「第6章」日光の夜に、男の部屋
この小説の中核となるパートですが、文章中に、男性同士の具体的な性的描写表現も出て来たため、オリジナル版は、R18の、成人指定を受けました。よって本パートはその部分を大幅に削除しております。よって大変に読みずらい文章構成になりました。
なお、読者が成人でしたら、オリジナル版は、短編作品として「真実の楽園の誓いより、日光の夜に、男の部屋」のタイトルで上程させて頂きました。そちらの方を御覧頂けると幸いです。宜しくお願い致します。
僕らは食事を終えて部屋へと戻りながらこれからどうしようかと話しかけていた。エミーは
「私は由美子と一杯話したいことがあるのよ。女同士の秘密の話し、由美子はお酒はいける口かしら?」
「そうねえ、普段は余り呑むことは無いけれど、今夜くらいは良いかしらね!」
「じゃあ、決まりね。今夜は色々語り合いましょうね。ユカも一緒よ。ハワイのお話し沢山してあげるわ。」
「わあい、楽しそう!」
「それじゃ、私達は女水入らずで」
そう言うと、3人はロビー脇にある売店の方へとさっさと歩いて行ってしまった。
ユウイチと僕は、「俺達はどうする?」と、顔を見合わせた。ユウイチが、「もうひとっ風呂浴びるか」というので、僕は、再び露天風呂へと向かった。
浴衣を脱ぎ、露天風呂へと浸かると、躰は更にほぐれていくような気がした。そして、あのハワイでの惜別からの10数年間の出来事が次から次へと思い出せてくる。
「ユウイチとは、あの時、たまたまカラカウアの交差点で信号待ちしていなかったら、出会ってなかったんなだよね」
「そうだなあ、偶然というか、奇遇と言うか・・」
「あの時ね、ユウイチを最初に見た時って後ろから二人の女性のお尻を触ってたんだよ。」
「俺、そんなことしてたっけ?」
「したよー。僕はそれでびっくりして、目が点になってさ。ハワイでは、町の往来で堂々と痴漢する人が居るんだって思っちゃって、まあ、後でお互い知り合いだと理解はしたんだけどね。それにしても、堂々と凄いなと思ってたら、次の信号で今度はコールガールの人に後ろから近づいてその人達の客引き邪魔してたでしょう。」
「あー、そんなことあったな。良いんだ、あいつらは本当にとんでもない女達だったからな。若くて純な日本の若者達を騙してカモにして金巻き上げるんだから。毎日見てられなかったしな。同じ日本人として可哀想だろ?」
「それをじっと見ていた僕にその後話しかけてきたでしょう、ユウイチがさ。それでそれっきりに成ると思ってたらさ、次の日又逢うとは思ってなかったし、そういえばその時ユウイチは、女性に付きまとわれてたよね。」
「ああ、あの時はマジに参ったよ。一度切りの女に街角でバッタリと会っちゃってさ…しつこくてな、あの時サトルが目の前に現れて、天の助けだったよ。おかげで逃げられた。今でも感謝してるよ。」
「て言うかさ、そんな女性とそもそも関係持つ事がいけないんじゃないの?」
「そう言うけどなサトル、女は1度躰の上に乗ってみなけりゃ本当の正体は判らねーだろ」
「そういう感覚は僕には無いの。それに、あの時は僕は仕事のことで頭一杯の時だったのに、あの日の出来事以来すっかりハワイの予定が狂ったんだからね。」
「それじゃ、俺はサトルには迷惑だったって事かよ?」
「正直、最初はそうも思いました。でも後で思うとそのお陰で僕は返って仕事に集中力が出たし、仕事にも冷静に当たれた。今では凄くユウイチには感謝してるんだ。それに・・とても楽しかった。」
「それなら良かったけどな」
「それに、あのイベントの成功にはユウイチの知り合いの女性がいっぱい来てくれたお陰だった訳だし。それでその後の僕の仕事での立場も良くなった。今の自分が有るのは、ユウイチのお陰です。本当にありがとう。」
「俺が役に立てたなら、それで良いよ。」
「そう言えば、ドライブに一緒に行ったクリスとアンは、どうしていますかね?」
「あの2人は多分普通に幸せに暮らしているよ。アンは、出会った旦那と一緒にカリフォルニアへと引越していったしな、クリスもその後暫くして結婚して、今でもオアフに住んでる。子供も産まれたって言ってたな。最近は有ってないけど、みんな幸せさ。」
「そうなんだね。僕にとってはそのクリスが作ってくれた写真スタンドが、今でも家の机の上に置いてあって毎日若かった頃のユウイチと僕が肩を組んでて・・大切な宝物になってるんだ。」
「その同じ写真は、俺んちのサイドテーブルにも置いてあるよ」
ユウイチのその言葉はちょっと意外で、そして嬉しくもあった。
「ユウイチには、その夕暮れのタンタラスへのドライブの他にも色々連れて行ってもらえた。ハナウマ湾とか、サーフィンとか、みんな忘れてないよ。」
「そうだ、思い出した。あの時のハナウマは、最悪だったな。絶対忘れないさ。あんな遠く迄自転車で行くなんて、やっぱりキチガイ沙汰だったな。あれで俺は自転車大嫌いになったんだ。」
「そんなこと言うなら、サーフィンの時のこと覚えてる?ユウイチ、あの時に下手くそで全然乗れない僕のことを『百姓!』って言ったんだよ。僕は本当に頭来たんだから。」
「でもな、あれだろ?サトルは、あの時それから本気出しただろう。だから乗れたんだから俺には感謝しろよ」
「感謝してますよ。あの後、本当に滅多にしない深酒して、翌朝ユウイチ作ってくれた朝ご飯美味しかったなあ。本当に。何よりのハワイの思い出の味になったし、ユウイチの嫁さんになる人は幸せなんだろうな」
僕がそう言うと、ユウイチは、うつむき加減となり、「そうか・」と、静かに言った。
僕は、「それはそうと、ユウイチは結婚とかしないの?」と、ゆっくりと尋ねてみた。
ユウイチは、暫くの間、窓の外の遠くを見つめてから無言でいた。そして口を開いた。
「俺は心底から愛せる1人の女性を見つけたくて、いろんな女と出会ったりしたのかもしれない。いつか見つかるだろうと。でもいくら数多くの女を知っても今まで結局は見つけることが出来なかったんだろうな。それに、最近は女とは遊んでもいないよ。」
「エミーさんとはどうなの?」
「エミーとは一切恋愛も男女の関係もないよ。だからかな、長年仕事のパートナーでいられたのかな。実はな、・・」と、少し時間を置いてから、
「サトル、続きは部屋で話さないか」と、ユウイチがそう言うので僕たちは風呂場を出て、部屋へと戻ることにした。
脱衣所を出て目の前にあるエレベーターに乗り込み、部屋のある3階へと戻る。すると、ユウイチは、思い出したように、
「そうだ!サトル、今夜は飲むだろう?」
「はい。勿論ですよ。僕が自販機で買ってきますか?」
「いいや、俺が買ってこよう。何が良い?」
「『梅酒ソーダ』って言いたいとこですが、僕もビールで良いです。」
「サトル!ビール苦手じゃ無かったのかよ?」
「実は、あの日以来飲めるように少しは努力したんですよ。そうしないと、ユウイチと再会出来たときに飲み交わせ無いんじゃないかと思ってさ。」
「へえ、そいつはいいや!それじゃ買ってくるよ。サトルは、部屋で待っててくれ」
そう言うと、ユウイチは廊下を戻っていった。
僕は、部屋に入ると、カウンターにあるグラスをテーブルに用意しながら思いを巡らせていた。
(ユウイチにはきっとこの10年余りの間に何かあったんだ。あの昼間の困惑した顔は、言いづらい事なんだろう。今夜は僕が聴いてあげられれば・・)
(サトルがビールかあ。俺と飲むためだなんて、本当に良い奴だなあ)
ユウイチは、そう思いながら自販機ではなく、フロント横にある売店まで行き、梅酒ソーダと、ビールをしこたま買い込んだ。
山のようなビールを抱えてユウイチが部屋へと戻って来たので、僕は思わず「そんなに買ってきたんですか!」と、声を上げた。
「そりゃあそうだよ。何年か振りだ、その分今夜は徹底的に飲むぞー」
「それはそうですけど、僕は今でもそんなに酒強くないですよ」と、言ったものの、ユウイチは、飲む気満々で、
「大丈夫だ、心配するな、サトルが飲めない分は全部俺が飲む!」
と言い切った。
僕は、「相変わらずですねー」と言いながら、その買い込んできたビールの山をとりあえず部屋に備え付けてある冷蔵庫に詰めて、2本だけ残し、それをベランダ際のラタンのテーブルに置いて、椅子に腰を下ろした。
「それでは、10数年ぶりの再会に乾杯(^-^)人(^-^)」
と言って、実は未だにちょっぴり苦手なビールをなるべく美味しく呑んでいるように見られるようゴクゴクと、喉に流し込んだ。
「サトル、結構いける口になったじゃないか!」
「自分なりに少しは鍛えましたからね」
「そうか、それなら今夜は徹底的に飲むぞー」
そう言ってから、風呂場での話を続ける事にした。
「エミーのことだが、サトル、実はなエミーは1度結婚してるんだ。でもなその相手が酷い奴だった。仕事もろくにしないで遊んでばかり、それでいて罵声を浴びせたり、暴力振るったりと。それで別れてから深く傷ついてた時に俺の職場にやってきたんだ。だから俺はちゃんと優しくしたし、同僚としてずっと接してきた。それにエミーは芯の強い女でな、仕事も出来る。その内、仕事では俺にもずけずけ遠慮なく物言う様になるし、今じゃ会社でもすっかり主みたいに振る舞って、俺でさえ尻に敷かれているよ。あんなの嫁さんに貰ってたら俺の生涯は真っ暗闇だよきっと」と、言いながら、自分の首をギロチンで切って見せた。
僕らはその後もお互いのこの10数年間の出来事を振り返りながら、色々な話を語り合った。
一時間ほどたった頃、僕はタイミングを見て気になっていたことを振ってみた。
「ユウイチさん、そう言えば独立して会社設立の時って、大変じゃ無かったですか?」
僕がそう尋ねると、ユウイチは一瞬だけビールを飲む手を止めた。そして、戸惑いの顔を見せながら重い口を開いて静かに語り始めた。
「会社の設立の時かあ・・そうだったな。資金集めが大変だったな。当時必要だったのが30万ドル程、日本円で3,000万円くらいか。懸命に銀行にあたったんだけれど、中々O.K.が貰えなくて、知り合いの伝手を頼ってみたものの・・俺って若い頃遊んでばっかだったろ。しっかりとした友人知人が少なくてな。みんなその日暮らしみたいな奴らばかりだったし、かといって女の知り合いもやり目的か、結婚して疎遠になってしまった人ばかりだった。それで出資してくれる投資家やスポンサーを懸命にあたったよ。それで、ある人の紹介で、資産家の女性と会ったんだけれどな。最初からとても好意的で喜んで貸しましょうって言われたんだけどな・・・」
そう言うと、ユウイチは、口をつぐんでしまった。
「何かあったのですね。」
僕がそう言うと、ユウイチは重くなった口を開いた。
「実は、その後、1つ条件を出されたんだ。利息などは全く要らない、返済期日も設けない。その代わり、『私の愛人になれ」』と、言われたんだ」
「えーっ!そんな条件を・・」
「俺のことをどんな噂で聞いてたかは知らなかったが、前から気になる存在だったと」
「で、そんな条件をユウイチは、飲んだの?」
「俺も、それを聞いて驚いたし、女散々泣かせてきたんでしょともいわれ、それは、確かに事実かもしれないが、面と向かって言われると戸惑ったよ。そして、迷いも有ったが背に腹は代えられなくてな」と、言って言葉を1度切った。
「『それじゃ試しにここで私を抱いてみて』って言われてな」
「それじゃ、ユウイチは、」
「俺も男だ、ようしやってやれって最初は思った。会社設立の為だそう思って、ベッドに入ったんだ。でもな、…」
「でも?」
「(倫理規定により削除)
とうとう出来なかった。そうしたら、その彼女が物凄く怒ってな、『私に女として恥をかかせる訳ね。そんなに私って魅力無いのかしら。最低ね。あんたって、聞いてるほどの大した男じゃ無いわね。残念だけど、この話は無かったことにしてね。思いだすだけで気分悪くなりそうだから』ってな、商談はご破算だ。」
「ユウイチ、それは駄目だよ、やっちゃいけない。枕営業って奴だよ、それは…」
「俺だって判っていたよ。でもな、藁にもすがる思いだったんだよ。その時はな。事業開始には、後は金の問題だけだった。自分でも驚いたよ。立たないなんてことは初めてだった。」
「それが、正直な気持ちだったんだよ。きっと。」
「それで、結局資金の工面は、どうやったの?」
そう僕が尋ねるとユウイチは寂しそうに視線を窓の外へとむけ、遠くを見つめていた。視線の先には上弦の月が、とても綺麗に輝いていた。
どの位の間があっただろう。ユウイチは「身体が冷えるな。もう一度風呂に入らないかサトル」
と言うので、僕は、
「ユウイチ、結構飲んでるよ、もう。風呂入って大丈夫なのですか?」
「俺はいつでもこの位はへっちゃらさ」
「それじゃ、部屋に着いてる露天風呂で、移動も少ないしね」
「そうだな。善は急げ!パッと行こうか」
そう言うと、ユウイチは浴衣をその場で脱いで、さっさと風呂場へと行ってしまうので、僕も追いかけるように風呂へと向かった。
部屋の露天風呂はこじんまりとしてはいたが、洗い場もあり、庭園も見下ろせ、景色は最高だった。湯船に2人浸かると、ユウイチとは身体が直接触れあうくらいの距離だった。
僕は改めて
「ユウイチは、相変わらず凄いからだしてますね」そう言うと、ユウイチは、
「そんなことは無い、俺も、歳を重ねて衰えも来てるさ。」
そう言ってから、僕の顔を覗き込むようにじっと見つめ、こう言った。
「サトル。俺の話し聞いてくれるかな。これから話す事は、他の誰にも言ってないことなんだ。そして、・・絶対に軽蔑しないでくれるか?」
懇願するその真剣な眼差しは、迫力もあり、哀愁も感じた。僕は、
「勿論だよ。今夜はユウイチが、きっと苦しんでる事、聞きたかった。是非、僕には何でも正直に話して欲しい。」と言って、真っ直ぐユウイチの眼を見つめた。
ユウイチは重くなった口を辛うじて開き、心から絞り出す用に話しを続けた。
「…その女性から、融資を断られてから、いよいよ持って窮地に追い込まれていた。会社の建物の設計士からも、『月末までにはご返事頂けないと』とか言われてな。残されたのは後三、四日っていう時になって、ある年老いた資産家から、出資しても良いと連絡が有って、藁をもつかむ想いでカハラにあるその人の別荘を訪ねたんだ。」
「それで?」
「その人は、資金は即金で用意できる。何ならプラスしても良いと。そして、融資ではなく出資をするのだから、返済は考えなくてもいいし、経営に口出しもしない。代わりに1つだけお願いが有ると言うんだ。」
「その、願いって?」
ユウイチは、酷く言いずらそうに口を開いた。
「その願いっていうのは、こういうことだった。『あなたは、男として、理想的な格好いい身体を持ってる。私は残念ながら君とは全く正反対の人生だった。なので身体も華奢だ。君のような野性的というか、磨き上げられたような身体は、かけ離れた自分の理想の姿だったんだよ。なので、一晩だけで良い。君の身体を私に自由に遊ばさせてくれ無いだろうか。君は何もしないでいてくれれば良い。ただ、横になっているだけで。この先、余り人生も残り少ない。この老いぼれのささやかな望みを叶えさせてくれないか?』と、そう言われたんだ。」
「それでユウイチはどうしたの」
「やはり迷ったというよりは戸惑った。予想もしてなかったことだった。でもな、俺も必死だったよ。だから、一夜限りの事ならと、承諾したんだ。そして、俺はパンツ一枚でベッドに横たわった。それから・・・」
「それから」……
「(倫理規定により削除)
俺はまず目隠しをされた。そして紐で手足を縛られ拘束されて、その後、執拗に一晩中全身を舐められた。何時間もだ。
(倫理規定により削除)
開放されたとき、俺は自分でも軽蔑した。その時の自分を。」
事が済んで、その人からは、『最高だったよ』と言われた。翌朝、即金で資金は渡されたよ。小切手の額面は50万ドルだったさ。周りからはよくこれだけ用意出来たと称賛された。そして、余裕を持って無事に会社は設立することが出来たんだ。でも、代わりに俺は、汚れてしまったんだ。自分の魂を悪魔に売ってしまったのと同じなんだよ。それだけじゃない。俺はその後、そのスポンサーには、少しづつ何度も返済に行ったんだ。しかし彼は決して受け取らなかったんだ。そして、会う度に願望されるまま、俺はその後も何度もベッドで拘束目隠しされ身体をいたぶられた。しかも、いつしか俺は拒否しなくなっていた。そして、その時は、何故かいつも、サトルのことを想っていた。俺は堕ちていく。サトルにはもう逢えない。純粋に生きるサトルに逢う資格は俺にはもう無いんだって思ってた。俺は悪魔の奴隷に成り下がったんだよ。人としてもう、一線を越えて、戻れないくらい汚れてしまったんだ。…そして、その後は、どんな女を見ても、愛せなくなった。」
その言葉は、僕にとっては余りにも衝撃な内容だった。言葉が出せなかった。僕は、ただひたすらにユウイチの眼から視線を外すこと無くずっとなるべく優しく見つめていた。ユウイチの瞳は少し潤んでいて、遠い過去を辿っているようでもあった。そしてユウイチは、何か心につかえていた者を全て吐き出すように言葉を続けた。
「そのスポンサーは、数年前に亡くなった。その亡くなる直前、俺はその人の秘書に呼ばれて入院している病院へと出向き面会したんだ。その人はもう虫の息で、その時にやっと聞こえる小さな声で俺を呼び、こう言ったんだ。『もう、僕の命は長くは無い。最期に、君にはどうしても御礼を言いたくて、今日来て貰ったんだ。最期のお願いとして、私の出資したお金のことは、全てなかったものとして忘れて欲しい。』そう言うと、側に居た秘書が、書類を取り出してそれを破り捨てた。そうして、尚もかすれた声で話しを続けたんだ。
『君と過ごした夜のことは、2人だけの秘密だよ。そして、私の人生の中で最大の悦びだった。この老いぼれの願望を叶えてくれて本当にありがとう。もうこの世に思い残すことは無いんだ。自分の人生は素晴らしかった。充分に満足できる生涯だったよ。こんな気持ちになれたのも君のお陰なんだ。これで静かな気持ちであの世へと旅立てられる。感謝している。』
と、言われ目を伏せた。そしてその二週間後に亡くなったんだ。その後秘書の方から、『お金のことは、何の痕跡も残っていないので、忘れて下さい。本人も強くそう申しておりましたし、ご親族にも申し上げる事はありません。それを凌ぐ遙かに巨額の資産が有りますので』とな。そしてその後は、女を抱くことも無くなっていた。俺はもう、まともな男じゃないんだ。人として越えてはいけない一線を越えてしまった。そんな想いでずっと1人苦しんでいたんだ。でも、そんな俺が心寂しいときにいつも思いだしていたのはサトルの事だった。何故かは最初ははっきりとはしなかった。でも、サトルから数年振りに連絡を貰ったとき、何かが、心から弾けたんだ。どうしても逢いたくなった。逢っちゃいけないと思いながらも・・そして気がついたんだ。俺はサトルの事を、
・・好きなんだ。どうしても忘れられない。軽蔑されるかもしれないけど、この気持ちは誤魔化せない。許してくれ」
そう言い終わったユウイチの眼からは泪が溢れていた。
そして、その泪は僕にも伝わった。僕の目もいつの間にか潤んでいた。僕は静かに話し始めた。
「僕もずっと、ユウイチが、好きだった」
辛うじて出た言葉はその一言が精一杯だった。その言葉を聞いて、ユウイチの顔は少し緩んだ。
「でも、俺は汚れている」
「そんなことは絶対無いよ。僕の前に居るユウイチは、昔のまま、格好いい素敵なユウイチのままだよ。変わってないし、この先もずっと変わらない。」そう言い終わると、ユウイチは強く僕のことを抱きしめた。そして唇を塞いでいた。僕は一瞬だけためらったが、直ぐに力が全身から抜けていった。抵抗しなかったというよりはむしろ、いつかそうなることを望んでいたのだろう。いつしか僕はそれに応えるように唇を貪り両腕も背中を弄るように彷徨い始めていた。




