~兆候~
数日後。すっかり元気になった私はレガンにお礼しようと、もう一度お茶を作っていた。
「……今度こそ、美味しく作らなくちゃ……。私はこれしか出来ないし……」
そう言いながら、メモを見てお茶を作る。このメモはお茶が上手く出来た時に、作り方をメモった物。上手く作れなくなったら、このメモを見ながら作って、再び覚えようとしていた。
「……これでいいはず……! うん、出来た! 味見してみよう……」
棚にあった小皿を持ってきて、そこにお茶を一口分注ぐ。
「……匂いは良い感じ……。問題は味なんだけど……。これでいいはずなんだけど……んん……」
そう呟きながら、私は味見をする。
「……! これだ……。出来た……!!」
レンのために作ったお茶を何とか再現出来、私は嬉しくなって、すぐさまレガンの方へ持って行った。
「レガンー!! 出来たよー!!」
嬉しい気持ちからか、つい大声で言ってしまう。が、冷めないうちに早くレガンに飲んで欲しくてたまらないのだ。
「お、出来たのか! 留美のお茶、飲みたかったんだよなぁー!」
レガンも嬉しそうだ。私はウキウキ気分でカップにお茶を注いだ。注ぐと同時にお茶のいい香りが部屋を包み込む。
「良い匂いだな……!」
レガンは香りを楽しみ、そしてお茶を飲んだ。
「ど…どうかな?」
「んー……」
レガンは香りと味を同時に楽しむよう、目を閉じていた。すると飲み終わったのか、ゆっくりと目を開け
「……美味しいよ」
そう呟く声に私はほっとする。
「良かったー……口に合ったみたいで」
「俺、留美のお茶のファンになったぜ……!!」
そう言って、レガンは目をキラキラ輝かせる。
「それは大袈裟だよ。照れちゃうよ……。片付けてくるね」
私は嬉しくてつい、笑顔が出た。
「……何故だ……? 香りも……味も……何も感じない……。前は少しは感じたのに……」
レガンがそう呟く。その声は小さく、私の耳に届くことはなかった。