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ありがちな僕らの恋模様  作者: 四季弘泰
プロローグ
5/6

プロローグ(5)カルテットの看板娘

 学園から帰宅した友季(ゆうき)は店頭から家に入った。

 「お帰り。友季。」

 「お帰りなさい。友季。」

 僕が帰って来た事に気付いた父さんと母さんが、僕が言うよりも先に笑顔で挨拶をしてくれる。

 「ただいま。着替えたら手伝うね。」

 店は基本的に8:00~19:00までが営業時間だ。そのため、僕は学園から帰ると、何時も手伝う様にしている。

 「あ、友季君。お帰り~。」

 家のウェイトレスの制服を着た女性の1人が、僕に声を掛けてきてくれた。

 彼女の名前は《松永早希(まつながさき)》さん。家でアルバイトしてくれている大学2年生のお姉さんだ。家の看板娘の内の1人でもある。

 「あ、早希さん。ただいまです。今日はアルバイトのシフト早めなんですね。」

 「大学はまだ春休みだったりするんだよね。だから11時からシフト入れておいたんだ~。」

 「はは。助かります。」

 家はお昼前後と学園の授業が終わる頃の時間帯が最もお客さんの入りが多い時間帯だ。そのため、お昼の時間帯からアルバイトに来てもらえるのは大変助かる。

 「こっちも、お昼出してもらえたりするしね。気にしない、気にしない。」

 「店員さん、注文良いですか~?」

 すると、お客さんの1人が早希さんに向けて訪ねてきた。

 「は~い。ただいま~。」

 「じゃね、友季くん。」

 そう言って早希さんは手を振りながらお客さんの下へ向かっていく。

 「さて、僕も早く着替えて手伝うか。」

 そう言った友季は2階の自室へ向かった。



 2階に上がった友季は自室のドアを開け、中へ入った。

 「あっ、ゆう、お帰り~。」

 自室に入ると、良く知った声で挨拶を投げ掛けてくれた人がいた。彼女は《夏樹水華(なつきすいか)》。もう1人の幼馴染、《夏樹一護(なつきいちご)》のお姉さんだ。普通はこの年齢になると、幼馴染でも異性だと疎遠になったりすることが多いらしいが、水華は今もよく友季を連れまわしたり、ちょっかいを掛けたりしている。

 「あ、水ねぇ来て、たん・・だ・・。」

 もう1人の幼馴染だと分かった僕は、いつも呼んでいる愛称で名前を呼び、改めて顔を見てから挨拶を返そうとした。

 「なっ!!す、水ねぇ見えてる!色々見えちゃってるから!」

 水華は家の店のウェイトレスの制服に着替えようとしていたところだったのだろう。服は全て友季のベットの上に置かれ、淡い水色の下着だけを付けている状態だ。

 「何を今更~。一緒にお風呂にも入った仲じゃない、ゆう。」

 そう言いながらも水華はほんのりと頬をピンク色に染めている。

 「それ、ずっと前の話だからね・・・。僕、後ろ向いてるから早く服着てくれないかな、水ねぇ。目のやり場に困るよ。」

 幼馴染とは言え、美人でスタイルも良いお姉さんなら意識してしまうのは男としては当然だろう。だが、友季は出来るだけ紳士的に振る舞おうとする。

 「む~。私の裸じゃ興奮できないのか、ゆ~う~。」

 しかし、水華には自分に興味が薄い様に感じたのかもしれない。あろうことか友季の背中に、ポニーテールをふりふりと揺らしながら下着姿のまま抱き付きにいく。

 「ちょっ、水ねぇ当たってる!柔らかい物、当たっちゃってるから!」

 マンガやアニメで胸に触れた時によくある様な、ぷにゅんという効果音が鳴りそうな位気持ち良い感触が背中に当たっている。

 「どうだ、ゆう!参ったかね~?」

 水華は茶化す様に言いながら、友季にまだ抱き付いている。頬はやはりピンク色だ。

 「はぁ~・・。」

 僕は気持ちを落ち着かせるために1つため息を吐いた。

 「あ、あれ?ゆ、ゆう?」

 水華ねぇは、僕がため息を吐いて静かになったことに戸惑っている様だ。

 「こら!水ねぇ。僕、目のやり場に困るって言ったよね?水ねぇはまぁ、その・・美人なんだから、もうちょっとその辺自覚持ちなさい。」

 水華は今回の様に時々羽目を外し過ぎて、少しやり過ぎてしまう事がある。そんな時はいつも友季が水華を怒るのがすでに習慣の様になっている。

 「そ、そう?ゆうがそう言うなら良いかな~。うん。良いか。えへへ。」

 怒られたと言うのに、水華は何だか嬉しそうにちょっとはにかんだ様な笑顔を見せている。

 「じゃあ、僕は部屋の外に出てるから、ちゃんと着替えてね?水ねぇ。」

 僕は念を押して水華に着替える様、促した。

 「は~い!」

 水華は嬉しそうに返事を返す。

 そうして友季は一度部屋の外に出て水華が出てくるのを待っていた。

 するとドアが青く音が鳴り、水華がウェイトレス姿で出て来た。

 「お待たせ、ゆう。どうかな?」

 ウェイトレス姿になった水華が感想を求めて来た。

 「うん。水ねぇはそのフワッとしたポニーテールに家の制服が良く合って可愛い。さすが家の看板娘だね。」

 僕は飾らず思った事をそのまま言葉にする。

 「もう、ゆうってば!可愛い奴め~。」

 水華は嬉し恥ずかしと言う様な感じで照れながら、友季の頭を撫でる。

 「じゃあ、私先に下行っとくね~。」

 そう言って水華は1階の店舗の方へと降りて行った。

 「ふぅ・・水ねぇは変わらないな・・。」

 僕は昔と変わらず水華が今の様に接してくれることに、色々と複雑な心境を吐露するように呟いた。

 「とりあえず僕も着替えよう。」

 そう言って友季は自室に入り、男性用の制服であるウェイターの制服に着替えた。

 「さてとっ、僕も頑張るか。」

 制服に着替えた友季はそう言って店の手伝いをするために、1階の店舗へ向かうのであった。



 こうして、《皆方友季(みなかたゆうき)》は高校2年生の学園生活初日に、今後深く関わりを持つ事になる“かもしれない”女の子達と出会う事になった。

 《春峰咲良(はるみねさくら)

 《夏樹水華(なつきすいか)

 《秋月環奈(あきづきかんな)

 《冬島(ふゆじま)・エリィ・カトレア》

 この4人の女の子の内の1人と楽しい思い出が作れるのか。はたまた、苦い思い出になるのか。もしかしたら、この4人の女の子達の他にも縁はあるかもしれない。そして、その末の結末は未だどうなるかは分からない。色々な想いを紡ぐ1年間がここから始まるのであった。

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