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~レンの研究所~

レンの研究所に向かう留美達。

しかし研究所にはレンとの思い出がいっぱいあり、涙が出そうになる留美。

目的はあくまで、覚醒現象の件を調べること。

留美は泣きそうになるのを抑えながら、レンの研究所の扉を開ける――……

 私達はまず、レガンの前の心の赤を持つ者だった、レンの研究所へ向かった。


 彼は私と出会う前から、この現象について研究していたらしい。現象についての資料がたくさんあった。それらを見ようと手を伸ばすと、レンはいつも私を止めた。その度に彼は


『私が死んだ時、これら全ての資料を見るといいよ。私が調べてきた全て……私の全てがあるから』


私の頭を撫でながら言った。その時の彼は少し悲し気な顔をしていた。


「……あの時、何であんな顔してたんだろう……。辛いことでもあるのかな……」


そう思うと、胸が苦しくなった。あの時、聞いていれば……。あの時、少しでもレンを支えていたなら……。少しはレンの気持ちも晴れたのかもしれない。レガンは後ろをずっと黙ってついてきていた。私を気遣ってか、ずっと黙っていた。……この時ぐらい、何か喋ってよ……全く。気分が重くなるよ……。歩きながらそう思っているといつの間にか、研究所に着いていた。研究所は森の中にあった。木が茂っている中、ひっそりと研究所らしくない、古びた建物が立っていた。


「……此処か」


ようやくレガンは口を開いた。


「……そう。かつて私の家だった場所であり、レンの研究所でもある……」


ゆっくり扉を開ける。長年開かれなかったその扉は古くなり、ギィ……と音を立てた。


「……あの時のままだ……」


レンが死んでから、私はしばらく立ち尽くしていた。だけど、ずっと此処にいる訳にもいかないと思い、この家を出た。その後、どうしたかは覚えてない。いつの間にか代わりの家を手に入れ、そして今に至る。


 今の家はレンの研究所に比べて、新しくて綺麗だった。だけど、狭かった。その狭さが私の心をより狭くさせた。寂しくなって、一刻も早く、心の赤を持つ者を見つけて、安心したかった。だから私は……探して探して……。どうしてレガンが心の赤を持つ者だと確信したのかは、正直私も分からなかった。だけど、体が反応してレガンを部屋に連れてきたのだ。今思えば、私…何てことしたんだろうと思う。自分が安心したいからって、他人を自分の家に連れてきて…事情も分からないまま、レガンは連れてかれて…どんな気分だっただろう…。そう思うと申し訳無くて、涙が出そうになる。するとふと、手に感触があった。


「あ……」


「無理するなよ、留美……」


そう言って、レガンは私の手をぎゅっと握ってくれた。


「……ありがとう、レガン……」


私はそっと握り返し、中に入る。


「少し埃被ってるけど、荒らされてなくて良かった……」


涙が出そうになりながら呟く。


「此処がレンさんの研究所……。そして留美の家か。なかなか住み心地が良さそうだな……」


レガンは部屋の中をキョロキョロと見る。


「うん。此処で熱心に研究してたレンに、いつも私がお茶を淹れてたんだ……。私に出来ることは…それぐらいしかなかったから…。そしたらレン、凄く美味しいって褒めてくれたんだ」


そう…あの時、此処でレンは懸命に資料を広げて、研究をしていた。いつも頭を悩ませていたレンを見て、何か出来ることないかなっと考え、思い付いたのがお茶を淹れることだった。レンはいつも必死だった。私達、覚醒人間を保護しようと…守ろうと。滅ばないように……。ふと私はレンとの思い出を振り返る。


「……なぁ、もし良ければ……だけど、俺にもその、レンさんに淹れてたというお茶、飲ませてくれないか……?」


「へ!?」


「あ、いや。もちろん、そんな場合じゃねぇことは分かってる! だが……お前の話聞いてたら…お前が淹れたお茶、飲みたくなってきて……」


もごもごと言うレガンの様子が何だか可愛くて、自然と笑顔になってしまう。


「あはは、いいよ。口に合うか分からないけど……。ちょっと待っててね」


私はバタバタとお茶を作りにキッチンに向かう。電気を付けると、キッチンは埃が被っているが、あの時のままだった。お茶淹れる用のポットも置かれたまま。


「キッチンに行くのは久しぶりだなぁ……」


そう呟きながら、再び思い出に浸る。そしてお茶を作るのも久しぶりだった。忘れてないかなぁ…と不安に思いながらも、私はお茶を作り始めた。

引き続き、投稿が遅れる可能性が大です。

気長に御待ち頂けると有難いです。

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