~目覚め~
どれだけ呼び掛けても、レガンは叫ぶだけで攻撃を止めようとしなかった。
「……ぐっ!!」
逃げる途中こけ、後ずさりするも、木にぶつかる。レガンは猛スピードで私に迫る。もう……駄目……。レガンは私を襲おうとしたその時。
「……っ!?」
声が聞こえ、私は恐る恐る目を開けると、レガンが私を傷付ける寸前で止まっていた。目は赤いまま。動きが完全に止まっていた。
「これって……!!」
この感じ、見たことがあった。そう、心の赤を持つ者の能力だった。
「もしかして……レン!?」
でも周りはレガンと私以外、誰もいなかった。そうなると……
「……レガン自身で……?」
心の赤を持つ者の能力は攻撃を防ぎ、同時に時間も止める。自分と周りの人の時間は進んだままのはずなのに……?
「と……とりあえず此処から出ないと……」
レガンの下を抜けると、紫色の光が出、時間が進み始めた。
「……はっ……」
レガンは腕を下ろし、座り込む。
「レ……レガン……?」
声を掛けると、はっと反応し、振り返る。……青だった。元のレガンだった。
「留美……!!」
レガンは私を抱き締めた。
「ちょ……レガン……!! ……?」
レガンが震えているのを感じた。
「すまない……留美……俺……」
レガンはそう言って、私を強く抱き締める。
「……レガン……。大丈夫だよ。それより元に戻ってくれて良かった……。もう、戻ったんだよね……。襲わないよね……?」
「もう大丈夫だ……。俺はもう留美を襲わない……!!」
「レガン……。貴方の心の赤……見えたよ。能力……使えてた……!!」
「……!! 俺が……心の赤を持つ者の能力を……使った……?」
「そう。しかも、自分で自分を止めたの。今までは自分と周りの人は動けたのに……私だけが動けたの」
「俺は……本当に受け継いだのか……?」
「レガンはレンの後を受け継いだよ……。心の赤を持つ者になれたんだよ……!!」
私はレガンを抱き締め、頭を撫でた。
「ちょ……留美……! 恥ずかしい……!!」
「誰もいないよ?」
私は笑う。だけど少し違和感があった。レガンの髪は柔らかかった。でもそれは、人間っぽい髪の感じじゃなかった。気のせいだと私は首を振り、レガンの髪を撫で続けた。