~淡い不安~
言い伝えのこと、レガンのことが聞けて満足した私は、美江さんにそろそろ帰ることを告げた。
「そうですか……。もう少しゆっくりしていってもいいのに……」
凄く残念そうだった。だけど長居する訳にもいかず、
「いえいえ……。今日のところは」
そう言うしかなかった。
「そうだな……長居する訳にもいかないしな……」
レガンも私に賛成した。
「そうですか……仕方ありませんね……。また来て下さいね。待ってますから」
「はい! 絶対来ます……!!」
「じゃあ俺達はこれで」
私達は美江さんに別れを告げ、家を出た。思ったより長居してしまったようだ。もう夕方になっていた。
「レガン、大丈夫?」
そっと私は様子を窺った。
「正直、まだ戸惑いはある。自覚……ていうか、もしかしてって思ってたことが当たってさ……。だが、留美がいてくれた。だから俺は俺を保っていられる。そして、美江さんも俺に留美の傍にいる権利をくれた。……こんな奇跡が起きて、まだ大丈夫じゃないなら、俺はどんだけ我が儘なんだよ」
そう言って、レガンはにこっと笑った。いつものレガンだった。その様子に私は安心し、ぎゅっと腕を組んだ。
「どうしたんだよ、急に」
「気分」
そう言うと、レガンは“何だよそれ„と言わんばかりにくすっと笑う。私も自分の態度にくすりと笑った。
ふと私は不安になった。また独りにならないのかと。レガンは人間ではないため、事実上、私と同じ不老不死だ。だけど、もし薬の効果が切れたら。人形化が進んでしまったら。いなくなりはしない。人形になるだけ。でも、心と命がなくなる。言葉も曖昧……。もしそうなったら……また私は独りになる。また心の赤を持つ者を探さなければならない。……それならいっそ――――……
「……留美?」
「!!」
はっと我に返る。レガンが心配そうな顔で私を見る。
「……先ばっかじゃなくて、今を歩くんだ」
ポツリと呟かれた言葉に私ははっと気付く。……そうだよね。今を見るんだ。今、この瞬間を感じるんだ。未来はそれからでいい。
「何、格好付けてるの?」
「はあ!? 別に格好付けてねぇよ!! おら、行くぞ!!」
レガンは私を引いて、早歩きする。
「ちょ……レガン、待ってよ!!」
私は慌ててレガンについて行こうと必死に早歩きする。
……レガン、ありがと……。
次回で本編は最終であります。
本編終了後はこの話に出た新しいワード、登場人物の説明や設定を書いていきたいと思います。
ではでは。続きもお楽しみくださいませ。