら、私の方に見覚えがないのも仕方がないよね。

「そう言って貰えると、ホントに嬉しいよ。でも、昨日の『怨霊武者掃討作戦』だと、第2支局に所属する全ての遊撃士と曹士には、動員がかかっていたと思うんだよね。差し支えなければで構わないんだけど、悠ちゃんは昨日、どこの配置についていたか、教えてくれないかな?」

「はっ、吹田千里准佐!自分は、避難民の誘導及び、避難所に指定された御幸通中学校の警護を担当させて頂きました!」

 素直だよね、悠ちゃん。まあ、私が4階級上の上官だから無理もないけど。

 思い起こせば研修生時代の私も、「上級大尉以上の先輩達は全員、雲の上の人。」みたいな認識を持っていたなあ。

 それで、いざ自分が准佐になってみると、「上級大尉といっても、まだまだ可愛いお子様。」って感覚になっちゃうから不思議なんだよね。

 この感覚を民間人の子達にも伝わるように例えるなら、「小学生の時は女子高生が物凄く大人びたお姉さんに見えたのに、自分が高校進学したら、女子高生って意外と子供っぽい。」って所かな。

「ほら…悠ちゃんだって、立派に特命遊撃士としての役割を果たしているじゃない。避難した人達の事を、悠ちゃん達がしっかり保護してくれているから、私達は安心して戦えるんだよ。悠ちゃんは既に、立派な特命遊撃士だよ。これからもよろしく頼むね、此花悠少尉!」

 このように言い終えた私は取り敢えず、悠ちゃんに右手を差し出したんだ。

「はい…ありがとうございます、吹田千里准佐!」

 手を握り返してくれてありがとう、此花悠少尉。スルーされたら、差し出した右手が宙ぶらりんになってしまうからね。

「それでは、お疲れ様です!和歌浦マリナ少佐!枚方京花少佐!生駒英里奈少佐!吹田千里准佐!」

 握手を終えた悠ちゃんは、再び教則本通りの着剣捧げ銃の姿勢に戻ったんだ。そして私達がエントランスの自動ドアをくぐるまで、此花悠少尉は私達への捧げ銃を崩さなかったの。

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― 新着の感想 ―
[一言] 護ると言う誓い、助けたいという思い……それさえあれば立派な防人の乙女さ!
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