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ありがちな僕らの恋模様  作者: 四季弘泰
プロローグ
2/6

プロローグ(2)嬉しい出来事

 朝、一緒に学園へ向かった友季(ゆうき)一護(いちご)

 20分程歩いたところで《東阪学園(とうさかがくえん)》が見えてきた。



 《東阪学園》は僕が住むこの《東阪市(とうさかし)》にある学園の1つだ。公立の高校でありながら、留学制度など、異文化交流にも力を入れている、ちょっと珍しい学園だ。



 「そういや、先に掲示板でクラスの確認だっけ?」

 校門を通ってすぐ、一護が僕に尋ねてきた。

 「そうだね。その後自分のクラスに行って席を確認。荷物を置いたら、体育館に行って始業式。という感じかな。今日の大まかな予定は。」

 「サンキュー友季。じゃあさっさと上靴に履き替えて掲示板確認しに行こうぜ。」

 一護はテンションも高らかに言うと急に走り出した。

 急かされた様に友季も一護の後を追い、昇降口にある自身の生徒用ロッカーに向かった。


 

 上靴に履き替えた2人。

 クラス表は昇降口すぐ側にある、横長のお知らせ掲示板のボードに張り付けられる。

 普段は気に留めていなくとも近くを通れば視界に入る位の大きな掲示板は、今はほとんど見えなくなっている。

 そこには大量の生徒たちが押し寄せていた。

 一応学年で両端に分かれてクラス表が貼られてはいるものの、何せ登校してきた2,3年生は必ず自身のクラスを確認してから教室に向かう必要があるからだ。

 「うへぇ・・。さすがに人多い。多すぎる!」

 一護はウンザリした様子で愚痴を零す。

 「う~ん・・。 つま先立ちすれば、んっ、なんとかっ、見えなくもっ、ないかもっ。」

 友季は名前を確認できないか、つま先立ちで確認しようとした。

 「きゃっ。」

 友季が立っているあたり、生徒たちの喧騒の中から可愛らしい小さな悲鳴が聞こえてきた。

 目の前の掲示板に殺到する生徒達の中から、押し出された女生徒が友季の方に倒れかかってきたのだ。

 「わっとっとっ、っとっ・・。 大丈夫ですか?」

 友季はバランスを崩しつつも、なんとかその()を受け止めた。

 その時偶然触れてしまった女生徒はとても柔らかく、肩の辺りまで伸ばしたさらっとした綺麗な髪からはシャンプーか整髪料か、何か良い香りがした。

 「んっ。」

 僕は平静を保とうと努めつつ、腕の中で少し身動ぎをした女生徒にもう一度尋ねてみた。

 「だ、大丈夫だった?どこか怪我してない?」

 「ありがとうございます。 怪我とかも無いですし、助かりました。」

 女生徒はすぐにそう言いながらこちらを振り返り、少し驚いた様子で逆に声を掛けてきた。

 「あっ、受け止めてくれたのって皆方くんだったんだ! ありがとう!」

 お礼を言ってくれた彼女の見せた笑顔に、僕はドキッとした。

 「どういたしまして、かな? 大丈夫なら良かったよ、春峰(はるみね)さん。」

 そんな彼女に対して、僕はそう笑顔で答えた。


 友季が受け止めた女生徒は《春峰咲良(はるみねさくら)》。1年生の時、友季と咲良は同じクラスだった。

 

 「あっ、改めておはよう皆方くん。」

 「おはよう春峰さん。」

 咲良と友季は改めて挨拶を交わした。

 「皆方くんもクラス発表を見に来たのかな?」

 「そうだよ。 僕は一護とついさっき学園に来たばかりで、まだ確認できてないんだ。 春峰さんは先に見てたようだけど、自分のクラスきちんと確認できた?」

 僕は先ほどの咲良の様子から、自分の名前の確認ができてないのではと思って聞いてみた。

 「ダメだったんだよ~。 もう少しで見れたんだけどね。 どうしよう・・。」

 咲良は少し困った様に笑い、そう言った。

 「なら春峰さんのクラスも、ついでに見てきてあげるよ。 ちょっと待ってて。」

 「あ、でもっ・・」

 咲良が何か言いかけたが、僕は掲示板に群がる生徒の集団に割り込んでいった。

 「うっ、やっぱり人が多いっ。」

 少し後悔した様に口にしてしまった友季だが、なんとか前へ進んでいく。

 「あっ、この辺ならなんとか見えるかもっ。」

 僕は男子の平均身長より高い背を生かして、名前を確認する。

 「春峰さんは・・・Aクラスッ! で、僕は・・D! 一護もDかっ!」

 「あれ? 留学生もいるのかな?」

 友季は咲良のクラスに自身のクラス、ついでに一護の分も確認した時、同じクラスに日本人とは違った名前をふと見付けた様だ。

 「おっと。 早く教えてあげよう。」

 友季はそんな疑問が浮かんでいたが、確認できたクラスを咲良に教えることを優先し、頭の片隅に置いておいた。

 「春峰さん。 Aクラスだったよ。」

 クラス確認をしている生徒の集団から抜け出した僕は片手を軽く上げ、何気なかった様に笑顔で伝えた。

 「皆方くん! ありがとう! 助かっちゃった。」

 咲良は嬉しそうに友季の上げていない方の手を取り、お礼を言った。

 「いえいえ。 どういたしまして。 流石にあの中へ女の子が入って行くのは大変だしね。」

 友季は少し照れながらも、気遣う様にそう咲良に言った。

 「このお礼はまた今度するね。何か・・」

 咲良が僕にそう言いかけてくれた時、

 「咲良~。 まだ~?」

 どうやら咲良の友人が呼んでいるようだ。

 「ほらほら! 友達呼んでるよ? 僕は気にしなくていいから行ってあげて。」

 僕は咲良の友達の様子からニコッと笑顔を作り、そう促してあげた。

 「うん! ありがとう皆方くん! またね!」

 咲良はそう言って手を振り、友達の方へと足早に去って行った。

 「うん! またね!」

 僕は咲良との会話が終わってしまって少し残念に思いながらも、笑顔で咲良を見送った。

 すると一護が後ろからポンッポンッ。と僕の肩を軽く叩いてきた。

 「良かったな友季! 色々とっ。」

 一護がニヤニヤしながらそう言ってきた。どうやら先ほどの咲良とのやり取りを見ていたようだ。

 「あ~。 まぁねっ。」

 僕は何か言い返そうかとも思ったが、さっきのやり取りはちょっと嬉しかったので、照れくさそうにしながら頬を軽く掻き、素直にそう返した。

 「いや~! 2年になって、お前、何か良いことあるかもよ! ちょっと学園楽しみになってきたな~。」

 一護は友季を何かと弄れそうな学園生活になりそうだなと思い、嬉しそうにそう言ってきた。

 「あ、はは・・。」

 僕は乾いた声でしか返事ができなかった。

 「ま、まぁ、とりあえず一護、教室行こう。」

 友季は話を中断させたいがために、移動を促した。

 「おっけー。おっけー。」

 それを察した一護が了承する。

 

 そんなやり取りを終えた友季と一護は共に教室へと向かったのだった。

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