~新しき「心の赤を持つ者」~
ようやく見つけた心の赤を持つ者に事情を説明しようと試みる留美だが、どうも話を聞いてくれそうになく、さらに態度も最悪な男性……。どうしたものか……。
「心の赤を持つ者は、世界の人々を守るために生まれた特別な存在。でも、貴方の前、心の赤を持つ者だった人はこう約束してくれた。覚醒人間を保護すると。だから、私や他の人達も守って欲しいの。分かったかな? 新しき“心の赤を持つ者„さん?」
あの事件から60年経とうとしている。相変わらず私は覚醒人間のままだった。だけど、普通の人間は老う。前、心の赤を持つ者だったレン・キルラも老い、病に倒れた。そしてあの事件から数年後……彼は亡くなった。私はあの時と同じ悲しみが溢れてきた。そう、私が暴走した時に照を殺してしまった時と……。私はあれから新たな心の赤を持つ者を探した。そして今、ついに見つけた。そしてその人を、苦労してやっと手に入れた、私の家(森の奥にある)に案内し、色々教えようとしていたんだけど……
「はぁ? 分かる訳ねぇだろ! 俺が心の赤を持つ者? 何言ってんだ? というか、まだあんな古い言い伝えを信じているのか? おチビさん」
態度が最悪だ。そして信じようとしない。まぁ、それもそうだろうけど。レンと一緒に住んでいたあの家よりは広いが、保護した覚醒人間達もいるため、それでも狭い。そして、覚醒人間のほとんどは、人間で言う、10歳未満の子供ばかりで、家の壁には、落書きがいっぱいあった。……これでも掃除した方なんだけどな……。
「まぁ信じられないよね……。貴方の前に心の赤を持つ者となった人も最初は信じ難かったみたいだし。あと、私を馬鹿にするのはやめて欲しいなぁ……。見た目はこんなんだけど、これでも貴方よりは長生きしてるんだから」
レンとは大違いだ。信じないのは分かるけど、馬鹿にされるのは正直腹が立つ。
「獣を守れっての? 今、お前は普通だが獣になると暴走するんじゃねぇの? 暴走事件で有名な留美さん?」
「あぁ、それに関しては安心して。獣でもちゃんとコントロール出来る獣だから。なってみせようか?」
「……見てみたいな。お前の言う、獣化した覚醒人間とやらを」
男性の声が変わった。興味を示したよう。
「分かったわ。怖がらずに、ね?」
そう言って、私は目を赤くして、久しぶりに牙と爪、翼を生やす。いつぶりだろう、獣になるのは。……そう、60年前にレンと解決した覚醒現象事件以来だ。……あの事件がレンと関わった最期の……。
「お、おいお前……大丈夫か?」
「……え?」
私は気付けば涙を流していた。“赤い涙„を。
「……泣いているのか……?」
男性の声が妙に優しく聞こえた。涙が止まらない。ポタポタと赤い涙は落ち、私の家の床を赤くしていく。
「あ、あれ……? 何でだろうね。ごめん、すぐに止めるから……」
必死に涙を拭う。けど、赤い涙はどれだけ拭っても流れてくる。
「……無理するな」
男性はそう言うと、私をぐっと近付け、抱き締めた。
「!? ちょ……」
「無理に元気な振りするんじゃねぇよ……。お前はきっと……前の心の赤を持つ者を思い出して、泣いているんだろ? だったら泣け。泣き止むまで、俺がこうしてやるから……」
彼の不器用な優しさに私の涙はより溢れ出す。
「……っ。ありがとう……。うぅぅ……もう……いない……前の心の赤を持つ者……レンは……死んじゃったの……。私も……死ねたら良かったのに……。どうして死ねない……。私の親しい人間が死んでいって……。そしてきっと……貴方も死んでいく……。また一人になる……。嫌だ……一人はもう嫌だよ……!!」
私は彼に胸の中の思いを全て言った。まだ名前も知らない、新しい心の赤を持つ者なのに。
「……お前にもそんな感情があるんだな……。覚醒人間は感情を忘れているのかと思ったけど……違った。お前は人間だ。俺達と同じ、人間だ。どうしてお前が不老不死なのかは俺には分からない。そして生きる時間が長ければ長い程、別れって物が付く。だが、お前は決して一人じゃない。レンさんは死後もお前の中で生きることが出来るんだ」
彼の言葉は少し偉そうに聞こえた。だけど優しさで溢れた言葉だった。
「……ありがとう……ありがとう……」
そう言いながら、私は赤い涙を流す。その涙は男性の服に染みていく……。
引き続き、投稿が遅れる可能性大です。
体調は回復しました。薬飲んだらあっという間に治りましたw
ですがリアルはまだまだ忙しい日が続いてます。そういうのもあって、投稿が遅れます。かなり……。
すみません…。気長に御待ち頂けると有難いです…。